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- 米国株式、4つのシナリオ
2022年07月14日
1――インフレの早期収束期待が後退し下落
2――景気後退を十分に織り込んでいない
S&P500種株価指数の予想PER(青線)は16倍前後まで低下してきている【図表2】。過去の推移をみると予想PERは決して高水準とはいえない水準である。ただし、予想PERの逆数である予想益回りから米長期金利を引いた米国株式のリスク・プレミアム(青線)をみると3%台前半にあり、依然として低水準にある【図表3】。足元の3%前後の長期金利の水準を考慮すると、株価は決して割安な水準とはいえないことが分かる。
過去振り返ると、2018年の年末から2019年にかけて企業業績の拡大鈍化に伴って株式リスク・プレミアムは一時4.5%まで上昇した。そのことを踏まえると、足元の景気後退が懸念されているものの、米国株式にはそのことを十分に織り込んでいない可能性が高いと思われる。
過去振り返ると、2018年の年末から2019年にかけて企業業績の拡大鈍化に伴って株式リスク・プレミアムは一時4.5%まで上昇した。そのことを踏まえると、足元の景気後退が懸念されているものの、米国株式にはそのことを十分に織り込んでいない可能性が高いと思われる。
3――景気とインフレの動向で4つのシナリオ
(1) 「インフレ収束、景気堅調」シナリオ
最も楽観的なシナリオ。長期金利が横ばい、株式リスク・プレミアムも横ばいで予想PERが15-17倍程度で推移。S&P500種株価指数で3,600-4,300ポイント程度が見込まれる。
(2) 「インフレ長期化、景気堅調」シナリオ
これまでと同様に長期金利の上昇が株価の重しとなるシナリオ。株式リスク・プレミアムが横ばいとなるものの長期金利の上昇に伴って予想PERが低下し、13-16倍程度で推移。S&P500種株価指数は3,300-3,800ポイント程度が見込まれる。
(3) 「インフレ収束、景気後退」シナリオ
景気後退にリスク・プレミアムの上昇とEPSの低下によって株価が下落するシナリオ。ただし、インフレが落ち着くことによって金融緩和期待から長期金利は低下しやすく、そのことがある程度は株価を下支えしてくれるものと思われる。予想PERは13-15倍程度、S&P500種株価指数は3,000-3,500ポイント程度が見込まれる。
(4) 「インフレ長期化、景気後退」シナリオ
いわゆるインフレと景気後退が同時に起こるスタグフレーションとなってしまうシナリオ。インフレが鎮静化しないと金融緩和にかじを切りにくいため、(3)と比べて金融政策のサポートが期待できなく、長期金利が低下しにくく(2)ほどではないが上昇する可能性がある。そのため予想PERは12-14倍程度、株価はさらに下落し、S&P500種株価指数は2,600-3,200ポイント程度が見込まれる。
6月上旬までは(1)の「インフレ収束、景気堅調」シナリオがメイン・シナリオだったが、6月中旬以降は(3)の「インフレ収束、景気後退」がメイン・シナリオとなっている。(4)の「インフレ長期化、景気後退」シナリオについては現時点ではあくまでもリスク・シナリオといった感じである。
最も楽観的なシナリオ。長期金利が横ばい、株式リスク・プレミアムも横ばいで予想PERが15-17倍程度で推移。S&P500種株価指数で3,600-4,300ポイント程度が見込まれる。
(2) 「インフレ長期化、景気堅調」シナリオ
これまでと同様に長期金利の上昇が株価の重しとなるシナリオ。株式リスク・プレミアムが横ばいとなるものの長期金利の上昇に伴って予想PERが低下し、13-16倍程度で推移。S&P500種株価指数は3,300-3,800ポイント程度が見込まれる。
(3) 「インフレ収束、景気後退」シナリオ
景気後退にリスク・プレミアムの上昇とEPSの低下によって株価が下落するシナリオ。ただし、インフレが落ち着くことによって金融緩和期待から長期金利は低下しやすく、そのことがある程度は株価を下支えしてくれるものと思われる。予想PERは13-15倍程度、S&P500種株価指数は3,000-3,500ポイント程度が見込まれる。
(4) 「インフレ長期化、景気後退」シナリオ
いわゆるインフレと景気後退が同時に起こるスタグフレーションとなってしまうシナリオ。インフレが鎮静化しないと金融緩和にかじを切りにくいため、(3)と比べて金融政策のサポートが期待できなく、長期金利が低下しにくく(2)ほどではないが上昇する可能性がある。そのため予想PERは12-14倍程度、株価はさらに下落し、S&P500種株価指数は2,600-3,200ポイント程度が見込まれる。
6月上旬までは(1)の「インフレ収束、景気堅調」シナリオがメイン・シナリオだったが、6月中旬以降は(3)の「インフレ収束、景気後退」がメイン・シナリオとなっている。(4)の「インフレ長期化、景気後退」シナリオについては現時点ではあくまでもリスク・シナリオといった感じである。
4――最後に
現時点では(3)がメイン・シナリオだが、不確定要素が多いため、他のシナリオが起こる可能性もある。従って、今後も米国株式は経済指標、特に物価関連指標に右往左往する展開がしばらく続くだろう。また、これから本格化される米企業の業績発表も注目されることになる。
いずれにしても米国株式については楽観視できる状況ではなく、改めて現状の保有資産でリスクを取り過ぎてないかどうかについて、今一度、ご自身で確認することをおすすめする。ただ、過去振り返ると景気後退局面が絶好の投資タイミングだったということもよくある。そのため、長期投資の場合は粛々と積立投資する、もしくは大きく下落したタイミングで追加投資してみることも一つだろう。
いずれにしても米国株式については楽観視できる状況ではなく、改めて現状の保有資産でリスクを取り過ぎてないかどうかについて、今一度、ご自身で確認することをおすすめする。ただ、過去振り返ると景気後退局面が絶好の投資タイミングだったということもよくある。そのため、長期投資の場合は粛々と積立投資する、もしくは大きく下落したタイミングで追加投資してみることも一つだろう。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
03-3512-1785
経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
(2022年07月14日「基礎研レター」)
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