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- ラグジュアリーホテルとは何か(中編)-国内のホテル格付けとラグジュアリーホテルについて
コラム
2022年07月13日
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1――日本のホテル格付け制度の現状
前編では、海外を中心とした国の格付けとホテル独自の格付けについてまとめた1。中編では、国内の格付けについて、定着しているラグジュアリーホテルの名称を中心にまとめたい。
まず、日本には、宿泊業界全体を網羅した格付けがない。
一応、「国際観光ホテル整備法」という枠組みはある。一定の基準を満たした登録ホテルは、登録ホテルであることを表示しなければならず、代わりに地方自治体によっては地方税(固定資産税)の軽減措置がある、というものだ。
ただし、固定資産税が優遇される地方自治体が一部に限られる2など、メリットが感じられにくく、登録ホテルは減少している。
他にも、過去には価格帯、機能などの様々な面からホテルグレードの設定が試みられた例もあるようだ。しかし、わが国の宿泊施設にはシティホテル、ビジネスホテル、旅館、簡易宿所、民宿などの多様な形態があることに加え、「日本ホテル協会」、「全日本ホテル連盟」、「日本旅館協会」など、施設形態ごとに業界団体が存在しており、統一的な格付け制度の創設は容易ではない。
1 渡邊布味子『ラグジュアリーホテルとは何か(前編)-海外のホテル格付けと外資系ホテルのブランドについて』(ニッセイ基礎研究所、研究員の眼、2022年07月01日)
2 国土交通省によると、平成30年12月末時点で、固定資産税の軽減措置を設けている市町村は全国で248市町村である。東京都では八丈町、大阪府では箕面市の各1市町のみであるが、新潟県(新潟市、長岡市、三条市など20市町)、長野県(松本市、上田市、飯田市など18市町)、静岡県(静岡市、浜松市、沼津市など18市町)では設けている市町村が多い。
まず、日本には、宿泊業界全体を網羅した格付けがない。
一応、「国際観光ホテル整備法」という枠組みはある。一定の基準を満たした登録ホテルは、登録ホテルであることを表示しなければならず、代わりに地方自治体によっては地方税(固定資産税)の軽減措置がある、というものだ。
ただし、固定資産税が優遇される地方自治体が一部に限られる2など、メリットが感じられにくく、登録ホテルは減少している。
他にも、過去には価格帯、機能などの様々な面からホテルグレードの設定が試みられた例もあるようだ。しかし、わが国の宿泊施設にはシティホテル、ビジネスホテル、旅館、簡易宿所、民宿などの多様な形態があることに加え、「日本ホテル協会」、「全日本ホテル連盟」、「日本旅館協会」など、施設形態ごとに業界団体が存在しており、統一的な格付け制度の創設は容易ではない。
1 渡邊布味子『ラグジュアリーホテルとは何か(前編)-海外のホテル格付けと外資系ホテルのブランドについて』(ニッセイ基礎研究所、研究員の眼、2022年07月01日)
2 国土交通省によると、平成30年12月末時点で、固定資産税の軽減措置を設けている市町村は全国で248市町村である。東京都では八丈町、大阪府では箕面市の各1市町のみであるが、新潟県(新潟市、長岡市、三条市など20市町)、長野県(松本市、上田市、飯田市など18市町)、静岡県(静岡市、浜松市、沼津市など18市町)では設けている市町村が多い。
2――日本における実質的なホテル区分
消費者がホテル選びをする際には、Googleやオンライン・トラベル・エージェントなどの口コミ評価が多くの人に利用され、ホテル選びに参考にされている。しかし、口コミ評価は、価格帯が割安のホテルとやや上位ランクのホテルが横並びで、ホテルの設備、サービス、価格、食事等を含めて等を各個人が体験したことを総合的に評価しているものなので、格付けのような客観的な評価基準とはいえない。
実質的に格付けと言えるのは、「海外の審査機関の星を持つ宿泊施設」、「ラグジュアリーホテルの表記」、「ホテルグループに属しているホテル」なのではないだろうか。
1つ目の、「海外の審査機関の星を持つ宿泊施設」で、具体的には「フォーブス・トラベルガイド」や「ミシュラン・ガイド」の星を持つホテルである(図表1)。ただし、これらの星の獲得には、世界一般の星よりも高い基準を満たす必要がある。
例えばフォーブス・トラベルガイドは、3つ星相当の「お勧め」、「4つ星」、「5つ星」の三段階であるが、対象となるのは世界一般の格付基準では全て5つ星ホテルであり、「お勧め」であっても獲得は大変難しい。日本国内で「お勧め」を獲得したホテルは8施設、「4つ星」を獲得したホテルは21施設、「5つ星」を獲得しているホテルはわずか12施設である(図表1)。
実質的に格付けと言えるのは、「海外の審査機関の星を持つ宿泊施設」、「ラグジュアリーホテルの表記」、「ホテルグループに属しているホテル」なのではないだろうか。
1つ目の、「海外の審査機関の星を持つ宿泊施設」で、具体的には「フォーブス・トラベルガイド」や「ミシュラン・ガイド」の星を持つホテルである(図表1)。ただし、これらの星の獲得には、世界一般の星よりも高い基準を満たす必要がある。
例えばフォーブス・トラベルガイドは、3つ星相当の「お勧め」、「4つ星」、「5つ星」の三段階であるが、対象となるのは世界一般の格付基準では全て5つ星ホテルであり、「お勧め」であっても獲得は大変難しい。日本国内で「お勧め」を獲得したホテルは8施設、「4つ星」を獲得したホテルは21施設、「5つ星」を獲得しているホテルはわずか12施設である(図表1)。
3つ目の「ホテルグループに属しているホテル」はホテル名からどのグループに属しているかの判断がつくことが多い。しかし、グループ内のほとんどのホテルは他の格付けを持たない。
また、グループ内の施設に対し、独自にグレード付け、グレード別にホテル一覧に表示しているグループもあれば、グレード付けはあえて表示しないグループもある。グループ内のグレード別施設の保有割合もまちまちで、ホテルグループ名からグレードの判断は難しい。
後編では、このような国内のホテルグループを中心に記載したい。
また、グループ内の施設に対し、独自にグレード付け、グレード別にホテル一覧に表示しているグループもあれば、グレード付けはあえて表示しないグループもある。グループ内のグレード別施設の保有割合もまちまちで、ホテルグループ名からグレードの判断は難しい。
後編では、このような国内のホテルグループを中心に記載したい。
(2022年07月13日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
渡邊 布味子のレポート
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