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2022年度の年金額は0.4%減額、2023年度は増額だが目減りの見込み-(前編)年金額改定ルールの経緯や意義

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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基本的な考え方は上記の通りであるが、年金財政健全化のための調整ルール(マクロ経済スライド)にも、特例ルール(いわゆる名目下限ルール)が設けられている。特例ルールは、a:基本ルールどおりに調整率を適用すると調整後の改定率がマイナスになる場合と、b:本来の改定率がマイナスの場合、に適用される(図表8左の特例aと特例b)。大雑把に言えば、特例aは物価や賃金の伸びが小さいとき、特例bは物価や賃金が下落しているときに適用される。
特例aの場合は、単純に調整すると調整後の改定率がマイナスになるので、名目の年金額が前年度を下回ることになる。これを避けるため、実際に適用される調整率の大きさ(絶対値)を本来の改定率と同じ大きさ(絶対値)にとどめて、調整後の改定率はゼロ%にされる。特例bの場合は、本来の改定率がマイナスなので、この場合も名目の年金額が前年度を下回ることになる。そこで、年金財政健全化のための調整を行わず、本来の改定率の分だけ年金額が改定される。
しかし、デフレが継続した場合などでは、当年度分の調整と繰り越した未調整分を合わせた大幅な調整が適用できない場合も考えられる。その場合は未調整分が持ち越され続け、結果として改正前の制度と同じ事態になる可能性がある。また、このような経済状況のリスク(不確実さ)に加えて、政治的なリスクもある。未調整分を精算できるほど本来の改定率が高いケースには、物価上昇率がかなり高い場合もあり得る。この場合は物価が大幅に上がる中で年金の改定率を大幅に抑えることになるため、年金受給者からの反対や、実際に生活水準が大きく低下して困窮する受給者がでてくる可能性がある。そういった状況では、この見直しを予定どおりに実施するかが政治問題になる可能性がある。
(2022年06月08日「基礎研レポート」)
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03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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