- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 年金 >
- 公的年金 >
- 次期将来見通し(財政検証)の懸念と課題
2022年01月06日
    文字サイズ
- 小
- 中
- 大
                                                                        公的年金財政の将来見通しの作成(財政検証)は、少なくとも5年に1度は行うことになっている。間隔が5年になっているのは、5年ごとに行われる国勢調査に基づいて、見通しの基礎となる将来推計人口が更新されるためである。
しかし、新型コロナ禍の影響で、将来推計人口の更新が通常よりも1年遅れる見通しとなっている。将来推計人口の作成に必要な出生動向基本調査の実施時期が、当初予定の2020年6月から2021年6月へと延期されたためである。公的年金財政の将来見通し作成までにはまだ時間があるが、将来推計人口は公的年金財政の将来見通しに必要となる労働力率や経済前提を推計する基礎数値にもなっている。作業スケジュールの見直しに一定の目途がついた上での調査延期だと思われるが、近年数か月単位で遅れている将来見通しの公表時期がさらに遅れ、法案策定に向けた社会保障審議会年金部会での議論の時間が不十分になる懸念がある。
            しかし、新型コロナ禍の影響で、将来推計人口の更新が通常よりも1年遅れる見通しとなっている。将来推計人口の作成に必要な出生動向基本調査の実施時期が、当初予定の2020年6月から2021年6月へと延期されたためである。公的年金財政の将来見通し作成までにはまだ時間があるが、将来推計人口は公的年金財政の将来見通しに必要となる労働力率や経済前提を推計する基礎数値にもなっている。作業スケジュールの見直しに一定の目途がついた上での調査延期だと思われるが、近年数か月単位で遅れている将来見通しの公表時期がさらに遅れ、法案策定に向けた社会保障審議会年金部会での議論の時間が不十分になる懸念がある。
                                                                        その一方で、積立金の運用は好調である。公的年金の保険料収入や給付費は基本的に賃金上昇率に連動するため、運用利回りの長期的な目標は「賃金上昇率を一定程度(現在は+1.7%)上回る」という形で設定される。積立金の資産構成は長期的な運用目標を達成するように策定されるため、そもそも運用利回りが当面の目標(見通しの前提)を越えやすい構造になっている。特に2020年度は、名目運用利回りが+23.98%と非常に好調な一方で賃金上昇率は-0.51%と低迷したため(ともに共済年金を除く値)、年金財政への貢献がかなり大きくなっている。
ただし、一時的な変動を将来見通しに直接反映すると、見通しを長期的な視点で評価する上での攪乱要因(ノイズ)となる。社会保障審議会年金数理部会はこの点を懸念し、次の将来見通しにおいては一定期間の平滑化を行うなどの工夫が必要だと、課題を指摘している。
            ただし、一時的な変動を将来見通しに直接反映すると、見通しを長期的な視点で評価する上での攪乱要因(ノイズ)となる。社会保障審議会年金数理部会はこの点を懸念し、次の将来見通しにおいては一定期間の平滑化を行うなどの工夫が必要だと、課題を指摘している。
                                            出生率や運用利回り、推計方法の検討など、次期将来見通しに向けた動向を注視したい。
                                    
            (2022年01月06日「ニッセイ年金ストラテジー」)
このレポートの関連カテゴリ
 
                                        03-3512-1859
経歴
                            - 【職歴】
 1995年 日本生命保険相互会社入社
 2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
 2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
 (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
 【社外委員等】
 ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
 ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
 ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
 ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
 【加入団体等】
 ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
 ・博士(経済学)
中嶋 邦夫のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 | 
|---|---|---|---|
| 2025/10/21 | 連立協議から選挙のあり方を思う-選挙と同時に大規模な公的世論調査の実施を | 中嶋 邦夫 | 研究員の眼 | 
| 2025/10/14 | 厚生年金の加入制限が段階的に廃止へ。適用徹底には連携強化が課題。~年金改革ウォッチ 2025年10月号 | 中嶋 邦夫 | 保険・年金フォーカス | 
| 2025/09/09 | 年金制度は専業主婦向けに設計!?分布推計で改正の詳細な影響把握を~年金改革ウォッチ 2025年9月号 | 中嶋 邦夫 | 保険・年金フォーカス | 
| 2025/09/03 | 成立した年金制度改正が将来の年金額に与える影響 | 中嶋 邦夫 | ニッセイ年金ストラテジー | 
新着記事
- 
                2025年10月24日 
 米連邦政府閉鎖と代替指標の動向-代替指標は労働市場減速とインフレ継続を示唆、FRBは政府統計を欠く中で難しい判断を迫られる
- 
                2025年10月24日 
 企業年金の改定についての技術的なアドバイス(欧州)-EIOPAから欧州委員会への回答
- 
                2025年10月24日 
 消費者物価(全国25年9月)-コアCPI上昇率は拡大したが、先行きは鈍化へ
- 
                2025年10月24日 
 保険業界が注目する“やせ薬”?-GLP-1は死亡率改善効果をもたらすのか
- 
                2025年10月23日 
 御社のブランドは澄んでますか?-ブランド透明性が生みだす信頼とサステナビリティ開示のあり方(1)
レポート紹介
- 
                研究領域 - 
                        経済 
- 
                        金融・為替 
- 
                        資産運用・資産形成 
- 
                        年金 
- 
                        社会保障制度 
- 
                        保険 
- 
                        不動産 
- 
                        経営・ビジネス 
- 
                        暮らし 
- 
                        ジェロントロジー(高齢社会総合研究) 
- 
                        医療・介護・健康・ヘルスケア 
- 
                        政策提言 
 
- 
                        
- 
                注目テーマ・キーワード 
- 
                統計・指標・重要イベント 
- 
                媒体 
- アクセスランキング
お知らせ
- 
                        2025年07月01日 News Release 
- 
                        2025年06月06日 News Release 
- 
                        2025年04月02日 News Release 
【次期将来見通し(財政検証)の懸念と課題】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
次期将来見通し(財政検証)の懸念と課題のレポート Topへ 
            




 
                     
                    
 経済 のレポート
経済 のレポート 
                                     
                                     
                                     
                                    
 
                                             
                         
                         
                        



 
            
 
                     
					


