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- 米雇用統計(22年5月)-雇用者数の伸びは前月から鈍化も、市場予想を上回った一方、賃金の伸びは鈍化が継続
2022年06月06日
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1.結果の概要:雇用者数は市場予想を上回ったほか、失業率も市場予想を上回る
6月3日、米国労働統計局(BLS)は5月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+39.0万人の増加1(前月改定値:+43.6万人)と、+42.8万人から小幅上方修正された前月を下回った一方、市場予想の+31.8万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。
失業率は3.6%(前月:3.6%、市場予想:3.5%)とこちらは前月に一致、低下を見込んだ市場予想を上回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.3%(前月:62.2%、市場予想:62.3%)と前月から+0.1%ポイント上昇、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は3.6%(前月:3.6%、市場予想:3.5%)とこちらは前月に一致、低下を見込んだ市場予想を上回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.3%(前月:62.2%、市場予想:62.3%)と前月から+0.1%ポイント上昇、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:雇用者数の伸びは前月から緩やかに鈍化、賃金は伸びの鈍化が継続
5月の非農業部門雇用者数(前月比)は、前月を下回ったものの、市場予想を大幅に上回っており、雇用者数の伸び鈍化が緩やかに留まっていることを示した。これで直近3ヵ月の月間平均雇用増加ペースは+40.8万人と22年初からの月間平均増加ペース(+48.8万人)から緩やかに低下していることを確認した。また、雇用者数は新型コロナ流行前(20年2月)を82.2万人下回る水準まで回復しており、このままの雇用増加ペースが継続すれば、7月には新型コロナ流行前を上回る水準に回復するとみられる。
一方、失業率は前月から横這いとなったものの、労働参加率が労働力人口の増加を伴って上昇しており、家計調査は労働供給が回復していることを示した。
一方、失業率は前月から横這いとなったものの、労働参加率が労働力人口の増加を伴って上昇しており、家計調査は労働供給が回復していることを示した。
3.事業所調査の詳細:広範な分野で堅調な伸びが持続
事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+27.4万人(前月:+33.6万人)と前月から雇用の伸びが鈍化した(図表2)。

財生産部門は前月比+5.9万人(前月:+6.9万人)と前月から伸びが鈍化した。建設業が+3.6万人(前月:横這い)と伸びが加速した一方、製造業が+1.8万人(前月:+6.1万人)と伸びが鈍化した。
政府部門は前月比+5.7万人(前月:+3.1万人)と前月から伸びが加速した。内訳をみると、連邦政府が+0.5万人(前月:▲0.1万人)と前月から増加に転じたほか、州・地方政府が+5.2万人(前月:+3.2万人)と伸びが加速した。
前月(4月)と前々月(3月)の雇用増加数(改定値)は前月が+43.6万人(改定前:+42.8万人)と+0.8万人上方修正された一方、前々月が+39.8万人(改定前:+42.8万人)と▲3.0万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲2.2万人の下方修正となった(図表3)。
BLSの公表に先立って6月2日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+12.8万人(前月改定値:+20.2万人、市場予想:30.0万人)と+24.7万人から下方修正された前月、市場予想を下回った。この結果、雇用統計、ADP統計ともに前月から雇用の伸びが鈍化したものの、前月からの低下幅はADP統計がやや大きくなった。
5月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が31.95ドル(前月:31.85ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.6時間(前月:34.6時間)と前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は1,105.47ドル(前月:1,102.01ドル)と前月から増加した(図表4)。
BLSの公表に先立って6月2日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+12.8万人(前月改定値:+20.2万人、市場予想:30.0万人)と+24.7万人から下方修正された前月、市場予想を下回った。この結果、雇用統計、ADP統計ともに前月から雇用の伸びが鈍化したものの、前月からの低下幅はADP統計がやや大きくなった。
5月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が31.95ドル(前月:31.85ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.6時間(前月:34.6時間)と前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は1,105.47ドル(前月:1,102.01ドル)と前月から増加した(図表4)。
4.家計調査の詳細:労働力人口の増加を伴って労働参加率が改善
家計調査のうち、5月の労働力人口は前月対比で+33.0万人(前月:▲36.3万人)と前月から大幅な増加に転じた。内訳を見ると、就業者数が+32.1万人(前月:▲35.3万人)と大幅なプラスに転じたほか、失業者数も+0.9万人(前月:▲11.0万人)と小幅ながら増加に転じた。非労働力人口は▲21.1万人(前月:+47.8万人)とこちらは前月から減少に転じた。これらの結果、労働参加率は62.3%と前月から+0.1%ポイントの上昇となった(図表5)。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は5月が82.6%(前月:82.4%)とこちらも前月から+0.2%ポイント上昇した。男女の内訳は、男性が88.7%(前月:88.7%)と前月から横這いとなった一方、女性が76.6%(前月:76.2%)と+0.4%ポイント上昇して全体を押し上げた。
失業率は2ヵ月連続で前月比横這いとなったものの、新型コロナ流行前(20年2月)を僅か0.1%上回る水準となっており、引き続き労働需給が逼迫していることを示した(図表6)。もっとも、5月は労働参加率の改善にみられるように労働供給は回復していることを確認した。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は5月が82.6%(前月:82.4%)とこちらも前月から+0.2%ポイント上昇した。男女の内訳は、男性が88.7%(前月:88.7%)と前月から横這いとなった一方、女性が76.6%(前月:76.2%)と+0.4%ポイント上昇して全体を押し上げた。
失業率は2ヵ月連続で前月比横這いとなったものの、新型コロナ流行前(20年2月)を僅か0.1%上回る水準となっており、引き続き労働需給が逼迫していることを示した(図表6)。もっとも、5月は労働参加率の改善にみられるように労働供給は回復していることを確認した。
5月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は135.6万人(前月:148.3万人)と前月から▲12.7万人減少した。長期失業者の失業者全体に占めるシェアも23.2%(前月:25.2%)と前月から▲2.0%ポイント低下した(図表7)。平均失業期間は22.5週(前月:25.0週)とこちらも前月から▲2.5週短期化した。
最後に、周辺労働力人口(147.2万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(432.8万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、5月が7.1%(前月:7.0%)と前月から+0.1%ポイント上昇した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.5%ポイント(前月:+3.4%ポイント)と前月から+0.1%ポイント拡大した。
最後に、周辺労働力人口(147.2万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(432.8万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、5月が7.1%(前月:7.0%)と前月から+0.1%ポイント上昇した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.5%ポイント(前月:+3.4%ポイント)と前月から+0.1%ポイント拡大した。
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年06月06日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
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