2022年05月30日

厳しさを増す米住宅市場-住宅価格の高騰に加え、住宅ローン金利の大幅な上昇が住宅需要の足枷に

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 実質GDPにおける住宅投資は22年1-3月期が前期比年率+0.4%(前期:+2.2%)と2期連続のプラスとなったものの、伸びは大幅に鈍化した。住宅着工、許可件数は住宅バブルであった06年以来の高水準を維持しているものの、足元で伸びが鈍化している。
     
  2. 一方、住宅価格は21年秋口にかけて伸びの鈍化がみられていたものの、その後は建材価格の高止まり等を背景に再び騰勢が強まっており、22年2月は住宅バブル時を超えて統計開始以来最高となった。
     
  3. 住宅価格の高騰に加え、22年初からの住宅ローン金利の大幅な上昇もあって、住宅販売件数は新築、中古住宅ともに年初からの減少が顕著となっており、22年4月は新型コロナ感染拡大前の水準まで低下した。また、販売在庫水準は依然として低位に留まっているものの、足元で増加に転じた可能性が高い。
     
  4. 住宅供給は建材価格の高止まりに加え、労働力や住宅用地不足しているため、今後の増加は緩やかとみられる。一方、住宅価格や住宅ローン金利の上昇を背景とした住宅ローン支払い額の増加に伴い、所得対比でみた住宅取得能力が大幅に低下しているほか、住宅購入のセンチメントも悪化しているため、今後は住宅需要の減退が見込まれる。
     
  5. 米国の住宅市場は住宅ローン金利の低下や在宅勤務の増加に伴う郊外の戸建て住宅需要の増加などを背景に過去2年間は好調となったものの、住宅ローン金利の上昇基調が持続するとみられる中、住宅市場を取り巻く環境は当面厳しい状況が続こう。

 
(図表1)住宅着工件数と実質住宅投資の伸び率
■目次

1.はじめに
2.米住宅市場の回復状況
  (住宅投資、住宅着工・許可件数)着工・許可件数ともに06年以来の高水準を維持
  (住宅価格)22年入り後に住宅価格の伸びが再加速
  (住宅ローン)住宅ローン金利の上昇に伴いローン申請件数は減少、住宅ローンの質改善は継続
  (新築、中古住宅販売)22年入り後に減少が鮮明、住宅販売在庫も増加の兆し
3.今後の見通し
  (住宅供給)緩やかな増加に留まる
  (住宅需要)住宅取得能力の低下から住宅需要は減退へ
  (まとめ)当面住宅市場は厳しい状況が継続
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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