2022年05月09日

米雇用統計(22年4月)-雇用の伸びは堅調を維持する一方、賃金の伸びには鈍化の兆し

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数は市場予想を上回る一方、失業率は低下予想に反して横這い

5月6日、米国労働統計局(BLS)は4月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+42.8万人の増加1(前月改定値:+42.8万人)と、+43.1万人から小幅下方修正された前月に一致、市場予想の+38.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は上回った(後掲図表2参照)。

失業率は3.6%(前月:3.6%、市場予想:3.5%)とこちらも前月に一致、低下を見込んだ市場予想を上回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.2%(前月:62.4%、市場予想:62.5%)と前月から▲0.2%ポイント低下、小幅な改善を見込んだ市場予想を下回った(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:堅調な雇用の伸びを確認、賃金の伸びはピークアウトした可能性を示唆

4月の非農業部門雇用者数(前月比)は前月に一致し、市場予想を上回った。また、22年の月間平均雇用増加ペースは+51.9万人と1950年の統計開始以来最高となった21年の+56.2万人からは低下したものの、依然として堅調な雇用増加ペースを維持していると言えよう。これで、雇用者数は新型コロナ流行前(20年2月)を120万人下回る水準まで回復した。このままの雇用増加ペースが継続すれば、7月には新型コロナ流行前を上回る水準に回復するとみられる。

一方、4月の失業率は前月から横這いとなったものの、労働参加率が労働力人口の減少を伴って低下しており、当月は労働供給の回復が一服していることを示した。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.3%(前月改定値:+0.5%、市場予想:+0.4%)と+0.4%から小幅上方修正された前月、市場予想を下回った。また、前年同月比は+5.5%(前月:+5.6%、市場予想:+5.5%)と、こちらは前月を下回った一方、市場予想に一致した(図表1)。この結果、4月は前月比、前年同月比ともに賃金の伸びが鈍化したことを示した。また、過去3ヵ月の賃金上昇率は年率+3.7%と21年12月の+6.1%から大幅に低下しており、足元で賃金上昇がピークアウトした可能性を示唆している。

このようにみると、4月は総じて労働需給が逼迫している状況が続いていることを確認した一方、賃金については慎重にみる必要があるものの、ピークアウトした兆候を示す結果と言えよう。

3.事業所調査の詳細:民間サービス部門はまちまちの結果

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+34.0万人(前月:+35.7万人)と前月から雇用の伸びが小幅ながら鈍化した(図表2)。
(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 民間サービス部門の中では、娯楽・宿泊業が前月比+7.8万人(前月:+10.0万人)、専門・ビジネスサービスが+4.1万人(前月:+9.4万人)、医療・社会扶助サービスが+4.1万人(前月:+4.5万人)と前月から伸びが鈍化した一方、運輸・倉庫が+5.2万人(前月:+1.0万人)、金融サービスが+3.5万人(前月+1.2万人)、小売業が+2.9万人(前月:+2.5万人)と前月から伸びが加速するなど、業種によってマチマチの結果となった。

財生産部門は前月比+6.6万人(前月:+6.7万人)と前月並みの伸びとなった。製造業が+5.5万人(前月:+4.3万人)と伸びが加速した一方、建設業が+0.2万人(前月:+2.0万人)と伸びが鈍化した。

政府部門は前月比+2.2万人(前月:+0.4万人)と前月から伸びが加速した。内訳をみると、連邦政府が▲0.6万人(前月:▲0.2万人)と前月からマイナス幅が拡大した一方、州・地方政府が+2.8万人(前月:+0.6万人)と伸びが加速して全体を押し上げた。
前月(3月)と前々月(2月)の雇用増加数(改定値)は前月が+42.8万人(改定前:+43.1万人)と▲0.3万人下方修正されたほか、前々月が+71.4万人(改定前:+75.0万人)と▲3.6万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲3.9万人の下方修正となった(図表3)。
 
BLSの公表に先立って5月4日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+24.7万人(前月改定値:+47.9万人、市場予想:38.3万人)と+45.5万人から小幅上方修正された前月、市場予想を下回った。この結果、雇用統計が前月に続き40万人台の雇用増加ペースを維持したのに比べて、ADP社の雇用増加ペースは20万人台半ばと小幅に留まった。
 
4月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が31.85ドル(前月:31.75ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.6時間(前月:34.6時間)と前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は1,102.01ドル(前月:1,098.55ドル)と前月から増加した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働参加率の回復が一服

家計調査のうち、4月の労働力人口は前月対比で▲36.3万人(前月:+41.8万人)と前月から大幅なマイナスに転じた。内訳を見ると、就業者数が▲35.3万人(前月:+73.6万人)とマイナスに転じたほか、失業者数が▲11.0万人(前月:▲31.8万人)と前月に続きマイナスとなって労働力人口を押し下げた。非労働力人口は+47.8万人(前月:▲29.8万人)と前月から大幅なプラスに転じた。これらの結果、労働参加率は62.2%と前月から▲0.2%ポイントの低下となり、21年9月の61.7%を底に続いていた上昇が一服した(図表5)。

一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は4月が82.4%(前月:82.5%)とこちらも前月から▲0.1%ポイント低下した。男女の内訳は、男性が88.7%(前月:88.7%)と前月から横這いとなった一方、女性が76.2%(前月:76.5%)と▲0.3%ポイント低下して全体を押し下げた。このため、プライムエイジの労働参加率も4月は回復が一服した。

4月の失業率は前月比横這いとなり、新型コロナ流行前(20年2月)を僅か0.1%上回る水準に低下しているものの、労働参加率は新型コロナ流行前を1%ポイント以上下回っているため、労働供給の回復は鈍い(図表6)。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
4月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は148.3万人(前月:142.8万人)と前月から+5.5万人増加した。長期失業者の失業者全体に占めるシェアも25.2%(前月:23.9%)と前月から+1.3%ポイント上昇した(図表7)。平均失業期間は25.0週(前月:24.2週)とこちらも前月から+0.8週長期化した。
 
最後に、周辺労働力人口(162.2万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(403.3万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、4月が7.0%(前月:6.9%)と前月から+0.1%ポイント上昇した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.4%ポイント(前月:+3.3%ポイント)と前月から+0.1%ポイント拡大した。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2022年05月09日「経済・金融フラッシュ」)

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