2022年05月02日

米個人所得・消費支出(22年3月)-個人消費(前月比)は名目ベースで前月比+1.1%、実質ベースでも+0.2%と堅調な結果

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得、個人消費ともに市場予想を上回る

4月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は3月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.5%(前月改定値:+0.7%)と+0.5%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%は上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+1.1%(前月改定値:+0.6%)と+0.2%から上方修正された前月、市場予想の+0.6%を大幅に上回った。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.2%(前月改定値:+0.1%)とこちらも▲0.4%から上方修正された前月、市場予想の▲0.1%を上回った(図表5)。貯蓄率1は6.2%(前月:6.8%)と、前月から▲0.6%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.9%(前月改定値:+0.5%)と+0.6%から小幅下方修正された前月を上回った一方、市場予想(+0.9%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.3%(前月改定値:+0.3%)と+0.4%から下方修正された前月、市場予想(+0.3%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+6.6%(前月改定値:+6.3%)と+6.4%から下方修正された前月を上回り、82年1月以来の水準に上昇した一方、市場予想(+6.7%)は下回った。コア指数は+5.2%(前月改定値:+5.3%)と+5.4%から下方修正された前月、市場予想(+5.3%)を下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:堅調な消費を確認する結果

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 3月の個人消費(前月比)は名目ベースで+1.1%と22年1月の+2.1%、2月の+0.6%に続き3ヵ月連続で堅調な伸びとなったほか、大幅な物価上昇を加味した実質ベースでも+0.2%のプラスとなり、足元で消費が堅調であることを確認する結果となった(図表1、図表5)。労働需給の逼迫を背景に賃金・給与の堅調な伸びが持続しており、個人消費は当面堅調な所得などに支えられて堅調な伸びを維持しよう。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、エネルギーや食料品価格の上昇に伴い、総合指数の上昇基調に歯止めがかかっていない。もっとも、物価の基調を示すコア指数は20年10月以来となる前月からの伸び鈍化となっており、今後も低下が持続するのか注目される。

3.所得動向:賃金・給与、自営業者所得の堅調な伸びが持続

3月の個人所得(前月比)は、労働需給の逼迫を背景に賃金・給与が+0.6%(前月:+1.1%)と前月から鈍化したものの、堅調な伸びを維持した(図表2)。自営業者所得も+0.8%(前月:+1.5%)と前月から鈍化したものの、こちらも堅調な伸びを維持した。一方、利息配当収入は+0.4%(前月:+0.3%)と小幅ながら伸びが加速した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、3月の名目が+0.5%(前月:+0.7%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースでは▲0.4%(前月:+0.2%)とこちらはマイナスに転じた(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財、サービスともに前月から伸びが加速

3月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+1.2%(前月:+0.3%)、サービス消費が+1.1%(前月:+0.8%)といずれも前月から伸びが加速した(図表4)。

財消費は、耐久財が▲1.0%(前月:▲1.2%)と2ヵ月連続のマイナスとなった一方、非耐久財が+2.5%(前月:+1.1%)と前月から伸びが加速して全体を押し上げた。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲3.1%(前月:▲4.6%)とマイナス幅は縮小したものの、2ヵ月連続でマイナスとなったほか、娯楽財・スポーツカーが▲0.4%(前月:+0.3%)とマイナスに転じた。さらに、家具・家電が+0.2%(前月:+0.5%)と伸びが鈍化した。

非耐久財では、ガソリン・エネルギーが+16.1%(前月:+9.8%)と前月から伸びが大幅に加速した。もっとも、ガソリン・エネルギー価格の上昇を加味した実質ベースでは前月比▲1.6%とマイナスになっており、消費増加はこれらの価格上昇によるとみられる。一方、食料・飲料が+0.9%(前月:▲0.2%)と前月からプラスに転じたほか、衣料・靴が+0.4%(前月:+0.2%)と小幅に伸びが加速した。

サービス消費は、娯楽が+1.8%(前月:+2.6%)、外食・宿泊が+1.9%(前月:+3.4%)と前月から伸びが大幅に鈍化したほか、医療サービスも+0.5%(前月:+0.6%)と小幅に鈍化した。一方、輸送サービスが+3.6%(前月:+3.6%)と前月並みの高い伸びを維持したほか、住宅・公共料金が+0.6%(前月▲0.2%)、金融サービスが+0.5%(前月:▲0.0%)と前月からプラスに転じて全体を押し上げた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前月比、前年同月比ともに05年9月以来の伸び

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+11.8%(前月:+3.7%)と10ヵ月連続のプラスとなったほか、05年9月(+13.6%)以来の伸びとなった(図表6)。食料品価格指数は+1.4%(前月:+1.4%)と、こちらも14ヵ月連続のプラスとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+33.9%(前月:+25.7%)と13ヵ月連続で2桁の上昇となったほか、こちらも05年9月(+36.8%)以来の伸びとなった(図表7)。また、食料品価格指数は+9.3%(前月:+8.0%)と57ヵ月連続のプラスとなったほか、81年4月(+9.7%)以来の高い伸びとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年05月02日「経済・金融フラッシュ」)

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