2022年05月02日

米GDP(22年1-3月期)-前期比年率▲1.4%と在庫や外需の押下げで20年4-6月期以来のマイナス

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は予想外に20年4-6月期以来のマイナス

4月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は22年1-3月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。1-3月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で▲1.4%(前期:+6.9%)と20年4-6月期以来のマイナス成長となった(図表1・2)。また、プラス成長を予想していた市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+1.0%を大幅に下回った。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
1-3月期の成長率を需要項目別にみると、設備投資が前期比年率+9.2%(前期:+2.9%)と前期から大幅に伸びが加速したほか、個人消費も+2.7%(前期:+2.5%)と小幅ながら前期から伸びが加速した(図表2)。また、住宅投資は+2.1%(前期:+2.2%)と前期並みの伸びを維持した。

一方、政府支出が▲2.7%(前期:▲2.6%)と2期連続でマイナスとなった。さらに、当期は在庫投資の成長率寄与度が▲0.84%ポイント(前期:+5.32%ポイント)と前期の大幅な成長押上げから一転して押し下げに転じたほか、外需の成長率寄与度が▲3.20%ポイント(前期:▲0.23%ポイント)と主に輸入の大幅な増加を背景に前期からマイナス幅が拡大して成長率を大幅に押し下げた。

これらの結果、GDPから在庫投資と外需を除いた国内最終需要は前期比年率+2.6%(前期:+1.7%)とこちらは前期から伸びが加速しており、国内需要は堅調を維持していることを確認した。

このように、当期は20年4-6月期以来のマイナス成長となったものの、前期に大幅な成長押上げとなった反動で在庫投資がマイナス寄与に転じたほか、国内の堅調な消費を反映して輸入の増加から外需が大幅なマイナス寄与となったことによるもので、これらの要因による大幅なマイナス寄与は持続しないとみられるほか、国内需要は依然として堅調を維持していることから、マイナス成長は一時的だろう。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)財消費は減少もサービス消費の伸びが加速
1-3月期の個人消費は、財消費が前期比年率▲0.1%(前期:+1.1%)と小幅ながら前期からマイナスに転じたものの、サービス消費が+4.3%(前期:+3.3%)と伸びが加速して全体を押し上げた(図表3)。財消費では、耐久財が+4.1%(前期:+2.5%)と前期から伸びが加速した一方、非耐久財が▲2.5%(前期:+0.4%)とこちらはマイナスに転じた。

耐久財では、家具・家電が▲4.6%(前期:▲4.6%)と前期並みのマイナスとなったほか、娯楽・スポーツカーが+6.6%(前期:+12.5%)と前期の2桁から伸びが鈍化した。一方、自動車・自動車部品が+10.4%(前期:▲4.3%)と前期から大幅なプラスに転じて全体を押し上げた。

非耐久財は、ガソリン・エネルギーが▲15.1%(前期:+1.1%)と前期から大幅なマイナスに転じたほか、食料・飲料が▲1.4%(前期:▲0.9%)、衣料・靴が▲5.9%(前期:▲2.2%)と前期からマイナス幅が拡大した。

サービス消費は、輸送サービスが+4.7%(前期:+7.0%)、娯楽サービスが+5.5%(前期:+15.3%)と前期から伸びが鈍化した。一方、医療サービスが+3.8%(前期:+3.7%)、金融サービスが+6.4%(前期:+6.9%)と前期並みの伸びを維持したほか、住宅・公共料金が+2.8%(前期:+0.1%)、飲食・宿泊サービスが+5.0%(前期:+2.5%)と伸びが加速した。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
実質可処分所得は前期比年率▲2.0%(前期:▲5.6%)と前期からマイナス幅は縮小したものの、4期連続のマイナスとなった(前掲図表4)。可処分所得は、名目ベースでは当期が前期比年率+4.8%(前期:+0.4%)と堅調な伸びとなったものの、物価の伸びには追い付いていない。

一方、貯蓄率は6.6%(前期:7.7%)と前期から▲1.1%ポイント低下して13年10-12月期(5.9%)以来の水準となった。
(民間投資)設備機器投資が大幅に増加
1-3月期の民間設備投資は建設投資が前期比年率▲0.9%(前期:▲8.3%)と前期からマイナス幅は縮小したものの、4期連続でマイナスとなった一方、設備機器投資が+15.3%(前期:+2.8%)と前期から大幅に伸びが加速して全体を押し上げたほか、知的財産投資も+8.1%(前期:+8.9%)と前期並みの堅調な伸びを維持した(図表5)。
(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 建設投資では、資源関連が前期比年率+25.4%(前期:+19.3%)と前期から伸びが加速したほか、製造業が+11.9%(前期:▲5.0%)とプラスに転じた。一方、電力・通信が▲1.6%(前期:▲15.0%)とマイナス幅は縮小したものの、前期に続きマイナスとなったほか、商業・医療が▲16.4%(前期:▲20.5%)と前期に続き2桁のマイナスとなって全体を押し下げた。

設備機器投資は、輸送機器が▲9.1%(前期:▲35.6%)と前期からマイナス幅は縮小したものの、前期に続きマイナスとなった一方、産業機器が+23.8%(前期:+14.1%)と前期から伸びが加速したほか、情報処理関連が+22.4%(前期:+28.7%)と前期に続き2桁の伸びを維持した。

知的財産投資では、ソフトウエアが+9.8%(前期:+5.5%)と前期から伸びが加速した一方、研究・開発が+6.3%(前期:+9.5%)、娯楽・文学等が+10.3%(前期:+24.1%)と伸びが鈍化するなどマチマチの結果となった。

最後に住宅投資は、戸建てが前期比年率+14.1%(前期:▲6.0%)、集合住宅が+1.1%(前期:▲1.6%)、といずれも前期からプラスに転じた。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)国防関連支出のマイナス幅が拡大
1-3月期の政府支出は、州・地方政府が前期比年率▲0.8%(前期:▲1.6%)と2期連続でマイナスとなったものの、マイナス幅が縮小した一方、連邦政府が▲5.9%(前期:▲4.3%)とマイナス幅が拡大した(図表6)。

連邦政府支出では、非国防支出が▲2.2%(前期:▲2.0%)と前期から小幅にマイナス幅が拡大したほか、国防関連支出が▲8.5%(前期:▲6.0%)とマイナス幅が拡大した。
(貿易)財輸入の大幅な増加が持続
 1-3月期の輸出入は輸出が前期比年率▲5.9%(前期:+22.4%)と前期からマイナスに転じて成長率を▲0.68%ポイント押し下げたほか、輸入が+17.7%(前期:+17.9%)と前期並みの高い伸びを維持して成長率を▲2.53%ポイント押し下げた。

輸出を仔細にみると、財輸出が前期比年率▲9.6%(前期:+23.4%)と前期からマイナスに転じたほか、サービス輸出が+3.8%(前期:+19.9%)と伸びが鈍化した(図表7)。

財輸出では、資本財(自動車関連除く)が前期比年率+3.5%(前期:+7.8%)と前期から伸びが鈍化したほか、食料・飲料が▲18.8%(前期:+77.3%)、工業用原料が▲8.8%(前期:+13.4%)、自動車関連が▲5.8%(前期:+43.9%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲26.7%(前期:+51.8%)といずれも前期からマイナスに転じた。

サービス輸出では、輸送が▲17.7%(前期:+41.5%)と前期からマイナスに転じたほか、旅行が+2.5%(前期:+242.1%)と伸びが大幅に鈍化した。

一方、輸入はサービス輸入が前期比年率+4.1%(前期:+13.1%)と前期から伸びが鈍化したものの、財輸入が+20.5%(前期:+18.9%)と2桁の伸びを維持したほか、小幅ながら伸びが加速した(図表8)。

財輸入では、工業用原料が▲5.4%(前期:+6.6%)と前期からマイナスに転じた一方、食料・飲料が+5.3%(前期:▲0.1%)とプラスに転じたほか、資本財(自動車関連除く)が+28.6%(前期:+11.8%)、自動車関連が+35.2%(前期:+14.8%)、消費財(食料、自動車関連除く)が+55.1%(前期:+38.1)といずれも伸びが加速した。

サービス輸入は、輸送が+7.3%(前期:+30.4%)と前期から伸びが鈍化したほか、旅行が▲15.1%(前期:+77.6%)とマイナスに転じた。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)PCE価格指数は総合、コアともに前期比、前年同期比で上昇基調が持続
1-3月期のGDP価格指数は前期比年率+8.0%(前期:+7.1%)と前期から上昇し、市場予想(同+7.2%)も上回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+6.5%(前期:+14.5%)となった(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+7.0%、前年同期比+6.3%(前期:+6.4%、+5.5%)と前期比、前年同期比ともに前期から上昇した(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数も、前期比年率+5.2%、前年同期比+5.2%(前期:+5.0%、+4.6%)となり、総合指数同様に前期比、前年同期比ともに前期から上昇しており、物価上昇圧力が持続していることを確認する結果となった。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
 
 

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窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2022年05月02日「経済・金融フラッシュ」)

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