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- 米FOMC(22年5月)-予想通り、政策金利を+0.5%引上げ、6月からのバランスシート縮小開始を決定
2022年05月06日
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1.金融政策の概要:予想通り、0.5%の利上げ、バランスシート縮小開始を決定
連邦公開市場委員会(FOMC)が5月3-4日(現地時間)に開催された。FRBは、市場の予想通り、政策金利を0.5%引上げたほか、6月から量的緩和政策で残高が積み上がった債券の残高圧縮を開始することを決定した。今回発表された声明文では、景気の現状判断部分で、第一四半期に経済活動が縮小したことに言及されたほか、経済見通し部分で新型コロナに関連した中国のロックダウンがサプライチェーンの混乱を悪化させる可能性に言及された。一方、フォワードガイダンス部分の変更はない。
また、声明文と同時に発表された「連邦準備のバランスシート削減計画」では保有残高の減少に際して、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の毎月の削減額が明示されたほか、削減額を上回る償還があった場合には差額分の再投資を行うことが明記された。また、米国債で償還額が削減額を下回る場合には短期債の保有を減らして調整する方針も示された。
今回の金融政策方針は全会一致での決定となった。
また、声明文と同時に発表された「連邦準備のバランスシート削減計画」では保有残高の減少に際して、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の毎月の削減額が明示されたほか、削減額を上回る償還があった場合には差額分の再投資を行うことが明記された。また、米国債で償還額が削減額を下回る場合には短期債の保有を減らして調整する方針も示された。
今回の金融政策方針は全会一致での決定となった。
2.金融政策の評価:インフレ抑制のために中立金利水準まで迅速な利上げ方針を確認
政策金利の0.5%引上げおよび、量的緩和で積み上がった債券保有の残高削減方針を決定したことは予想通り。残高削減のペースも3月FOMC会合の議事録で既に提示されていたことから、こちらもサプライズはない。この結果、債券や株式など金融市場の反応も限定的となった。
一方、パウエル議長によるFOMC会合後の記者会見では、ウクライナ侵攻に伴う米経済への影響が非常に不透明とした上で、金融政策でインフレ抑制を優先する姿勢を明確に示した。また、声明文や記者会見で、今後数会合では0.5%の引き上げを検討すること方針を示しており、次回6月会合と次々回7月会合で事実上0.5%引き上げることを予告したと言えよう。パウエル議長はこれまで政策金利を中立水準まで迅速に引き上げる方針を示しており、インフレを抑制するために22年を通して積極的な金融引き締め策を継続するとみられる。
今回の会合を受けて当研究所は今年の政策金利の引上げ幅をこれまでの1.75%(0.25%×7回)から2.50%(0.50%×3回、0.25%×4回)に引き上げる。この結果、22年末の政策金利水準は2.5%~2.75%となろう。これは2%台半ばとみられる中立金利の水準だ。
一方、パウエル議長によるFOMC会合後の記者会見では、ウクライナ侵攻に伴う米経済への影響が非常に不透明とした上で、金融政策でインフレ抑制を優先する姿勢を明確に示した。また、声明文や記者会見で、今後数会合では0.5%の引き上げを検討すること方針を示しており、次回6月会合と次々回7月会合で事実上0.5%引き上げることを予告したと言えよう。パウエル議長はこれまで政策金利を中立水準まで迅速に引き上げる方針を示しており、インフレを抑制するために22年を通して積極的な金融引き締め策を継続するとみられる。
今回の会合を受けて当研究所は今年の政策金利の引上げ幅をこれまでの1.75%(0.25%×7回)から2.50%(0.50%×3回、0.25%×4回)に引き上げる。この結果、22年末の政策金利水準は2.5%~2.75%となろう。これは2%台半ばとみられる中立金利の水準だ。
3.声明の概要
(金融政策の方針)
(フォワードガイダンス)
(景気判断)
(景気見通し)
- 委員会はFF金利の目標レンジを0.25-0.50%に引き上げることを決定(今回削除)
- 委員会はFF金利の目標レンジを0.75-1.00%に引き上げることを決定(今回追加)
- 加えて、声明文と同時に公表された「連邦準備のバランスシート削減計画」に記載されている通り、当委員会は6月1日より、財務省証券、エージェンシー債、エージェンシーの住宅ローン担保証券の保有を削減し始めることを決定した(今回追加)
(フォワードガイダンス)
- 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
- 金融政策のスタンスが適切に強化されることにより、委員会はインフレが2%の目標に戻り、労働市場が引き続き堅調に推移することを期待する(変更なし)
- 目標レンジの継続的な引上げが適切であることを期待している(変更なし)
- 加えて、委員会は今後の会合で、財務省証券、エージェンシー債、エージェンシーの住宅ローン担保証券の保有の削減を開始する見込みである(今回削除)
- 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
- 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
(景気判断)
- 経済活動と雇用指標は引き続き力強くなっている(今回削除)
- 第一四半期の経済活動全体は小幅に縮小したが、家計支出と設備投資は引き続き堅調だった(今回追加)
- 雇用の伸びはこの数ヵ月堅調で、失業率は大幅に低下した(雇用の伸びについて前回の「力強い」”strong”から「堅調」”robust”に表現変更)
- パンデミックに関連する需給不均衡、エネルギー価格の上昇、より広範な価格圧力を反映してインフレは高止まりしている(変更なし)
(景気見通し)
- ロシアによるウクライナ侵攻は、多大な人的および経済的困窮を引き起こしている(変更なし)
- 米国経済への影響は非常に不透明(変更なし)
- 侵略とそれに関連する出来事は、短期的にはインフレに対する追加的な上昇圧力を生み出したほか、経済活動に重石をかける可能性が高い(インフレ圧力に関して前回の「生み出した可能性が高い」“are likely to create”から「生み出した」”are creating”に表現変更)
- さらに、中国における新型コロナウイルス関連のロックダウンは、サプライチェーンの混乱を悪化させる可能性が高い(今回追加)
4.会見の主なポイント(要旨)
記者会見の主な内容は以下の通り。
- パウエル議長の冒頭発言
- インフレはあまりに高すぎる。我々はそれが引き起こしている苦難を理解しており、それを元の水準に引き戻すために迅速に動いている。すべての人に利益をもたらす強い労働環境を持続するためにはインフレを抑えることが不可欠だ。
- 労働市場は極めてタイトで、インフレは高すぎる。このような状況を背景に、本日、FOMCは政策金利を0.5%引上げ、FF金利の目標水準を今後も引き上げていくことが適切であると予想している。
- 供給制約は予想以上により大きく、より長期に及んでおり、価格上昇は財とサービスのより広範な分野に広がっている。
- インフレへの影響に加えて、侵攻とその関連事象は海外の経済活動を制限し、サプライチェーンをさらに混乱させ、貿易などの経路を通じて米国経済に波及効果をもたらす可能性が高い。
- 我々は政策金利をより正常な水準に迅速に移行するための道を歩んでいる。経済・金融情勢が予想通りに推移すると仮定すると、次回以降数回の会合で50bpsの追加的な引上げが検討されるべきであるという幅広い認識がある。
- 主な質疑応答
- (景気を悪化させずに雇用を鈍化させることが可能か)求人が非常に高い水準にあるため、労働需要を緩やかにすることで失業を増やさずに求人を減らすことは可能だと考えている。
- (0.75%引き上げる可能性について)0.75%の引上げは委員会が積極的に検討しているものではない。我々が次の数回の会合で検討するのは0.5%の引上げだ。もちろん今後の会合で決定していく。
- (年末のインフレ水準が目標を大幅に上回ることが予想される中、今年政策金利が中立水準を上回る可能性は)中立金利はコンセプトで正確には識別できない。そのため、我々はそれを不確実性の高い範囲で推定しており、現在の委員会の推定値は2%~3%となっている。我々が行っているのは中立の範囲に迅速に政策金利を引き上げることだ。物価を安定させるのに必要な経路が中立金利を上回る水準を示唆する場合には中立金利を上回る水準に引き上げることを躊躇しない。
- (労働者の賃金要求や企業の賃上げ意欲などの分野でインフレ心理は変化しているか)まだそのような証拠はない。しかし、我々が安心できる状況ではない。足元で賃金と価格の上昇スパイラルはみられないが、長期の期待インフレ率は概ね安定しているが一部上昇してきおり、リスクだと認識している。
- (バランスシートを縮小させる金融政策の効果は)バランスシートを縮小する効果の計測は非常に不確実である。現在進めている経路で1年に0.25%の利上げに相当するとの見方もあるが、非常に不確実であり、よく分からない。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年05月06日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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