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新型コロナウイルスと保険金支払-「自宅療養」「みなし陽性」「自主療養」、入院給付金は支払われるのか
基礎研REPORT(冊子版)6月号[vol.303]

保険研究部 上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長 有村 寛
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1―はじめに
2―自宅療養
多くの保険会社では、約款上、入院給付金の支払事由について、「治療を目的とした病院または診療所への入院」であることが定められており、自宅療養は該当しないように見える。
しかし、保険会社各社は、この場合でも入院給付金の支払を行っている。言ってみれば約款規定を超えた取扱いのようにも見えるが、医療機関等の逼迫に伴う社会的要請を受けての対応と考えられる。
なお、新型コロナウイルスに罹患した場合の厚生労働省が定める療養期間(入院・宿泊療養・自宅療養)は、有症状と無症状で異なり基本的には以下の通り。
有症状:発症日を0日目とし10日目まで無症状:検体採取日を0日目とし10日目まで(オミクロン型罹患は7日目まで)
一方、入院給付金の支払対象期間は、PCR検査等で「陽性と診断された日」から療養期間終了日とする会社が多いようである。例えば、有症状の場合で、陽性診断が0日目となる場合は、0日目から10日目までの11日間(ケース①)、陽性診断が1日目となる場合は、1日目から10日目までの10日間(ケース②)が支払対象期間となる[図表]。
3―みなし陽性
これらについて、医師による診断確定があり、感染法上の届出・外出制限等も従来同様に求められること等から、保険会社も入院給付金の支払対象としている。
4―自主療養
当取扱いは、先述の「みなし陽性」とは異なり、「約款上定められている、診断書や証明書の提出がない」、「医師による確定診断が行われない」等の課題も考えられ、保険会社としても対応に苦慮している旨の報道も見られた。しかしながら同2月18日以降、一転して保険会社が支払う旨、報道されている。
上記「自主療養届」とは別の、保険金請求用の「療養証明書」を神奈川県が発行する等、保険会社として必要な事項への対応を神奈川県が行ったこともあって、保険会社としても支払える状況が整ったと判断したものと考えられる。
5―おわりに
これまで災害等の発生時には、生保業界は、誠心誠意被害者に寄り添った対応を行ってきた。新型コロナウイルス関係の対応においても、社会的要請に応え、患者に寄り添う対応をすべく、可能な限り柔軟な約款解釈に基づく取扱に尽力するのみならず、感染の急拡大に伴い請求も急増する中、各社の支払部門では、他部門に異動した経験者に手伝ってもらって対応する等、文字通り必死の取組を行っている。引き続き、状況の変化や保険会社の取組みについて注視していきたい。
(2022年06月07日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1822
- 【職歴】
1989年 日本生命入社
1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職
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