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「ニッポンの再婚」最新データ紹介-2020年婚姻統計分析結果から-
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
【再婚割合は1/4で安定傾向】
その後、1960年から1981年までは再婚者含みの結婚の割合は概ね11%~15%の範囲で推移しており、同期間中での割合は上昇傾向にあったものの、決して多いとまでいえる水準ではなかった。
ところが、バブル期にあたる1980年代後半になると再婚割合は上昇し、18%台に達する。その後、バブル崩壊による影響を受けたかは定かでないが、再婚割合は着実に上昇し、1999年に20%を超え、2005年には初めて25%に達した。さはさりながら、グラフからもみてとれるように、2012年以降は26%台で推移しており、概ね横ばいの水準を維持している。
以上から、戦後、景気の高低にあまり影響を受けず再婚割合は徐々に増え続けてきたが、ここ10年程度は約1/4の割合で推移している、という状況である。
【2020年で最も多かったのは「再婚者同士」】
ではこの(1)~(3)のうち、最も多いパターンはどれであろうか。
2020年単年度で最も多かった組み合わせは、再婚者同士の組み合わせ((1))であった(図表2)。婚姻総数の9.8%となっている。そして、僅差の9.6%で夫だけ再婚の組み合わせ((2))が続く。
戦後の推移でみると、再婚といえば夫だけが再婚で妻が初婚((2))という結婚が最も多かった時代が1970年代まで続いた。しかし、再婚割合が上昇した1980年代になると、夫婦とも再婚のカップル((1))の割合が、夫だけが再婚で妻が初婚((2))に拮抗し始める。
ある意味、再婚の多様化が進んだ時代が1980年代であったといえるのかもしれない。ただ、1980年代以降、再婚者同士((1))と夫だけが再婚((2))の組み合わせは、ほぼ同水準で推移しているものの、妻だけが再婚((3))というカップルは、3つの再婚パターンのなかでは常に最下位に位置しており、また、2004年以降は7.0~7.2%で、割合の上昇は頭打ちとなっている点が特徴的である。
結婚のメリットの1つとして、「夫婦共働きによる2馬力で世帯での収入を安定させる」ことがあるが、女性が再婚者である場合、そのメリットを活かしにくい環境があるために、妻だけが再婚((3))が成立しにくいパターンとなっているのではないか、との示唆も出来なくはないだろう1。
1 OECD諸国の中でシングルマザー貧困率が最も高い国が日本であることを注意喚起しておきたい。
【婚姻数大激減の原因は「初婚同士の結婚」大激減にあり】
1970年から2020年までの半世紀で、総婚姻数は約103万件から約53万件へと51%水準にまで半減した。コロナ禍前の2019年との比較でも約60万件へと58%水準にまで減少していた。ただし、婚姻総数の激減に影響したのは、初婚・再婚のパターンで精査すると特定の組み合わせであることがわかる(図表3)。
50年間にわたり、総婚姻数の激減に限りなく完全一致の動きで激減したのは、初婚同士の結婚である。つまり相関分析結果からは、日本の結婚の大激減は初婚カップルの大激減である、と言い換えることができる。「未婚少子化の対策には、再婚への応援が効くのではないか」といったメディアからの取材も受けることがあるが、統計的にみた回答はNOである。
再婚に関してはどのような組み合わせであっても、再婚カップルが増えるほど、婚姻総数は負の関連性をもって逆に減少していくことが示されている。
結婚の選択は個人の自由であり、結婚パターンの組み合わせも全くの自由である。
ただし、統計的に言えることとしては、いかなるパターンであっても再婚者が増えるほどに、全体の婚姻数が下落する傾向が明確であり、再婚者支援は未婚少子化対策とは逆の結果につながりやすい。そもそも再婚はその前段階に離婚があってこそ生じるライフイベントである。安易に再婚者で結婚を増やせばいいのでは、という考えより前に、離婚という苦渋の決断に至るような結婚の選択が増えない社会とは、を考えるべきではないだろうか。
それが果たして未婚者同士の結婚であるのか、までは深く考えずに、結婚の先延ばしに都合のいい解釈を与えてしまう環境リスクが高まるのである。
ゆえに40代以降の結婚希望のある未婚者のなかには、「婚期を遅らせても、いつかは結婚できるのではないか」といった統計的には甘過ぎる期待感を抱く者は少なくない。中年期以降の結婚の発生条件に「再婚男女が多く含まれている」ということを看過してしまっているのである。
結婚支援を行う現場の支援者からは、「男女ともにもっと早い年齢で相談に来てくれれば」という悩みを非常に多く聞くことを、この場を借りてお伝えしておきたい。

03-3512-1878
(2022年05月23日「研究員の眼」)
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