コラム
2020年05月18日

ニッポンの離婚はいつ起こっているのか?(2)-同居期間分析/5年未満離婚は3割超-

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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同居3年未満のスピード離婚は5組に1組

前回の「ニッポンの離婚はいつ起こっているのか?(1)」においては、短期でみても長期でみても、年間の婚姻届件数に対する離婚届件数のボリュームは33%を超えており(2018年35.5%、2009年~2018年の10年間35.3%、2000年~2018年で35.4%)、3組に1組以上という離婚発生状況であるということができる、という分析結果を紹介した。
 
今回は、「では一体、同居期間何年程度で離婚に至っているのか」という視点から、統計分析結果をみてみたい。
【図表1】2018年 離婚までの同居期間別割合
国の離婚統計において、年間総離婚件数に対して同居期間別に発生件数割合を示したものが上の図表である(図表1)。ちなみに2018年は20万8333件の離婚届が提出された。
 
さらに累積発生率を計算した結果を以下に示してみたい(図表2)。
【図表2】全離婚に占める離婚までの同居期間の累積割合(%)
全離婚のうち、同居1年未満の超スピード離婚は6%であり、3年目までのいわゆるスピード離婚の累計でみると、ちょうど20%となり、5組に1組がスピード離婚という状況である。
 
同様に累積発生率でみると、やはり短期間での離婚といえる同居5年未満離婚は31%となり、現状としては、3組に1組は5年未満で離婚している様子が示されている。同居10年未満でみると56%となり、離婚の半数以上が10年未満の離婚となっている。

実は早期離婚の割合は減っている?

同居5年未満の離婚が3割、10年未満が5割超となり、想像以上に早期離婚が多いと感じる読者も少なくないと思う。しかし、離婚総数に占める同居5年未満離婚の割合をみてみると、1970年は52%、1980年は37%、と、実は早期離婚の割合自体は大きく減少してきているのである1(図表3)。
 
その一方で、離婚件数は1970年の2.2倍、1980年の1.5倍と増加しており、件数の増加と早期離婚の割合低下という推移からは、「離婚に至るまでの同居期間の多様化」(特に中長期同居後の離婚割合の増加)ということは指摘できるだろう。
【図表3】同居5年未満の離婚割合の推移 1970年~2018年(件、%)
 
1 1年未満離婚についても同様で、1970年は15%、1980年は9%であった。

離婚までの速さについては多面的な見方が必要

年間の離婚の発生ボリュームが、婚姻10組に対して1組程度と、現在と比べてまだ少なかった21970年代以前に結婚した高齢層を中心として、離婚について否定的な概念を持ちやすい傾向がみられる。
 
しかし、児童虐待やDVという問題への対処、そして幸せな再スタートである再婚の拡がりといった観点からは、婚姻の解消を必要以上に回避しようとする文化は望ましいとはいえない。現在、新型コロナの拡大防止のためのステイホームが定着する中で、DV被害の訴えが増加し、急遽、政府のホームページにDV相談窓口が特設されるといった事象も発生している3
 
暴力をふるうパートナーとの離婚相談において、
「親からは子どものために我慢しなさいといわれている」「我慢するものだと思い込んでいた」といった声もいまだになくなってはいない。
 
しかし、結婚生活において一番大切なのは、「2人が愛情といたわりをもって、ともに過ごせるかどうかである」という根本的なところに、当事者だけでなく、周囲の我々親世代も気が付かなくてはならないのかもしれない。
 
なぜならば、「愛情といたわりをもって、ともに過ごせるかどうか」をベースとした2人の大人の姿がこの社会の結婚生活のスタンダードとならない限り、その親を鏡(ロールモデル)とする子世代の結婚生活への期待感の醸成(=未婚化を防ぐこと)は困難ではないか、そう思うからである。
 
2 「ニッポンの離婚はいつ起こっているのか?(1)」データ参照
3 内閣府が相談窓口『DV相談+』を開設、24時間対応
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

(2020年05月18日「研究員の眼」)

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