2018年11月07日

データで見る「ニッポンの独身者は誰と暮らしているのか」-「結婚のメリットがわからない」独身者の世帯(居場所)のカタチとは。

基礎研REPORT(冊子版)11月号

生活研究部 研究員   天野 馨南子

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1―はじめに:急増する「交際相手がいない」男女

筆者が日本の未婚化(2015年50歳時点婚歴なし:男性の約1/4、女性の約1/7)分析を行うようになってから、海外のメディアの問合せも増えてきている。海外においては宗教・民族等多様性の理由から1つのパートナー制度に絞らず、法的に複数展開していることがある。ゆえに「法律上の未婚」に関しては「結婚制度の多様性の問題」という視点から、驚かれにくい。しかし、次に関しては「ありえない」という反応が高確率で返ってくる[図表1]。
独身者の割合
18歳から34歳の独身男女のうち、異性の交際相手をもたない男女割合が特に2000年調査以降急増している。直近の2015年調査では男性の7割、女性の6割に交際相手がいない。これが若い男女の回答と知ると「本当なのか」と驚愕される。それも無理はない。
 
経済的にみるなら、もし独身者が経済的に自立して1人世帯という場合、それは最も非効率的なコスト構造(お金がかかる)の暮らし方である。
 
OECDの貧困世帯の定義に使用される計算でも、2人世帯では1人世帯よりもコストが7割にまで落とせることが示される。光熱費や家賃など固定費を含む費用は世帯人数増加により逓減し、食品等もまとめ買いによって大きくコスト低下が可能だ。モノの供給者側からすれば単身世帯者は単価を高く売れる「儲かる相手」ではあるが、需要者側にとってはコスト高(2人世帯より1.4倍コスト増)であるために、貯蓄に影響しかねない暮らし方となる。「お金持ちの遊興暮らし」ならまだしも、金銭的な無駄を省きたい、お金がない人には最も向かない暮らし方となる。
 
そこで本レポートでは、統計的には未婚化と非交際化が急増しているニッポンの独身者について、暮らしのコスト構造を大きく支配する世帯構造に注目し、彼らがどのような世帯構造で暮らしているのか、国勢調査結果を用いて検証してみたい。

2―男女別「独身者」割合

配偶の状況 最初に、本レポートでは国の統計上「未婚」と標記される婚歴のないグループについて分析する。死別・離別者については独身者に含めない。本レポートで明らかにしたいテーマが「結婚せずに独身でいる男女の世帯構造(居場所のカタチ)とは?」であることから、結婚経験のある者についてあえて含めないことを前提としたい。
 
まず最新の国勢調査結果から、日本における総数ベースの配偶状況を確認したい[図表2]。

20歳以上の男女合計では、22.2%(5人に1人超)は結婚歴がない独身者である。男性の方が女性よりも独身者割合が高く、4人に1人超となる。




 

3―年齢別・男女別独身者は誰と住んでいるのか?

1|独身男性のケース-若いうちは親と同居、親との同居解消は50代から
 
独身男性が年齢ゾーン別に住む世帯形態を以下にまとめた[図表3]。
 
20~40代まで両親または母親のみと同居といういわゆる「親子密着世帯」が半数を超えた。親だけでなく祖父母なども含めた親族だけで構成される身内世帯に住む者となると、40代まで実に6割超で推移する。
 
20~30代は年齢的に親の介護等での同居が6割にのぼるとはまだ考えにくい。学生時代の延長のような世帯を6割の独身男性が親族と続行し、その割合のまま40代に移行する。50代以降(両親は70代以上になると予想)、親の介護等で親との同居が増加することも予想したが、逆にその割合は減少、代わりに1人暮らしやきょうだいのみ同居が増加する。親が施設に入る、他界する等で同居を中止・終了しているようにも見えるデータとなっている。
 
1人暮らし独身男性は40代までは3割程度だが、親などの親族同居解消にともない50代以降は急増、60代では6割となる。初老の50代から初めて慣れない1人暮らしを始める独身男性が相当数存在する、という社会的に不安な状況が示唆されているようである。

2|独身女性のケース―極めて高い親との同居率、60代から独立?

次に、独身女性についても同様にまとめた[図表4]。
全期間、女性の方が男性に比べて親や親族との同居率が高い。

約7割の独身女性が40代まで親・親族との同居を続けている。一方、1人暮らしは約3割程度で40代まで推移する。こちらも男性同様、50代から親と同居は大きく減少する。60代で両親との同居が減少する代わりにきょうだいとの同居に同率水準で移行していることも興味深く、男性より強く「身内密着型世帯死守」が示唆されている。

4―「親族密着世帯」依存の生き方

1|「長期子どもポジション・キープ」メリット  

分析結果から感じるのは「これでは初老になるまでパートナーを持つメリットなど感じられないのではないか」である。先述の通り、1人より2人世帯の方が生活コストは約7割に減少する。これがパートナーを持つ大きなメリットの1つといえる。しかし両親との3人世帯の1人当たりコストは6割に、祖父母も同居であれば5人世帯でコストが5割に減少する。親や祖父母側にも当然この同居メリットはある。多大なコスト削減効果を持つ親族同居から若い男女が離れられない根拠の1つはこの同居メリットともいえる。
 
経済的理由に加えて、長年慣れ親しんだ生活習慣を変えずに済むというメリットが付加される。長年子どもポジションで暮らしてきた立場から「加齢しても子どもとしての居場所を維持」することさえも容易だろう。これは結婚同居のメリットから絶対得られないメリットである。
 
例えば親との同居メリットとして、
● 家事・近所付き合いは母親
● 不動産コストゼロ
● 父親の車が足代わり

…となってくると、子どもポジションにある者の思考が「親を超える経済利益享受可能な結婚以外メリットなし」となっても致し方ないだろう。

2|老後1人で生活することへの不安―45歳以上で結婚希望再燃
 
かつて農村社会が主流であった時代には、大規模家族経営のメリットとして、親族同居死守が最適であったかもしれない。しかし、第2次・第3次産業従事者が大半を占める現在、このような親族密着型世帯のあり方維持は、愛する娘・息子の稼ぐ力、家庭形成意欲、社会的責任感など諸々の自立心を奪いかねないことは考えておきたいところである。
 
明治安田生活福祉研究所「2017年 35~54歳の結婚意識に関する調査」では「一生独身でいることを決意・覚悟した理由」として男性4割、女性3割が「結婚に向いていない」と回答。しかし45歳以上で「やっぱり結婚したいと思うようになった理由」について男性4割、女性5割が「老後1人で生活することへの不安」と回答している。
 
本レポート分析からは、50代以降、親の健康事情等によって「20代から続いた親との同居が解消」され、「中高年からの非自発的な1人暮らし」をする独身が急増する姿がみてとれる。その中で、45歳以降ようやく「1人は不安、やはり結婚したい」と思い始める現代の独身男女の姿が浮かび上がる。
 
独身男女の語る「結婚が向いていない」「メリットがわからない」などという回答背景の1つに、男性6割超、女性7割超の「身内だけとのリーズナブルで気楽な暮らし」があることは間違いないといえるのではないだろうか。

―可愛い子には旅をさせよ。

そんな言葉が日本の未婚化を理解するキーワードの1つかもしれない。
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生活研究部   研究員

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
少子化対策・女性活躍推進

(2018年11月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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