コラム
2022年04月28日

はじめての不動産投資(3)-初心者には難しい不動産 (3)権利関係が複雑な不動産(後半)~「建物とその敷地」と権利の組み合わせ

金融研究部 准主任研究員   渡邊 布味子

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1――はじめに

前回の、『はじめての不動産投資(3)(3)』 では、「権利関係が複雑な不動産(前半)」として代表的な権利には何があるのかを整理した1

今回はその後半で、不動産での代表的な権利の具体的な組み合わせとその分類を紹介する。権利は不動産の価値の源となるため、「不動産の分類」を知ることにより、「何に投資しているのか」をより明確に認識し、不動産の保有や売買等における注意点を理解しやすくなるのではないだろうか。

2――不動産の類型とは

不動産は「実際の利用状況と権利の状態」に着目すると「不動産の類型」という分類になる。

土地の上に建物がある場合、不動産の類型は、「自用の建物とその敷地」、「貸家とその敷地」、「借地権付建物」、「区分所有建物とその敷地」の4つに大別される。
 
「自用の建物とその敷地」とは建物を所有者自身が利用する場合の土地(所有権)と建物のことをいう。代表的な不動産は戸建ての自宅である。

「貸家とその敷地」とは建物を賃貸している場合の土地(所有権)と建物のことをいう。代表的な不動産は一棟の賃貸マンション・アパートである。

「借地権付建物」とは借りている土地(借地権)とその上にある建物のことをいう。はじめて不動産投資をする人が出会うことはあまりないが、例えばJ-REITの郊外型店舗にはこの類型が多くある。

「区分所有建物とその敷地」とは建物が区分所有である場合の建物の所有部分と土地の持分のことをいう。代表的な不動産は自宅マンション、投資用区分マンションである。

そして、「借地権付建物」と「区分所有建物とその敷地」はそれぞれ「建物を所有者自身が利用する場合」と「賃貸している場合」に分けられる。
 
つまり、「不動産の類型」としては、土地および建物の権利の状態の3つのパターン(①土地が所有権、②土地が借地権、③建物が区分所有)に、利用方法が「建物を所有者自身が利用する場合」と「建物を賃貸している場合」の2つのパターンを掛け合わせ、不動産を6つに分類できる(図表1)。
図表1 不動産の類型(建物とその敷地)

3――「建物とその敷地」の価格の求め方

不動産の価格を求める際には、「原価法」、「取引事例比較法」、「収益還元法」の3つの手法を用いる。原価法は費用性、取引事例比較法は市場性、収益還元法は収益性の観点から、それぞれ適正な価格を求めようとするものである。「建物とその敷地」の価格を求める際には、「建物を所有者自身が利用する場合」か、「建物を賃貸している場合」かによって重視する手法が変わる。
 
「建物を所有者自身が利用する場合」には、「原価法」、「取引事例比較法」、「収益還元法」の3つの手法から得られた価格を同等にバランスよく重視するのが通常である。なぜなら、不動産の価格はその不動産をそのまま利用する予定の購入希望者だけではなく、リフォーム・解体後の開発・賃貸用不動産への転用など、様々な意図を持った他の購入希望者との競争で決まり、客観的かつ多角的な視点で価格を求める必要があるからである。

具体的には、「新しい同じ建物を建築費と現在までの減価を反映した価格(原価法による価格)」、「同等の建物とその敷地が市場で取引される場合の価格を考慮した価格(取引事例比較法による価格)」、「賃貸した場合の価格(収益還元法による価格)」を求めて相互に比較し、より高い価値を生み出すのはいずれか、適正な価格水準はどこにあるかを見極めていくこととなる(図表2)。
 
一方、建物が貸家である場合は、そもそも賃料収入や収益を得ることが目的なのであるから、賃料から価格を求める「収益還元法」が目的に合致する手法となる。実際は、「収益還元法」を主軸とし、「原価法」と「取引事例比較法」で「収益還元法による価格が適正かどうか」という視点で検証しながら不動産の価値を判断する(図表3)。
 
個人が投資用不動産として出会うものは、「貸家とその敷地」である一棟の賃貸用アパート・マンションか、「建物が賃貸される場合の区分所有建物とその敷地」である投資マンションが多いと思われる。つまり、不動産の投資を考えるのであれば、まずは収益還元法を習熟する必要があるだろう2
図表2 建物を所有者自身が利用する場合の「建物とその敷地」の価格の求め方(イメージ)/図表3 建物を賃貸している場合の「建物とその敷地」の価格の求め方(イメージ)
なお、日本においては賃借権は強力な権利である。アパートやマンションの一室を人に貸す場合は、賃借人が強い権利を持つことを十分に認識しておく必要がある。賃料が払われない場合でも賃借人の退去を求めるのには多額の費用がかかる等、立ち退きの実現にはかなりの困難を伴い、裁判となっても結局賃借人が守られることもある。「投資対象の土地と建物の権利が所有権で、建物一棟丸ごと一人に貸す」といったシンプルな権利関係であっても、「相当なリスクを含有している」との認識の下で投資するべきだろう。アパートやマンションの賃借人は慎重に選ぶということも非常に大切である。

4――まとめ

以上、不動産の権利に着目した分類として、「不動産の類型」について説明した。はじめて不動産を投資する人が出会う不動産は、「区分所有建物とその敷地」である投資用マンションであることが多い。それを賃借人に貸して収益を獲得することになる。「不動産の類型」を知っていると、区分所有している建物を賃貸するということが分かり、それに応じて、注意すべき点が理解しやすくなるのではないだろうか。

しかし、一言で賃借権といっても、その目的や範囲、期間などによって注意すべき点は様々である。

次回は、「貸家とその敷地の価格を求める際の注意点」について解説したい。
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

(2022年04月28日「研究員の眼」)

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【はじめての不動産投資(3)-初心者には難しい不動産 (3)権利関係が複雑な不動産(後半)~「建物とその敷地」と権利の組み合わせ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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