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コロナ禍における高齢者の体力・運動能力の低下
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
1――2019年と比べて、子どもと高齢者で体力・運動能力は低下
小学生(6~11歳)、中学生~大学生(12~19歳)、成年(20~64歳)、高齢者(65~79歳)の4つの年代別に、握力や上体起こしなど、複数項目にわたって調査している1。調査項目は、6~11歳、12~19歳は8項目、20~64歳、65~79歳は6項目で、結果は、各項目の記録のほか、各項目を10点満点で評価した点数の合計を総合評価の指標として使っている。
2020年調査は、新型コロナウイルスの流行により、調査を実施できなかった都道府県があったほか、調査時期が例年よりも遅れたことにより、結果は参考値として公表されたが、2021年調査は例年通り実施されている。そこで、2020年を除く直近20年について、合計点の推移をみた。
その結果、2019年までは、20~64歳の成年では、25~29歳と、55~59歳では男女とも上昇傾向、35~39歳と45~49歳では、横ばいかやや低下していたが、6~19歳の青少年と、65~79歳の高齢者では、おおむね上昇傾向にあった(図表1)。ところが、2019年調査と2021年調査を比較すると、上昇傾向にあった子どもや高齢者を含めてほとんどの年齢で点数が低下していた。
高齢者については、新型コロナウイルスに感染した場合に、若年者と比べて重症化や死亡リスクが高いとされていたことから、感染に対する不安を感じる人が多く、外出自粛をする人も他年代よりも多いと考えられる。図表1における高齢者の点数の低下も、新型コロナウイルスの流行にともなう移動や外出、運動の機会が失われたことの影響が出ていると考えられる。
高齢になると、年齢を重ねるだけで、活動は自然と減少していくと思われるが、新型コロナウイルスの流行開始から2年にわたって外出を自粛していることやスポーツジム等の利用を控えることによって、例年以上に活動量が低下し、身体機能が低下している可能性が考えられる。
1 体力・運動能力に関するテスト項目は以下のとおり。
2 スポーツ庁「令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」(https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/kodomo/zencyo/1411922_00003.html、2022年4月21日アクセス)
2――運動する時間が減少した高齢者の、健康状態や身体機能の低下に関する不安は高い
「運動をする時間が減った(やや減少+減少)」と回答した人の割合は、年齢が高いほど、新型コロナウイルス感染拡大前と比べて高い。この間の流行の状況は、2021年7~9月頃(第5回調査と第6回調査の間)、2022年1月以降(第7回調査と第8回調査の間)に第5波、第6波とされる感染拡大時期があった。新規陽性者の人数の増減が繰り返していることもあり、運動をする時間が減少している割合に、大きな改善は見られず、70~74歳では2021年7月から3割程度と、高い水準で推移していた。
高齢者の運動をする時間の減少は、図表2のとおり、高い水準で継続していることから、体力・運動能力の低下は、引き続き課題となるだろう。
3 20~74歳の男女を対象とするインターネット調査。第5回は2021年7月5~7日調査実施、有効回答数2,582、第6回は2021年9月22~29日調査実施、有効回答数2,579、第7回は2021年12月22~28日調査実施、有効回答数2,543、第8回は2022年3月23~29日調査実施、有効回答数2,584。
3――高齢者はどの程度動いておくことが望ましいか
ニッセイ基礎研究所の「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」によると、新規陽性者の人数の増減が繰り返していることもあり、2022年3月の調査では、70歳代では3割の人が流行前と比べて運動をする時間が減少したままであることから(図表2)、今後も高齢者の体力・運動能力の低下が続く可能性がある。
新型コロナウイルスの流行がはじまって既に2年経過しているため、運動習慣がなくなったり、日々の生活の中での活動が縮小している高齢者の場合、流行が収束しても新たに運動習慣を身につけるのは若い世代よりも難しい可能性がある。高齢者に推奨される筋トレや、毎日必要な活動量の目安を示すなどして、感染不安が強い高齢者にも取り入れられるトレーニング等を示していくことが必要だろう。
(2022年04月26日「保険・年金フォーカス」)
03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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