2022年04月11日

ロシアGDP(2021年10-12月期)-ウクライナ侵攻前の経済状況は良好

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比5.0%と伸び率は加速

4月8日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
2022年10-12月期の前年同期比伸び率は5.0%、予想1(同4.8%)を上回り、前期(同4.0%)から加速した(図表1・2)

(図表1)ロシアの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ロシアの実質GDP成長率(供給項目別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:ウクライナ侵攻前は順調に回復

ロシアの20年10-12月期の実質GDP伸び率は5.0%となり、7-9月期(4.0%)から加速した。なお、7-9月期の数値は4.3%からやや下方修正されている。21年暦年の伸び率は4.7%となり、2月18日に公表されていた速報値(4.7%)と同じだった。なお、コロナ禍前の2年前と比べた伸び率は3.6%(前期:0.6%)となり、2年前比でも成長は加速している。

ロシアは今年2月にウクライナに侵攻し、西側諸国から経済・金融制裁を課されたため、22年1-3月期の状況は21年と大きく変わっているが、以下ではロシア連邦統計局の公表データをもとにウクライナ侵攻前の21年10-12月期の状況を振り返っておきたい。

まず、需要項目別の前年同期比を見ると、家計消費が7.1%(前期:9.5%)、政府消費が1.1%(前期:1.3%)、投資が5.2%(前期:8.2%)、輸出が7.1%(前期:8.7%)、輸入が17.7%(前期:19.2%)となった。なお、10-12月期は在庫変動等の前年比寄与度が1.7%ポイントであり、成長率を大きく押し上げる材料となっている。

産業別の伸び率を2年前比で見ると(図表3)、大分類では第一次産業(1.5%)、第二次産業(5.7%)、第三次産業(金融・不動産が4.1%、その他が3.2%)のいずれもプラスとなり、コロナ禍前の水準を上回った。今期は第二次産業の伸び率が高く、シェアの大きい製造業が7.6%と前期(3.4%)から加速、次いでシェアの大きい鉱業も1.4%と前期(▲4.0%)のマイナス成長からプラスに転じた。一方、第三次産業では飲食・居住が▲8.2%(前期:▲4.1%)とマイナス幅を拡大している。ロシアで、新型コロナの感染急増に対応するため10月30日から11月7日まで国内企業・学校を休みにする非労働日を導入した影響が生じている可能性がある。ただし、同じ対面サービス産業でも芸術・娯楽は▲0.1%(前期:▲8.7%)とマイナス幅を縮小しており、第三次産業全体も3.2%(前期1.9%)と伸び率が加速している。
(図表3)ロシアの実質GDP成長率(コロナ禍前比、季節調整値前期比)
季節調整系列を見ると10-12月期は前期比1.5%(前期0.1%)と成長が加速している。産業別の前期比でも、第一次産業(8.9%)、第二次産業(2.2%)、第三次産業(金融・不動産が0.5%、その他が1.3%)といずれもプラス成長となり、対面サービス産業も前期比で見ると飲食・居住が3.2%、芸術・娯楽が6.8%とプラス成長となっている(図表3・4)。
(図表4)ロシアの実質GDPの動向(供給項目別)/(図表5)ロシアの実質GDPの動向(需要項目別)
一方、需要別の前期比(季節調整系列)は、家計消費が▲0.6%(前期:1.4%)、政府消費が0.4%(前期:▲0.2%)、投資が0.6%(前期:0.3%)、輸出が▲0.9%(前期:6.3%)、輸入が4.6%(前期:3.2%)となり、家計消費と輸出が伸び悩んだことが分かる(図表5)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年04月11日「経済・金融フラッシュ」)

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