- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 欧州経済 >
- なぜウクライナ侵攻を予想できなかったのか?-読み違えはロシア側にも-
2022年03月02日
■要旨
- 事前の注意喚起にも関わらず、ロシアによるウクライナへの大規模な軍事侵攻を的確に予想できなかったのは、プーチン大統領のマインドセット(思考パターン)と資源と軍事力と経済力とのアンバランスが意味するところを読み違えていたからだ。
- 大規模軍事侵攻は合理的ではないが、プーチン大統領は自らの信念に従った。合理的か否かという見方にとらわれなければ、プーチン大統領のマインドセットは、過去の言動や、実際のロシアの動きによって、はっきりと示されていたことに気付く。目的は、ウクライナのNATO加盟阻止だけでなく、冷戦後形成された欧州の安全保障体制そのものを覆すことにあるように感じられるようになる。
- ロシアは資源が豊かで、軍事力やサイバー戦での能力は高いが、経済的には大国とは言えず、十分な豊かさも実現していない。経済力は大規模な軍事侵攻を制約すると考えたが、むしろ、経済力に比し強大な軍事力や、攻撃力に偏った国家のサイバー能力は、これらを行使することで国際秩序の変更を迫る選択をする動機となると見るべきだった。
- 大規模軍事侵攻を実行に移したプーチン大統領も、ウクライナの軍事力やロシア国内の反応、中国の姿勢、何よりも西側の結束力を読み違えていたことに気付き始めているかもしれない。戦時下で欧州の結束は強まっている。プーチン大統領が重い代償を払い、ウクライナの主権が尊重されるよう世界も動かなければならない。
(2022年03月02日「Weekly エコノミスト・レター」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1832
経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/09/06 | 14年振りの英労働党政権-短かったハネムーン期間 | 伊藤 さゆり | 基礎研マンスリー |
2024/07/31 | 右傾化した欧州議会-極右伸長の政策への影響は限定的だが | 伊藤 さゆり | Weekly エコノミスト・レター |
2024/07/11 | EUの対中国デリスキングの行方-2024年欧州議会選挙を越えて | 伊藤 さゆり | ニッセイ基礎研所報 |
2024/07/10 | 英仏下院選を終えて-財政リスクを警戒すべきはどちらか? | 伊藤 さゆり | 研究員の眼 |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年09月10日
貸出・マネタリー統計(24年8月)~貸出の伸びは堅調を維持、マネタリーベースは前年割れが秒読み段階に -
2024年09月10日
モンティ・ホール問題とベイズ推定-追加情報に応じて取るべき行動をどう変えるか? -
2024年09月10日
投資部門別売買動向(24年8月)~事業法人が大幅買い越し~ -
2024年09月10日
出生率の低下は将来の年金の水準にどう影響するか?~年金改革ウォッチ 2024年9月号 -
2024年09月10日
賃料重視へのノルム転換
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【なぜウクライナ侵攻を予想できなかったのか?-読み違えはロシア側にも-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
なぜウクライナ侵攻を予想できなかったのか?-読み違えはロシア側にも-のレポート Topへ