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- 欧州のコロナ感染再拡大とインフレ高進-ECBの早期利上げの現実味
2021年11月24日
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■要旨
- ユーロ圏の回復持続には3つのリスクが立ちはだかる。新型コロナの感染拡大、世界的な供給網の混乱、インフレの上振れ長期化で早期の緩和縮小を迫られるリスクだ。
- 新型コロナの感染拡大は、回復の勢いを鈍らせる要因にはなるが、ワクチンや証明書等の活用によって、過去の波に比べて経済への打撃は小さいと見られる。
- 世界的な供給網の混乱の影響はコロナ禍から逸早く立ち直った製造業に大きい。セクター毎、国毎に深刻さは異なるが、圏内で伝播し、影響が増幅するリスクには注意が必要だ。混乱解消の見通しはセクター毎にも異なり、不透明だ。供給網には、経済安全保障や気候や人権などを理由とする見直し圧力も加わり、遅延やコストの上昇を招き得る。
- 消費者物価は前年同月比4.1%とECBの安定の目安である中期で2%を大きく超える。22年後半には、エネルギー価格の押し上げ圧力も緩和し、2%を下回る見通しだが、供給網の制約の持続のほか、供給網の見直し、気候危機、脱炭素化のための政策によるエネルギー価格への圧力が持続する可能性も否定できない。
- ECBが早期利上げに動くとすれば、予想物価上昇率が明確に上振れ、賃金上昇圧力が強まった場合である。足もとはどちらの兆候も弱く、感染拡大やインフレによる需要抑制が見込まれることからも、ECBの22年利上げの現実味は乏しい。しかし、先行きの不確実性は高いことから、ECBは、早すぎる緩和縮小に慎重な姿勢をとりつつ、インフレ・リスクを慎重に見極めて行くだろう。
(2021年11月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2015~2024年度 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017~2024年度 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022~2024年度 Discuss Japan編集委員
・ 2022年5月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
・ 2024年10月~ 雑誌『外交』編集委員
・ 2025年5月~ 経団連総合政策研究所特任研究主幹
伊藤 さゆりのレポート
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