2021年05月27日

EUのワクチン・パスポートは景気回復の切り札か?

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

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■要旨
 
  1. EUがワクチン・パスポート「デジタルコロナ証明書」を7月1日から導入する。
     
  2. 証明書の保持者は、原則として、感染封じ込めのために導入されている入国時の自主隔離や検査などを免除される。証明書は、ヒトの移動の自由を原則とし、権利とする単一市場内の障壁を削減し、停滞する観光業の支援材料となる。
     
  3. EUは、圏外からの渡航に関しても、感染状況やワクチン接種状況などに応じて制限を緩和する。米英などと証明書の相互承認が実現すれば観光業への効果は大きい。
     
  4. 一連の取り組みは、パンデミックが続いているからこそ必要とされるものであり、移動の自由の本格的な回復からは、なお程遠い状況にある。各国国内の行動制限は緩和の方向にあるが、解消した訳ではなく、欧州疾病予防管理センター(ECDC)も、圏内の多くの地域の感染リスクを「中リスク」から「高リスク」に分類している。
     
  5. ワクチン接種や証明書は、景気回復の切り札にはならないが、バカンス・シーズンの制限緩和による急回復後、感染再拡大でマイナス成長に逆戻りした昨年と同じ失敗を防ぐ効果は見込まれる。EU圏内では、観光業依存度の高い国々の落ち込みが深く回復が鈍い(下図右上に分布する国々)。証明書には、復興基金とともに格差拡大を抑制し、債務危機再燃のリスクをコントロールし、域内の安定性を高める効果も期待できる。
観光業依存度の高い国の落ち込みは深く回復は鈍い

(2021年05月27日「Weekly エコノミスト・レター」)

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