2021年03月25日

欧州復興基金の実相-米国流の‘Go big’は望めない-

経済研究部 研究理事   伊藤 さゆり

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■要旨
 
  1. EUは、コロナ危機では、過去の教訓を生かし、国家補助や財政ルール柔軟化で加盟国の対応を促し、資金繰り支援の危機対応パッケージと復興基金構築に動いた。
     
  2. これまでのEU主要国の対策の規模は、日米英に比べ小さいが、財政安定化機能もあり、危機の傷痕となる失業の増大、企業破綻阻止では一定の効果を発揮してきた。
     
  3. 当面は危機の傷痕を緩和する政策を継続し、復興基金の起動に優先的に取り組む方針だ。
     
  4. 米国の大模追加経済対策は景気過熱・インフレリスクを巡る議論を引き起こしているが、対策は小さすぎるよりは大きすぎる方が良いという点では基本的に一致しているようだ。回復が遅れるEUも、より大胆に動くべきとの声もある。
     
  5. だが、EUの‘Go big’の実践は容易ではない。過剰債務国は信用危機再燃リスク等を意識せざるを得ない。復興基金の補助金の拡張は選択肢となりそうだが、EU債発行に必要な全加盟国の批准手続きが完了しておらず、拡張を検討できる段階にはない。
     
  6. 復興基金は、加盟国間の財政余地の差をカバーし、短期集中型の投資と改革を通じて「より良い復興」を後押しするよう設計されている。そのために、復興基金の利用条件は厳しく、限られた期間で具体的な計画をまとめ実行できるかが問題となる。
     
  7. 復興基金は、EU結束のためのプロジェクトだが、運用次第では、域内の関係の悪化を招きかねない。費やされる政治的資源は大き過ぎるという指摘は的を射ている面がある。
回復加速が見込まれる米国、遅れが懸念されるユーロ圏
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経済研究部   研究理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州経済

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