2021年03月12日

欧州経済見通し-行動制限長期化で二極化が続く形の回復へ

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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■要旨
 
  1. 欧州主要国では、昨年春の感染第1波を厳しいロックダウン(都市封鎖)によって抑制した後、昨年9月頃から再び感染の拡大(第2波)が見られている。11月以降は医療崩壊リスクも高まり、行動制限を強化し経済活動重視から感染抑制重視に舵を切っている。
     
  2. 11月以降に講じてきた行動制限の強化では営業制限をサービス産業の一部に絞る形で実施していることから、多くの生産・消費活動が維持され、経済全体で見ればGDPの急落を避けられている。ただし、特定のサービス産業に行動制限の影響が集中した結果、回復が続く業種と落ち込む業種に分かれ、二極化傾向が拡大、長期化している。
     
  3. 年明け以降も変異株の脅威が拡大しており、感染拡大防止に重点が置かれた措置が講じられている。今年1-3月期の成長率は10-12月期に続き対面サービス産業を中心に低迷し、前期比で2四半期連続のマイナス成長となると想定している。
     
  4. 今後は経済活動再開の動きが模索されるが、変異株の流行懸念などから当面は感染拡大防止に重点が置かれ、行動制限の緩和も段階的に進められると予想する。そのため今年は対面サービス産業の低迷といった二極化の傾向が続く形での回復となるだろう。ワクチン普及によって医療崩壊リスクが後退し、感染予防策としての行動制限が不要となるのは来年以降だろう。
     
  5. ユーロ圏の経済成長率は21年3.8%、22年3.4%を予想している(図表1・2)。
     
  6. 先行きの不確実性は依然として高い。変異株の流行は短期的な医療崩壊リスクを高め、行動制限が強化される可能性がある。中期的にはワクチンの効果が得られず医療崩壊リスクが後退しない場合などに長期間の行動制限が必要となるだろう。一方で、効果的なワクチンの早期普及は回復ペースの加速に寄与するだろう。
(図表1)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ユーロ圏の物価・金利・失業率見通し
■目次

1.欧州経済概況
  ・振り返り:10-12月期GDP成長率は前期比▲0.7%
  ・現状:1-3月期は2四半期連続の前期比マイナス成長へ
  ・財政:復興基金稼働の準備が進む
2.欧州経済の見通し
  ・見通し:3月以降は慎重に経済再開、22年にはワクチン普及か
  ・見通し:ポイント
3.物価・金融政策・長期金利の見通し
  ・見通し:足もとのインフレ率は上昇しているが基調は弱い
  ・見通し:金融政策は引き続き緩和的、長期金利は低位ながらもやや上昇
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