2021年03月05日

ユーロ圏失業率(2021年1月)-横ばいの推移だが、行動制限の影響も

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率は8.1%となり3か月連続で横ばい

3月4日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2020年12月、季節調整値)】
失業率は8.1%、市場予想1(8.3%)より低く、前月(8.1%)と同じだった(図表1)
失業者は1328.2万人となり、前月(1327.4万人)から0.8万人増加した

(図表1)失業率と国別失業者数/(図表2)若年失業率と国別若年失業者数
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:行動制限の影響も感じられる結果

ユーロ圏の今年1月の失業率は昨年11月から3か月連続で横ばいとなり8.1%だった。ただし、昨年11月および12月の失業率はいずれも改善方向に改定(改定前8.3%→今回8.1%)されている。市場予想(8.3%)は改定前の失業率から見ての横ばいでの推移だったが、改定分だけ低くなっている。なお、失業者数はわずかに増加しており昨年8月以来となる増加となった。

一方、1月の若年失業率には17.1%と、先月(17.2%)から改善し、昨年8月のピーク(18.9%)から低下が続いている(図表2)。また若年失業率は改定幅が大きく、昨年11月は0.9%ポイント(改定前18.1%→今回17.2%)、12月は1.3%ポイント(改定前18.5%→今回17.2%)の改善方向に改定されている。

コロナ禍における景気後退の雇用状況を世界金融危機時と比較すると、世界金融危機では失業者と失業率の増加が1年以上にわたって続いていたが、今回のコロナ禍では失業者や失業率の増加は昨年夏以降にはそれほど顕在化していないと言える(図表3・4)。
(図表3)ユーロ圏(19か国)の失業者数変化/(図表4)ユーロ圏(19か国)の失業率
次に、国別に12月の失業率の変化を見ると、データが公表されている16か国中、6か国で失業率悪化、5か国で失業率改善となった(残りは横ばい)。若年層失業率では、12か国中6か国で悪化、6か国で改善となった(図表5・6)。
(図表5)ユーロ圏の失業率(国別)/(図表6)ユーロ圏の若年失業率(国別)
(図表7)ポルトガルの失業者・非労働力人口・労働参加率 詳細な月次データを公表しているポルトガルについて確認すると、失業者は昨年8月ぶりとなる増加となった。また雇用者数は2か月連続での減少している。さらに非労働力人口については3か月連続で増加しており、特に昨年12月と今年1月には非労働力人口が大きく増えている。これにより労働参加率も64.8%まで低下し、昨年6月の水準と同レベルでとなった(図表7)。

昨年後半から失業率の目立った悪化はないものの、各国では11月以降に行動制限の再強化に踏み切っており、非労働力人口の増加などは昨年春の行動制限の時期の動きと類似している。失業率は横ばいだが、行動制限の影響は雇用環境にも及んでいると評価できるだろう。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年03月05日「経済・金融フラッシュ」)

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