2021年02月03日

ユーロ圏GDP(2020年10-12月期)-再ロックダウンで前期比マイナス成長に

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比で再びマイナス成長に

2月2日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国GDP(2020年10-12月期、季節調整値)】
前期比は▲0.7%、市場予想1(▲0.9%)から上振れ、前期(+12.4%)から悪化した(図表1)
前年同月比は▲5.1%、市場予想(▲5.3%)より上振れ、前期(▲4.3%)から改善した(図表2)

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:対面型サービス産業を中心の落ち込みに

2020年10-12の成長率は前期比▲0.7%(年率換算▲2.8%)とマイナスとなり、2020年暦年での成長率は▲6.8%(2019年は+1.3%)となった。

ユーロ圏では昨年後半に新型コロナウイルスの感染者数が再拡大しており、11月頃から厳しいロックダウンを実施した国が多かったことから、10-12月期の成長率は再びマイナスに転じることになった。ただし、マイナス幅は市場予想よりも小幅にとどまっている。

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると(図表3)、前期比ではドイツ+0.1%、フランス▲1.3%、イタリア▲2.0%、スペイン+0.4%となった。ドイツ・スペインは前期比でプラス成長を維持したことになるが、特にスペインは前年同期比で見ると▲9.1%とマイナス幅は大きくであり、経済活動の水準は低いと言える。また、オーストリア(前期比▲4.3%、前年同期比▲7.8%)のように10-12月期の落ち込みが大きい国もあった。
(図表3)米欧の10-12月期GDP伸び率/(図表4)フランスの実質GDP水準
次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))が項目別の内訳を公表しているので詳細を見ていきたい。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費▲5.4%(前期+18.2%)、政府消費▲0.4%(前期+14.6%)、投資+2.4%(前期+24.0%)、輸出+4.8%(前期+21.9%)、輸入+1.3%(前期+16.2%)となった。2回目のロックダウンは個人消費と政府消費を中心に落ち込み、残りの主要項目はプラスを維持していることが分かる(図表4)。

供給別に見ると製造業が+2.3%(前期+23.9%)、建設業が+0.2%(前期+36.0%)、市場型サービス産業▲2.2%(前期+15.6%)、非市場型サービス▲0.5%(前期+17.4%)となり、サービス業中心に落ち込んだ。特に、居住・飲食サービスの▲26.8%(前期+80.7%)や芸術・娯楽等サービスの▲16.8%(前期+47.6)は落ち込み幅が大きい。
(図表5)スペインの実質GDP水準/(図表6)スペインの産業別GDP成長率(10-12月期)
スペインの成長率(前年同期比)を見ると、需要項目別には個人消費+0.4%(前期+16.4%)、政府消費+4.0%(前期+1.2%)、投資▲3.1%(前期▲21.7%)、輸出▲1.4%(前期29.9%)、輸入+0.4%(前期+27.0%)となり、フランスと異なり、消費がプラスを維持し投資が減少している(図表5)。

供給別には(図表6)、サービス業も前期比+1.1%とプラス成長を維持している。ただし、芸術・娯楽などは、前年同期比で見て依然としてマイナス幅が大きく、対面サービス産業中心の落ち込みはフランスと同様と見られる。一方、スペインでは、建設業がかなり落ち込んでいる点にも特徴がある。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年02月03日「経済・金融フラッシュ」)

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