2021年02月24日

英国雇用関連統計(1月)-対面サービスを中心に厳しい状況が続く

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率は5.1%と微増

2月24日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【1月】
失業保険申請件数1前月(261.71万件)から2.00万件減の259.71万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は7.2%となり、前月(同7.3%)から減少した。

【12月(10-12月の3か月平均)】
失業率は5.1%で前月(5.0%)から上昇、市場予想2(5.1%)と一致した(図表1)。
就業者は3239.3万人で3か月前の3250.7万人から11.4万人の減少となった。
増減数は前月(▲8.8万人)から減少(減少幅の拡大)、市場予想(▲3.0万人)は下回った。
週平均賃金は、前年同期比+4.7%で前月(+3.7%)から改善、市場予想(+4.1%)も上回った(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:良し悪しが混在しているなか二極化が続く

まず、失業保険申請件数と同じく1月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は20年11-21年1月の平均で59.9万件となった(図表3)。改善幅は縮小しているものの、改善傾向は続いていることが確認できる。

給与所得者データ3を見ると、1月の給与所得者は2828.7万人で前月差+8.3万人となり、昨年12に続き2か月連続での増加となった(図表4)。流出(退職など)と流入(就職など)のフローの傾向は、流入数がコロナ禍前の水準まで回復する一方で、流出数がコロナ禍前の水準よりやや低めで推移している。月あたり給与額(中間値)については前年同月比+4.0%となり、前月の+5.0%よりは低くなったが高めの伸びが続いている(図表5)。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)英国給与所得者の流出入推移
なお、給与所得者データを年齢層別に見るとコロナ禍前と比較して若年層で給与所得者の減少が目立つ。業種別では居住・飲食・芸術・娯楽といったコロナ禍の影響を大きく受けて減少した対面サービス産業は足もとの給与所得者増加にほとんど寄与しておらず、それ以外の産業における給与所得者の増加が全体の給与所得者増を押し上げるという二極化が見られる(図表5)。
(図表5)給与取得者データの推移/(図表6)英国の雇用統計(週次データ)
次に昨年12月までのデータを確認すると、10-12月の失業率は5.1%となり、失業者は174.4万人まで増加した(前掲図表1)。一方、賃金関係では、10-12月の平均賃金が前年同期比+4.7%(実質は+3.8%)と伸びが加速し、前月も高めの伸び率であったがさらに上昇ペースが加速した(前掲図表2)。労働時間は30.2時間(前年同期差▲1.7時間)、フルタイム労働者で34.9時間(同▲2.0時間)となり、労働時間はコロナ禍前よりも短いものの改善は続いている。

一方、週次データを見ると、3月後半のロックダウン以降に改善してきた休業者が、11月の2回目のロックダウン以降に緩やかながらも増加に転じている(図表6)。12月に入って休業者の増加は一服したものの、英国では今年1月からは3回目となるロックダウンに踏み切っている。英国の雇用は良いデータと悪いデータが混在しているものの、封じ込め政策によって対面サービス産業を中心に依然として厳しい状況は続いており、上述したような二極化傾向が継続すると見られる。
 
3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した実験統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年02月24日「経済・金融フラッシュ」)

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