2021年02月15日

英国GDP(2020年10-12月期)-20年は▲9.9%、2桁近い落ち込みに

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比では+1.0%とやや微増

2月12日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2020年10-12月期実質GDP、季節調整値)】
前期比は+1.0%、予想1(0.5%)より上振れ、前期(16.1%)から減速した(図表1・2)
前年同期比は▲7.8%、予想(▲8.1%)より上振れ、前期(▲8.7%)から改善した

【月次実質GDP(10-12月)】
前月比は10月+0.6%、11月▲2.3%、12月+1.2%と、一進一退の動きとなっている

(図表1)英国の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)英国・ユーロ圏主要国の10-12月期GDP伸び率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:封じ込め政策強化で11月以降は伸び悩み

英国の実質成長率は、新型コロナの影響を大きく受けた1-3月期に前期比▲2.9%、4-6月期に同▲19.0%と2四半期連続で急減した後、7-9月期は同+16.1%と反発、10-12月期も同+1.0%(年率換算+4.0%)とプラス成長を維持し、2四半期連続で回復するという経路を辿った。ただし、前年同期比では▲7.8%にとどまっており、ユーロ圏主要国と比較しても相対的に低い状況にある(前掲図表2)。なお、2020年暦年で見たときの実質成長率は▲9.9%(前年+1.4%)と2桁近いマイナスとなった。
(図表3)英国の月次GDPの推移 月次GDPの動きを追うと(図表3)、4月に底を付けた後、5月以降は順調に回復していたが、11月に再びマイナス成長に落ち込んでいる。12月には再度プラスとなっているが、これは、イングランドで11月5日から2回目のロックダウンを実施、12月に解除したことに鑑みれば封じ込め政策の厳しさと整合的に動いていると言える。なお、12月のロックダウン解除後も、比較的厳しい封じ込め政策が実施されており、月次GDPの水準を見ても12月の水準は9月の水準よりも低い状態にある。
図表4には細かい産業分類における月次GDPの前年同月比を10月から12月まで示している。10-12月期は一貫して住居・飲食、芸術・娯楽、その他サービスが大きく落ち込んでおり、また、11月のロックダウンでその落ち込み幅が拡大していることも読み取れる。

なお、英国では変異株の感染拡大が急速に進んでおり、今年1月5日からイングランドで3回目となるロックダウンに踏み切っている。3回目のロックダウンは2回目よりも厳しい措置であることから、これらのサービス産業については、1月以降さらに下落幅を拡大する公算が高い。
(図表4)業種別のGDP伸び率(10-12月)
(図表5)英国の名目GDP(所得別) 成長率を需要項目別に確認すると、10-12月期では、個人消費が前期比▲0.2%(前年同期比▲5.8%)、政府支出が同+6.4%(▲0.1%)、投資が同+2.1%(▲0.6%)、輸出が同+0.1%(▲7.7%)、輸入が同+8.9%(+2.8%)となり、個人消費は前期比でもマイナスとなった。なお、在庫等は前年同期比寄与度で+3.24%ポイント(前期は▲0.21ポイント)、純輸出は同+1.72%(前期は+4.51%ポイント)であり、前年同期比では在庫や輸入がGDPを押し上げている(前掲図表1)。

最後に名目GDPを確認すると、10-12月期は前期比+1.6%(前年同期比▲2.1%)となった。所得別に確認すると(図表5)、営業余剰は前期と比較してやや減少したものの、雇用者報酬やその他所得、税・補助金はいずれも増加している。特に雇用者報酬については、雇用維持政策が底堅い推移に貢献していると見られる。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年02月15日「経済・金融フラッシュ」)

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