2020年12月15日

欧州経済見通し-経済再停止からの再起動を目指す欧州

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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■要旨
 
  1. 欧州各国は3月以降、新型コロナウイルスの感染状況と医療ひっ迫の状況により、封じ込め政策の厳格度を大きく変えてきた。春には厳しいロックダウン(都市封鎖)を実施、夏は感染の落ち着きとともに経済再開に舵を切ったが、足もとでは第2波の急拡大のために再び封じ込め政策を強化している。
     
  2. 欧州経済は封じ込め政策の強さに応じて4-6月期に急減した後、7-9月期には予想を大きく超える回復力を見せた。そして、足もとでは再ロックダウンによる経済再停止という下方リスクが顕在化している状況にある。
     
  3. 11月以降の再ロックダウンと経済活動の停止によって10-12月期の成長率はマイナスとなる公算が高い。ただし、第1波でのロックダウンと比較して制限は緩やかであり、幅広い業種が落ち込んだ春と比較すれば、今回は一部の対面サービス産業を中心とした活動制限に限定されており、マイナス幅は今年4-6月期よりは小さくなるだろう。
     
  4. 来年以降は、今夏のように経済活動の維持と感染拡大防止の両立を目指すと見られるが、再ロックダウンによる下方リスクが意識されたことで、感染拡大防止にも重点が置かれ、これまで以上に慎重に経済活動を再開していくだろう。同時にワクチン普及も進むが、21年については感染拡大防止策を撤廃することはないと見ている。
     
  5. そのため、経済の回復ペースはゆっくりとなり、20年の成長率は▲7.3%に下落した後、21年は4.0%の回復にとどまると予想する(図表1・2)。
     
  6. 先行きの不確実性は依然として高く、今後もロックダウンによる経済停止という下方リスクを抱える。一方で、効果的なワクチンの早期普及によってウイルスの収束ペースが加速するという上方リスクもこれまで以上に高まっている。
(図表1)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ユーロ圏のインフレ・失業率見通し
■目次

1.欧州経済概況
  ・振り返り:7-9月期GDP成長率は前期比+12.5%、前年同期比▲4.3%
  ・現状:10-12月期は再びマイナス成長へ
  ・財政:中期予算案はようやく合意へ
2.欧州経済の見通し
  ・見通し:来年以降は慎重に経済再開へ
  ・見通し:ポイント
3.物価・金融政策・長期金利の見通し
  ・見通し:物価は低インフレが長期化
  ・見通し:金融政策は引き続き緩和的、長期金利は低位安定<

(2020年12月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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