2022年03月30日

コロナ禍での介護費用額の動向~2020年度、通いと短期宿泊の介護費用は減少

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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■要旨
 
  1. 昨年11月に、厚生労働省は、2020年度の介護費用額等を公表した。そこには、コロナ禍が介護に与えた影響が、さまざまなデータとして表示されている。
     
  2. 介護サービス給付(要介護1~5の認定を受けた要介護者が対象)は、受給者数、費用額とも、年々増加している。介護予防サービス給付(要支援1~2の認定を受けた人が対象)も、一部の給付分の制度移行が終わった後は、増加基調に戻っている。
     
  3. 介護保険に基づく給付には、現在、26種類、54サービスがあり、大きく7つに分けられる。介護サービス給付は、特養や老健など、施設等に入居するものが約半分を占め、これに通いや、訪問が続いている。介護予防サービス給付は、通いが多く、これに訪問や、用具貸与等が続いている。
     
  4. 訪問、通い、短期宿泊、施設等入居の介護費用の推移をみると、訪問と施設等入居は、年々増加。一方、通いと短期宿泊は、2019年度まで増加していたが、2020年度は減少した。コロナ禍により、要介護者が施設等に通ったり、短期間宿泊したりすることを控えた影響とみることができる。
     
  5. 実際に、通いと短期宿泊の月別の費用の推移をみると、2020年4~5月や、2021年1~2月の緊急事態宣言発令時期に減少している。これらの時期には、要介護者が感染の懸念などから、通いや短期宿泊のサービスを受けることを自重したケースがあったものとみられる。
     
  6. 変動要因を探ったところ、訪問介護や介護福祉施設サービスは、1人当たり費用額の伸びが、費用増の主因であった。通所介護、短期入所生活介護も、1人当たり費用額は増えており、これを、受給者の減少が打ち消す構図だった。コロナ禍が進むなか、「サービスを受ける機会があれば、以前よりも長時間にする」などと、サービス内容を充実させる動きがあったものとみられる。
     
  7. 今後、サービス内容を充実させたまま、以前のように、受給者数が増加していけば、介護の費用額はさらに増大するものと考えられる。団塊の世代が徐々に75歳以上に進んでいくなかで、長期的に、介護費用の増大が懸念される。


■目次

1――はじめに
2――介護給付の全体像
  1|介護給付は、増加基調にある
  2|介護サービス給付は、施設等への入居が約半分を占めている
3――コロナ禍が介護給付に与えた影響
  1|通いと短期宿泊の費用額は2020年度に減少した
  2|通いと短期宿泊の費用額は緊急事態宣言発令時期に減少
  3|1人当たり費用額は増えている
4――おわりに (私見)
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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

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