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外国人就労政策の行方~特定技能の受入れ拡大を巡る議論~
総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也
- 外国人労働者は日本経済にとって、なくてはならない存在になったと言える。少子高齢化で子供の数が減り、生産年齢人口が縮む日本では、働き手の確保が大きな課題となっている。実際、コロナ禍前の2019年には、従業員の不足による収益悪化等が要因で倒産した企業、いわゆる人手不足倒産は、4年連続で過去最多を更新していたという。現在は、コロナ禍による経済の落ち込みもあって、労働需給面は一時的に緩和した状態にあるが、経済の正常化が進むにつれて、再び課題として浮上して来ると見られる。
- 政府は、このような慢性的な人手不足に対処するため、2018年12月に「出入国管理及び難民認定法」(以降、入管法)を改正し、2019年4月から新たな在留資格「特定技能」の運用を始めている。これは、従来の入管法政策の下で受入れが制限されてきた外国人労働者に門戸を開くものであり、日本の外国人受入れ政策が大きな転換点を迎えたとも指摘されてきた。制度創設から3年目を迎える今年は、その見直しを行う時期にあたる。
- 今般の見直しで特に注目されるのは、熟練労働者がより長く日本で働くことを可能とする、特定技能「2号」の扱いにある。現在、その対象業種の拡大に向けた議論が進んでいる。ただ、家族帯同が可能で、永住権の取得にもつながる特定技能2号については、保守層の間に移民政策だとする批判が根強くあり、制度運営に一定の影響力を持つ自民党内の意見も別れている。
- 特定技能2号の受入れ拡大は、少子高齢化が進む現状や、外国人材の獲得競争が激しくなる、国際的な情勢も踏まえれば、妥当性の高い措置だと言える。また、何の問題も起こすことなく、日本の社会や経済を長く支えてきた人材は、国籍に関わらず有用な存在であり、そのような人材の貢献に報い、さらなる活躍を期待できる場を整えることは、社会的にも意義あることだと言える。
- 一方で、特定技能2号による受入れは、長期的に国の在り方に影響を及ぼす可能性も高いことから拙速に進める訳にもいかない。社会で新たな分断の種が芽吹くことのないよう、国民の理解や共感を得るための努力が重要になる。具体的には、これまでの現状を振り、制度の透明性を高めていくことで、懸念の声にも耳を傾けることが求められる。また日本では、外国人労働者に関するデータの不足がイメージ先行で語られる要因にもなっていることから、統計データの整備を進め、それを政策に活かしていく工夫も必要になるだろう。
■目次
1――はじめに
2――特定技能の制度概要
3――国論を二分した制度
4――制度創設後、2年の現状
5――見直しを巡る論点
6――今後のポイント
(2022年03月30日「ニッセイ景況アンケート」)
03-3512-1790
- 【職歴】
2011年 日本生命保険相互会社入社
2017年 日本経済研究センター派遣
2018年 ニッセイ基礎研究所へ
2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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