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コロナ禍での介護費用額の動向~2020年度、通いと短期宿泊の介護費用は減少

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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1――はじめに
そんななか11月に、厚生労働省は、2020年度の介護費用額等を公表した1。そこには、コロナ禍が介護に与えた影響が、さまざまなデータとして表示されている。
本稿では、そのデータをもとに、コロナ禍が介護費用額に与えた影響をみていくこととしたい2。
1 「介護給付費等実態統計」(厚生労働省)。なお、2017年度までは、「介護給付費等実態調査」という名称だった。
2 本稿では、注記1の資料に掲載のデータを図示して、介護費用額等の傾向を把握していくこととしたい。
2――介護給付の全体像
介護保険で行われるサービスは、大きく、介護サービスと介護予防サービスの2つに分かれる。介護サービスは、要介護1~5の認定を受けた要介護者が対象となる。一方、介護予防サービスは、原則、要支援1~2の認定を受けた人が対象となっている3。
受給者数と給付額の推移をまとめると、次の図表1、2のとおりとなる。介護サービス給付は、受給者数、費用額とも、年々増加している。一方、介護予防サービス給付は、受給者数、費用額とも2016年度から18年度にかけて減少している。これは、2014年の介護保険法改正に伴い、2017年度末までに「介護予防・日常生活支援総合事業」の「介護予防・生活支援サービス事業」に移行することとされていた「介護予防訪問介護」や「介護予防通所介護」の給付分が、介護予防サービスの給付から徐々に抜けていったためとみられる。その移行が終わった後は、増加基調に戻っている。
3 一部のサービスについては、65歳以上の人が、基本チェックリストの結果により、事業対象者に認定される場合がある。
介護保険に基づく給付には、現在、26種類、54サービスがある。これらは、①介護の相談やケアプランの作成をしてもらうもの、②自宅等に介護担当者に訪問してもらってサービスを受けるもの、③サービスを受ける人が施設に通うもの、④サービスを受ける人が施設等に短期間宿泊をするもの、⑤訪問・通い・短期宿泊を組み合わせたもの、⑥サービスを受ける人が施設等に入居して生活するもの、⑦福祉用具が貸与・販売されるもの、の7つに分けることができる。
費用額について、それぞれの内訳をみてみると、次の図表3、4のとおりとなる。介護サービス給付については、介護老人福祉施設(特養)や介護老人保健施設(老健)など、⑥施設等に入居するものが約半分を占めている。これに、③通いや、②訪問が続いている。その後に、④短期宿泊も続いているが、占率は低い。要介護の認定を受けた人は、特に要介護度が高い場合、施設等に入居して生活をしながら介護を受けるケースが多いものとみられる。一方、介護予防サービス給付は、③通いが多く、②訪問、⑦用具貸与等が続いている。要支援の認定を受けた人は、通いや訪問でサービスを受けつつ、用具貸与等で介護予防に取り組んでいるものとみられる。
3――コロナ禍が介護給付に与えた影響
4 東京での緊急事態宣言の期間は、1回目は2020年4月7日~5月25日、2回目は2021年1月7日~3月21日であった。
つまり、2020年度は、通いや短期宿泊のサービスで、受給者の数は減ったが、受給した人の1人当たり費用はむしろ増えているということになる。コロナ禍が進むなか、「サービスが受けにくくなったので、もし受ける機会があれば、そのときは以前よりも長時間のサービスにする」などと、1回のサービス内容を充実させる動きがあったものとみられる。
4――おわりに (私見)
日本では、高齢化が進み、いわゆる団塊の世代が徐々に75歳以上に進んでいくなかで、長期的に、介護費用の増大が懸念されているところだ。
これからの介護費用がどのように推移するのか、引き続き、注目していくこととしたい。
(2022年03月30日「ニッセイ景況アンケート」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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