コラム
2022年03月04日

予想分配金提示型の人気が一巡か~2022年2月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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バランス型を中心に資金流入が鈍化

2022年2月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、主として外国株式を投資対象とするものを中心に、国内株式や複合資産のバランス型にも資金流入があり、ファンド全体で5,800億円の資金流入があった【図表1】。しかし、流入金額は1月の9,100億円から約3,400億円も減少した。

2月は、バランス型への資金流入が1月の3,000億円から500億円と大幅に減少した。1月は新規設定されたSMA専用のバランス型ファンドに1,800億円の資金流入があり、それによって膨らんでいた面がある。ただ、SMA専用ファンドを除外しても、バランス型への資金流入は1月の1,100億円から500億円と半分以下に減少した。バランス型と同様に分散投資できる金融商品としてラップ口座があるが、ラップ口座などで活用されているSMA専用ファンドをみても2月は全体で700億円の資金流入と1月の1,300億円から減少した。
【図表1】 2022年2月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
2021年、特に年後半以降はバランス型ファンドやラップ口座の販売が好調であった。バランス型ファンド(青棒)とSMA専用ファンド(紺棒)の資金動向をみると、2021年6月以降は合わせて2,000億円以上の資金流入が毎月あったが、2022年2月は1,200億円まで減少した。
 
この1月、2月と同じように金融市場が混乱した2020年2月、3月のコロナ・ショック時においても、その後1年間はSMA専用ファンドでは流出基調となっていた。バランス型ファンドも資金流出している月があった。今後もコロナ・ショック後と同様にバランス型ファンドやラップ口座の販売の鈍化が続き、さらには解約が増え資金流出に転じる可能性もあり、動向が注目される。
【図表2】 バランス型ファンドと全SMA専用ファンドの資金流出入

国内株式は買い余力が乏しく様子見?

国内株式でも、流入金額が2月は500億円と1月の1,400億円から900億円減少した。特に国内株式のインデックス・ファンドで流入金額が300億円と1月の1,000億円から大きく減少した。

国内株式のインデックス・ファンドの日次の資金動向をみると、2月も1月と同様に逆張りの傾向がみられた【図表3】。ただ、2月は上旬に株価がやや持ち直して資金流入が止まった上に、中旬以降の下落局面でも1日あたりの流入金額が最大で100億円程度と1月と比べて小規模だった。2月中旬からのウクライナ情勢の緊迫化に伴い先行きの不透明感が高まる中で様子見をする、もしくは1月の下落に伴う逆張り投資で投資余力を使い果たし2月に追加投資が十分にできなかった投資家が多かったのかもしれない。
【図表3】 国内株式インデックス・ファンドの日次推計流出入

外国株式も一般販売部分では鈍化

外国株式も、2月は4,300億円の資金流入と1月とほぼ同規模であったが、SMA専用ファンド(紺棒)を除外すると3,800億円と1月の4,700億円から900億円減少した【図表4】。アクティブ(緑棒)、インデックス(黄棒)問わず、一般販売されているものについては2022年に入ってから2カ月連続で減少した。やはり、国内株式と同様に先行きに対する不透明感から、外国株式への投資も見送る投資家が多かったのかもしれない。
 
ただ、外国株式のインデックス・ファンドでは資金流入は小幅な減少でとどまっている。2月の流入金額はSMA専用ファンドを除外しても2,000億円を超えており、昨年10月以前より多い状況が続いている。外国株式の格安インデックス・ファンドで積立投資する人が着実に増えてきており、積立投資による機械的な買い付けがインデックス・ファンドへの毎月の資金流入を底上げしているものと推察される。
【図表4】 外国株式ファンドの資金流出入
その一方で外国株式のアクティブ・ファンドの流入金額は、SMA専用ファンドを除外すると2月は1,800億円と2020年7月以降で最小だった。外国株式のアクティブ・ファンドの中で特に人気を集めていた予想分配金提示型を含む毎月分配型ファンドの資金動向をみても、2月の流入金額は900億円と1月の1,500億円から減少した【図表5】。実際に代表的な予想分配提示型の外国株式ファンドである「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月(ヘッジなし)予想分配金提示(赤太字)」は2月も資金流入が700億円に迫っていたが、1月から500億円以上も減少した【図表6】。
【図表5】 毎月分配型の外国株式ファンドの資金流出入
【図表6】 2022年2月の推計純流入ランキング
予想分配金提示型は2020年後半あたりから人気に火が付き、1年以上も売れに売れていた。基準価額によって毎月の分配金が変動するファンドであり、コロナ・ショック以降は一貫して外国株式が堅調であったため、結果的に高い分配金の支払いが続いているものが多かった。この高い分配金の支払いが高齢層を中心とした資産取り崩し層の個人投資家に受けて人気になっていたと考えられる。
 
それが予想分配提示型のファンドの多くで、この1月、2月の株価(基準価額)下落に伴い分配金の引き下げ行われた。分配金の引き下げが提示されたルール通り行われただけであるが、それをよく思わない投資家が少なからずいたと思われる。さらに2月の販売鈍化は分配金の引き下げに加えて、予想分配提示型ブームが1年以上も続き、元々、販売が一巡しつつあることも背景にあるのかもしれない。「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」でもDコース(赤太字)と同じ運用を行っている非予想分配金提示型のBコース(青太字)では流入金額が2月は1月と横ばいであることからも、市場環境以外に販売鈍化の要因があったことがうかがえる【図表6】。

金関連や資源関連が好調

2月に高パフォーマンスであったファンドをみると、金関連ファンド(赤太字)が好調であった【図表7】。その他、資源関連ファンド(青太字)も原油など資源高も追い風になり、高パフォーマンスをあげるものがあった。
【図表7】 2022年2月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資 信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2022年03月04日「研究員の眼」)

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