コラム
2022年02月04日

日米株式で対応が異なるレバレッジ型~2022年1月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式への資金流入が鈍化

2022年1月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、主として外国株式や国内株式を投資対象とするものや、様々な資産に投資するバランス型を中心にファンド全体で9,100億円の資金流入があった【図表1】。1月も流入金額自体は大きく、ファンドの販売が好調だったといえるが、12月の1兆2,600億円と比べると3,500億円減少した。
【図表1】 2022年1月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
1月に流入金額が減少した最大の要因は外国株式への資金流入の鈍化であった。外国株式では1月は4,200億円と12月の9,900億円から5,700億円も減少した。外国株式をタイプ別にみると、アクティブ・ファンドが1月は2,400億円と12月の6,500億円から4,100億円減少し、特に販売の鈍化が顕著であった。ただ、インデックス・ファンドでも1月は1,800億円と12月の3,400億円から1,600億円減少した。1月に資金流入が大きかった外国株式ファンドをみても、アクティブ(赤太字、緑太字)、インデックス(青太字)問わず、概ね流入金額が12月から減少した【図表2】。
【図表2】 2022年1月の推計純流入ランキング
そもそも12月はアクティブでは新設ファンド(緑太字)があり、インデックスでは つみたてNISAなどの駆け込み購入などもあって、外国株式への資金流入がテクニカルに膨らんでいた面がある。さらに今年の1月は投資家の人気を集めていた米国株式を中心に外国株式が2020年3月以来の大幅下落となった。そのため、追加購入を見送る投資家も少なからずいたと思われる。ただし、2021年は1年を通して外国株式ファンドに過去最大の8兆2,700億円もの純流入があったため、さすがに2022年に入って一巡してきている可能性もあり、今後の外国株式ファンドの販売動向が注目される。

国内株式の逆張り投資は健在

その一方で、1月はバランス型と国内株式は12月から資金流入が増加した。バランス型については、1月に3,000億円の純流入と12月の900億円から2,000億円以上増加した。ただし、3,000億円のうち1,900億円はSMA専用ファンド(紺棒)への資金流入であった。1月に新規設定されたSMA専用のバランス型ファンドに1,800億円の資金流入があったためである。一部のラップ口座で国内債券、外国株式、国内株式のウェイトを減らし、その分を新設されたバランス型にリバランスするテクニカルな動きがあった。なお、SMA専用ファンド全体でみると1,300億円の資金流入と12月の2,100億円から減少した。ラップ口座の販売も外国株式ファンドと同様にやや鈍化した。
 
バランス型ほどではないが国内株式にも1,400億円の資金流入があり、12月の500億円から900億円増加した。国内株式の中では、一般販売されているインデックス・ファンドに1,300億円の資金流入があった。株価が大きく下落する中、インデックス・ファンドを用いた逆張り投資は健在であったといえよう。

国内株式のインデックス・ファンド(黄棒)の日次の推計流出入をみると、日経平均株価が2万7,500円を下回った翌営業日の20日が390億円の資金流入と1月で最大の資金流入となった【図表3】。日経平均株価が2万6,100円台まで急落した翌営業日の28日にも資金流入はあったが260億円と20日よりも少額であった。なお、国内株式のレバレッジ型ファンド(青棒)についても20日が130億円に対して28日が60億円と小さかった。1月は日経平均株価2万7,500円あたりの水準を底値として意識していた投資家が多かったと思われる。
【図表3】 2022年1月の国内株式インデックス・ファンドの日次推計流出入

米国株式レバレッジ型ファンドの販売は急減速

1月は国内株式のレバレッジ型のファンドにも400億円に迫る資金流入があった【図表4:左】。国内株式のレバレッジ型ファンドは、この1月に限らず株価が下落すると資金流入が膨らみ、その一方で株価が上昇すると資金流出する傾向がみられる。通常のインデックス・ファンドと同様に逆張り投資に活用されていることが分かる。
 
ただ、同じレバレッジ型ファンドでも米国株式ものについては、外国株式全体と同様に1月に資金流入が鈍化した。米国株式のレバレッジ型ファンドは昨年秋頃から投資家の人気を集め、11月、12月と300億円を超える資金流入があったが、1月は80億円にまで減少した【図表4:右】。日次でみると少額ながら資金流出している日もあった。
【図表4】 国内株式(左)と米国株式(右)のレバレッジ型ファンドの資金流出入
米国株式のレバレッジ型ファンドは、2020年3月のコロナ・ショック以降に設定されたものがほとんどである。実際に購入している投資家も比較的、投資経験が浅い方もいると思われ、そのような方にとっては、まさにこの1月が初めての株価急落経験となったはずである。そのため追加投資を見送る、または一部では投げ売りする投資家が出たと考えられる。
 
それにレバレッジ型に限らず米国株式ものだと通常、発注したその日の夜の終値での買付になる。1月はその日の夜ですら米国株式の展開を予想することが極めて困難だっただけに、国内株式のように米国株式のレバレッジ型ファンドを用いて逆張り投資する投資家も少なかったのかもしれない。

なお、レバレッジ型ファンドは株価上昇局面では株価上昇を十二分に享受できるが、株価が方向性の乏しいボックス圏で推移する場合は株価が横ばいでもレバレッジ型ファンドの基準価格は下落する可能性がある。レバレッジ型ファンドは順張り投資、つまり株価が上昇したら株価先物を買い増し、下落したら株価先物を売却するように日々、ポジション調整している。株価がボックス圏で動くと、この順張りのポジション調整がマイナスに働くことがあるためである。今後の株価動向次第になるが、株価下落が止まってもボックス圏での推移が長引くと、基準価額が急落前の水準に戻るまで思っている以上に時間がかかる可能性がある点は注意が必要だろう。

ブラジル株式ファンドが好調

1月に高パフォーマンスであったファンドをみると、ブラジル株式ファンド(緑太字)が総じて好調であった【図表5】。ブラジルでは物価上昇の鈍化に伴い金融引き締め政策の見直し期待が高まり、株価が上昇した。さらに1月はブラジル・レアルも対円で5%ほど上昇したことも追い風になった。ただ、1月に好調であったブラジル株式ファンドの過去1年の収益率をみると、良いものでも一桁%台前半であった。つまり、ブラジル株式ファンドは2021年2月から12月までで10%以上も下落しており、それまでがいかに低迷していたかが分かる。
【図表5】 2022年1月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2022年02月04日「研究員の眼」)

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