2022年02月18日

アジア消費者、新型コロナウイルスにより家計・健康を懸念-6割強が収入途絶の場合貯蓄で生活できるのは1年未満、3分の2以上が何等かのメンタル不調を経験、健康アプリの使用や運動もさかん

保険研究部 上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長 有村 寛

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1―はじめに

マニュライフは、2022年1月19日に、アジアの消費者8,276人を対象に2021年11月に行った調査結果1を公表した。

同調査では、回答者の半数以上 は、新型コロナウイルスへの対応は、最低でもあと1年以上続くと予想するとともに、収入ならびに幸福な生活に対する懸念が続く中で、健康、デジタル化への対応、支出に関する習慣を変えた、と回答しており、これまで紹介2してきたような、保険ニーズの高まり等に加え、新型コロナウィルスによる家計・健康への影響・懸念、行動の変化等も取り上げられており、ここではその概要について紹介したい。
 
1 今回のマニュライフの消費者調査(Manulife Asia Care Survey)は、上記の通り、2021年11月に行われたが、2020年5月、同年11月に続く、第3回目となる。この調査では、中国、香港、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナムおける25~60歳の8,276人を対象にしている。マニュライフでは、当調査結果“Asia adapts to COVID-19 norm, but health and financial concerns linger”について、2022年1月19日付で公表している。
2 新型コロナウイルスを受けたアジア太平洋地域の消費者のニーズの変化については、小著「パンデミックがアジア太平洋の消費者に与えた影響-保険への関心の高まりとデジタルアクセスの急増」『保険・年金フォーカス』(2021年11月5日)でも紹介している。

2―新型コロナウイルスが家計・健康に与える影響

2―新型コロナウイルスが家計・健康に与える影響

同調査では、回答者のうち、44%の人が新型コロナウイルスの感染拡大により収入が減少したと回答している。そして、43%の人がパンデミックの開始以前よりも多くの貯蓄をしている3ものの、64%の人は収入が途絶した場合、貯蓄で生活費を賄える期間は1年未満と回答している。

また、新型コロナウイルスに関する主な懸念事項は、地域経済の回復に時間がかかる(33%)、メンタルヘルスの悪化(18%)、医療費が高い(17%)、自分と家族のための保険の欠如(15%)となっている(表1)。
【表1】新型コロナウイルスに関する主な懸念事項
なお、回答者の3分の2以上が、睡眠障害、集中力の欠如、過度の心配、気分のむらを含む、メンタルヘルス懸念の症状を経験している4
 
3 ベトナム(70%)、フィリピン(55%)、中国(49%)が、回答者平均(43%)を上回る(パンデミック以降、貯蓄を増やしたと回答した)一方、その他の国・地域の状況は、マレーシア(43%)、インドネシア(42%)、シンガポール(41%)、香港(27%)、日本(19%)となっている。
4 同調査において、回答における健康上の懸念は、癌(41%)、心臓病(33%)、脳卒中(29%)となっており、うつ病(25%)がそれに続いている。その他にも、メンタルヘルス関係では、不安(18%)、極度の疲労(14%)が含まれる。

3―高い保険加入ニーズと保険加入にあたっての主な障害

3―高い保険加入ニーズと保険加入にあたっての主な障害

保険の新規加入、追加加入に対する関心は、依然として高く5、回答者の71%が、1年以内に加入する予定だとしている。加入ニーズの高い保険は、生命保険、医療保険(ともに28%)で、入院、重大疾病がそれに続いている(ともに26%)(表2)。
【表2】新規・追加加入ニーズ(保険種類別)
また、回答者の64%が、オンラインで迅速に加入できる単純な保険商品を望んでいる6

一方、同調査によれば、保険加入に対する主な障害となっているのは、保険料が高い(39%)、商品が複雑すぎて理解できない(37%)となっている。
 
5 保険の新規・追加加入ニーズについて、2020年5月に行われた同調査では62%、同11月では71%となっている。“Asia takes more control of health and retirementamid Covid-19 – Manulife survey”(January 4,2021)より
6 オンラインで迅速に加入できる商品へのニーズは、64%と過半数を上回っているが、小著「インド、アセアン諸国における個人向け損保商品のデジタル化の状況」『保険・年金フォーカス』(2022年1月25日)において紹介したとおり、損保商品に関する調査結果ではあるが、他の商品・サービスと比較すると保険は、オンライン利用に対して慎重な消費者も一定存在することがわかっている。

4―健康アプリの使用や運動もさかん

4―健康アプリの使用や運動もさかん

健康状態をモニタリングするモバイルアプリは人気があり、回答者の約9割(89%)が、その手のアプリを使用しているか、使用できる状態になっている。

また、回答者の40%が、パンデミック以降、より運動をするようになった、と回答している。回答者の64%は、定期的な運動の利点として、免疫力を高め、メンタルヘルスを改善することをあげている(表3)。
【表3】消費者の健康に関する調査結果

5―おわりに

5―おわりに

以上、マニュライフの調査結果について紹介してきたが、アジアの消費者は、新型コロナウイルスの感染拡大により、貯蓄や保険の必要性を強く感じる一方で、収入が減った人も少なくない中では、なかなか思うように進んでいない状況であることがわかった。特に、保険については、「保険料が高い」、「内容が複雑でわかりにくい」ということが加入の障害となっている。オンライン加入ニーズも高い結果となっているが、一方で、保険以外の商品・サービスに比べると保険のオンライン加入に対しては慎重姿勢の消費者も多い事は、別レポートにて紹介したとおりである7

また、メンタルヘルスについての不調を感じたことがある消費者が約7割も存在し、健康志向が高まる中で、メンタルヘルスに対する関心が高まっている。

オミクロン型やそれに続く亜種の出現も報道される等、新型コロナウィルスについては先が見通せない状況となっているが、消費者のニーズ、状況の変化については、引き続き注視していきたい。
 
7 脚注6にて前掲の小著「インド、アセアン諸国における個人向け損保商品のデジタル化の状況」『保険・年金フォーカス』(2022年1月25日)
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保険研究部   上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長

有村 寛 (ありむら ひろし)

研究・専門分野
保険商品・制度

経歴
  • 【職歴】
    1989年 日本生命入社
    1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
    1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職

(2022年02月18日「保険・年金フォーカス」)

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【アジア消費者、新型コロナウイルスにより家計・健康を懸念-6割強が収入途絶の場合貯蓄で生活できるのは1年未満、3分の2以上が何等かのメンタル不調を経験、健康アプリの使用や運動もさかん】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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