コラム
2022年02月08日

じゃんけんの拡張-“下剋上”のある、じゃんけんはいかが?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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◇ 修正版マレーシア流じゃんけんには、“下剋上”が組み込まれている

このじゃんけんでは、水と鳥が味わい深い。水は、石と板と拳銃のどれにも勝てる強い手だ。対照的に、鳥は、石と板と拳銃のどれにも負けてしまう弱い手だ。しかし、弱い鳥が、強い水に勝つというルールを設けたことで、一種の“下剋上”の要素が組み込まれた格好になっている。このことは、次のように、グラフを立体的に書き直してみるとよくわかる。(グラフ6とグラフ7は同じ内容)
グラフ7. 修正版マレーシア流じゃんけん (グラフ6を立体的に書き直し)
石、板、拳銃の3つの手は、通常のじゃんけんのグー、チョキ、パーの三すくみと同じ関係だ。各プレーヤーは、通常のじゃんけんのつもりで、石、板、拳銃を出すことができる。
 
そして、この3つのどれにも勝てる、水という強い手がある。「相手は通常のじゃんけんのつもりで石、板、拳銃のどれかを出してくるだろう」と読めたら、水を出せば勝てる。
 
ところが、板、石、拳銃のどれにも負けてしまう弱い手である鳥が、水にだけは勝てる。「相手が水を出してくる」と読んだら、ここぞとばかりに鳥を出して、“下剋上”を狙うことができるわけだ。
 
このように、相手の心理を踏まえて手を出す奥深さが、修正版マレーシア流じゃんけんの醍醐味といえる。

◇ じゃんけんで盛り上がってみるのもよいかも

じゃんけんは、何の道具も要らず、いつでもどこでもできる遊びだ。通常のじゃんけんだけではなく、5つの手を使った「下剋上」の要素を組み込んだものも考えられる。
 
さらに、出せる手の数を6つ、7つ、…と増やした、新種じゃんけんを考えてみるのもよいだろう。ただし、出せる手の数を増やせば、それぞれの手の間の勝ち負けの関係も増えてしまうため、複雑さが増してしまう点は覚悟しないといけない。
 
最近、コロナ禍の影響で、リアルの宴会はめっきり減った。だが、じゃんけんは、オンラインでもできる。オンラインの宴会などで、こうしたじゃんけんで盛り上がってみるのもよいように思うが、いかがだろうか。

(参考文献)
 
「狐拳」「虫拳」(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
 
「国によって違う! 世界のジャンケンの話:キャスト」(何ゴト? 何かと気になる事が書いてあるブログ, 2019.3.18)
 
「一般化ジャンケン」伊藤大雄(「オペレーションズ・リサーチ」(公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会) , pp156-160, Vol.58 No.3 (2013年3月号))


 

(付録1) 「4つの手を使って行うじゃんけんには、必ず無意味な手がある」ことの説明

ある1つの手が、他の3つの手すべてに勝つような場合、他の3つの手は、いずれも無意味な手となる。(というか、そもそも、じゃんけんとして成立しなくなる。)
 
逆に、ある1つの手が、他の3つの手すべてに負けるような場合、この手は、無意味な手となる。
 
したがって、4つの手は、それぞれ他の手に対して、全勝したり、全敗したりすることはない。
 
ここで、4つの手を a、b、c、d としよう。そして、「aはbに勝つ」を「a>b」、「aはbに負ける」を「a<b」と表そう。
 
aはb、c、dに対して全勝したり、全敗したりしない。そこで、a>b、a>c、a<dとしよう。
 
そして、bとcの間の勝ち負けを、b>cと置いてみよう。
 
すると、cはaにもbにも負けているので、全敗しないためには、dに勝つ必要がある。つまり、c>dとなる。
 
ここで、少し振り返ってみると、aとその他の手の勝ち負けの関係、cとその他の手の勝ち負けの関係はすべて決している。まだ、決まっていないのは、bとdの勝ち負けの関係だけとなる。
 
b>dとしてみよう。このとき、bとcはいずれも、aに負けて、dに勝つ。そして、bはcに勝つ。したがって、どのようなケースでも、cを出す代わりに、bを出したほうがよいことになる。つまり、cは無意味な手となる。
 
b<dとしたらどうか。このとき、aとbはいずれも、dに負けて、cに勝つ。そして、aはbに勝つ。したがって、どのようなケースでも、bを出す代わりに、aを出したほうがよいことになる。つまり、bは無意味な手となる。
 
bとcの間の勝ち負けを、b<cと置いて話を進めた場合も、同様の展開となる。このように、4つの手を使って行うじゃんけんでは、いずれの場合も、無意味な手ができることとなる。

(付録2)「5つの手で行うじゃんけんのうち、無意味な手がないものは、トカゲスポックじゃんけんと、修正版マレーシア流じゃんけんの、2つのグラフの形しかない」ことの説明

ある1つの手が、他の4つの手すべてに勝つような場合、他の4つの手は、いずれも無意味な手となる。((付録1)の最初に述べたのと同様に、そもそも、じゃんけんとして成立しなくなる。)
 
逆に、ある1つの手が、他の4つの手すべてに負けるような場合、この手は、無意味な手となる。
 
したがって、5つの手は、それぞれ他の手に対して、全勝したり、全敗したりすることはない。5つの手は、他の手に対して、3勝1敗か、2勝2敗か、1勝3敗か、のいずれかとなる。
 
5つの手のうち、2勝2敗となる手がいくつありうるか、考えてみよう。
 
5つの手すべてが2勝2敗となるケースが、トカゲスポックじゃんけんとなる。また、5つの手のうち、3つが2勝2敗となるケースが、修正版マレーシア流じゃんけんとなる。
 
2勝2敗となる手の数が、4つや、2つや、ゼロ(なし)個といった、偶数個になることはありえない。なぜかというと、3勝1敗や、1勝3敗となる残りの手の数が、奇数個となり、5つの手からなる異なる手同士の勝ち負けの組み合わせ(全部で10通り)で、勝ちの数の合計と、負けの数の合計が合わなくなってしまうからだ。
 
したがって、トカゲスポックじゃんけんと、修正版マレーシア流じゃんけん以外で、無意味な手がないじゃんけんの可能性があるのは、5つの手のうち、1つの手が2勝2敗で、残り4つの手のうち、2つの手が3勝1敗、2つの手が1勝3敗、というケースだけとなる。
 
ここで、5つの手を a、b、c、d、e としよう。(付録1)と同じように、勝ち負けの関係を「a>b」、「a<b」などと表すことにしよう。
 
aが2勝2敗、bとcが3勝1敗、dとeが1勝3敗としよう。
 
そして、bとcの勝ち負けを b>c、dとeの勝ち負けを d>e と置こう。
 
すると、cは3勝1敗なので、b以外にはすべて勝つ。つまり、c>a、c>d、c>eとなる。
 
一方、dは1勝3敗なので、e以外にはすべて負ける。つまり、d<a、d<b、d<cとなる。
 
ここで、cとdはいずれも、bに負けて、eに勝つ。aに対しては、cはaに勝ち、dはaに負ける。そして、cはdに勝つ。したがって、どのようなケースでも、dを出す代わりに、cを出したほうがよいことになる。つまり、dは無意味な手となる。
 
bとcの勝ち負けをb<cと置いたり、dとeの勝ち負けを d<eと置いたりして話を進めた場合も、同様の展開となる。つまり、5つの手のうち、1つの手が2勝2敗で、残り4つの手のうち、2つの手が3勝1敗、2つの手が1勝3敗、というケースでは、無意味な手ができてしまう。
 
したがって、5つの手で行うじゃんけんのうち、無意味な手がないものは、トカゲスポックじゃんけんと、修正版マレーシア流じゃんけんの、2つのグラフの形しかない、こととなる。
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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

(2022年02月08日「研究員の眼」)

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