2022年02月08日

確定拠出年金の一時金をいつ受け取るか-課税ルール変更を受けて

基礎研REPORT(冊子版)2月号[vol.299]

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任   高岡 和佳子

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1―課税ルールの変更

2021年8月3日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」が閣議決定された。これにより、確定拠出年金を一時金で受け取る場合の課税ルールの変更(2022年4月~)が確定した。年度始に公開した拙稿*1において、2022年4月からの年金受給開始年齢の選択肢拡大に伴い、確定拠出年金を年金で受け取るか、一時金で受け取るかの検討に加え、一時金で受け取る場合いつ受け取るかの検討も重要となることを紹介したが、早々に課税ルールが変更された。そこで、新たなルールを基準に、確定拠出年金を一時金で受け取る場合の課税ルールを説明したい。

2―課税ルールの変更内容とその目的

複数の退職金を受け取る場合に退職所得控除対象期間が重複しないように、同じ年および前年以前「4年内」の複数の退職金受取を対象に退職所得控除額を調整(つまり縮小)することになっている。一方、確定拠出年金の老齢給付金を一時金で受ける場合に限り、通常の退職金受取に適用される「4年内」ではなく「14年内」までが調整対象とされている。確定拠出年金の一時金受取に限り取り扱いが異なるのは、確定拠出年金の一時金は受給時期を選択できるからである。受給時期を調整することにより多額の退職所得控除を受けることが ないよう、「14年内」までが調整対象とされている。確定拠出年金の一時金受取の最終年齢が70歳から75歳に延長されたことに伴い、この「14年内」が「19年内」に5年延長されることになった。

3―課税ルール変更の影響

2022年4月以降、確定拠出年金の一時金受取の最終年齢が70歳から75歳に延長される。60歳になる年に退職金を受け取り、75歳になる年に確定拠出年金を一時金で受け取ると、60歳になる年に受け取った通常の退職金は15年前のものとなる。課税ルールの変更が行われなければ、前年以前「14年内」に退職金などを受け取った場合に該当しないので、退職所得控除対象期間を重複利用することが可能となっていた。しかし、2022年4月以降「14年内」が5年延長されて「19年内」に課税ルールが変更されるので、75歳になる年に受け取っても退職所得控除対象期間を重複利用することはできなくなった。

しかし、55歳になる年に退職金を受け取り、75歳になる年に確定拠出年金を一時金で受け取ると、55歳になる年に受け取った通常の退職金は20年前のものとなる。前年以前「19年内」に退職金などを受け取った場合に該当しないので、退職所得控除対象期間を重複利用することが可能である。

4―早期・希望退職とFIRE

退職所得控除対象期間を重複利用できる55歳早期退職は非現実的な仮定ではない。早期・希望退職募集に関するニュースを目にする機会も多い。東京商工リサーチの調査*2によると、2021年に早期・希望退職者を募集した上場企業数が84社に達した。また、若者を中心に経済的に独立し、早期リタイアを実現するFIREが人気だ。厚生労働省「平成30年高齢期における社会保障に関する意識調査報告書」によると、就業希望年齢が55歳以下と回答した20代は7.5%で、40代の3.9%の約2倍に及ぶ。
 
*2 『1000人以上の大型募集、20年ぶり高水準コロナ禍で実施企業の二極化加速 2021年上場企業「早期・希望退職」募集状況』 https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220120_01.html

5―最後に

高年齢者が活躍できる環境整備を背景に、確定拠出年金の受給開始時期が60歳から75歳までに改正された。受給時期を調整することにより多額の退職所得控除を受けることがないようルールを変更するのは不公平をなくすために良いことだと思う。しかし、労働市場の流動化、雇用慣行の変化、働き方の多様化を考えると、特定の年数を基準に重複期間の調整の要否を判別することには無理があり、また20年を境に1年当たり退職所得控除額が40万と70万と違うことにも合理性がないのかもしれない。将来に向けては、より公平で合理的な課税ルールを期待したい。

なお、今後も課税ルールの変更等はありうる。退職金などの受け取り時期の決定に際しては、税理士や税務署に確認することを是非ともお勧めしたい。
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

(2022年02月08日「基礎研マンスリー」)

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