2021年06月08日

確定拠出年金をいつ受け取るか-一人時間差攻撃も選択肢に

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任   高岡 和佳子

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来年4月から、年金の受給開始年齢の選択肢が広がる。現在は60歳から70歳までの間だが、60歳から75歳までの間から年金の受給開始年齢を選択できるようになる。この選択肢の拡大にはどのようなメリットがあるのだろうか。

代表的なメリットは、公的年金の受給開始年齢の繰り下げによる年金受給額の増額である。公的年金は受給開始年齢を繰り下げると、1月あたり0.7%増額される。これまでだと最大42%(0.7%×12月×5年)の増額だが、選択肢の拡大によって、最大84%の増額が可能になる。75歳迄働き続けられるならば、多額の老後資金は不要になる。

ところで、あまり知られていないが、公的年金に併せて、確定拠出年金の受給開始年齢の選択肢も75歳迄拡大する。ここでは、確定拠出年金の受給開始年齢の選択肢拡大に絞って、そのメリットを考えてみたい。

まず、確定拠出年金の受取方法と税制上の取り扱いを簡単に説明する。確定拠出年金の受取方法は、年金受取が原則だが、一般的に全額を一時金受取にすることや年金受取と一時金受取を併用することが可能である。

年金受取の場合は雑所得扱いとなり、公的年金等控除が適用される。その年に受け取った公的年金等の受取総額から公的年金等控除を控除した残額が「公的年金等に係る雑所得」となる。公的年金等の受取総額が公的年金等控除を上回り、「公的年金等に係る雑所得」が発生しても、それ以外の所得との合計(総所得)が、基礎控除(所得税48万円、住民税43万円)などの人的控除や社会保険料控除、医療費控除などの合計額以下に収まれば、年金受取に対する税金は発生しない。

一時金受取の場合は「退職所得」扱いとなり退職所得控除が適用される。その年に受取が確定した退職手当等の合計額から退職所得控除を控除した残額の二分の一が「退職所得」である。退職所得控除は勤続期間(確定拠出年金の場合加入者期間、以下同様)に応じて増える。退職一時金に加えて、確定拠出年金も一時金で受け取る場合、一般的に退職所得控除の基準となる勤続期間に重複期間が生じる。同じ年に二つ以上の退職金等の受取が確定した場合や、同じ年でなくても「前年以前の一定期間内」に他の退職金等の受取が確定した場合は、重複期間に応じて退職所得控除は調整(減額)される。

基本的に「前年以前の一定期間内」は前年以前4年内だが、確定拠出年金を一時金として受け取る場合に限り、前年以前14年内と所得税法施行令(以下、ルール)で定められている。

現時点では、確定拠出年金の受給開始年齢は60歳から70歳である。このため、65歳より後に退職一時金の受取が確定する人は、60歳の受取開始が可能となると同時に確定拠出年金の一時金受取を請求すれば、前年以前4年内に該当しない。このため、重複期間に応じて退職所得控除が調整されることはなく、それぞれ勤続期間に応じた退職所得控除が満額適用される。一方、65歳より前に退職一時金の受取が確定する人には、現状、重複期間に応じた退職所得控除の調整(減額)を避ける手立ては、ほとんどない。しかし、このうち60歳以前に退職一時金の受取が確定する人は、ルールが変更されない限り、受給開始年齢の拡大によって、重複期間に応じた退職所得控除の調整(減額)を避けられるようになる。例えば、60歳の誕生日に退職一時金の受取が確定する場合、75歳直前に確定拠出年金を一時金受取請求すれば、前年以前14年内に該当しないので、重複期間に応じた退職所得控除が調整を回避できる(図表参照)。

同一企業に長期間勤務し60歳時点で退職一時金の受取が確定する人は少なくない。このような人が、若いうちから確定拠出年金に加入している場合や退職給付制度変更に伴い従前の制度にかかる資産の移管を受けている場合、年金受給開始年齢の選択肢拡大のメリットは大きい。
確定拠出年金を一時金として受け取れる期間
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

(2021年06月08日「基礎研マンスリー」)

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