2020年10月07日

資産寿命を延ばすために気を付けるべきことは何ですか?

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   高岡 和佳子

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Q1.退職後も資産を運用しつつ、定期的に一定額の取り崩しを考えていますが、注意すべき点はありますか?

■高い収益率を求めるなら、短期的な収益率の変動を受容しなければいけません
資産運用による資産寿命の延長効果を説明する際、しばしば図表1のようなグラフが用いられます。退職時の資産残高が1,200万円、毎年の取り崩し額が60万円の場合、資産運用しなければ資産は20年しか持ちません。65歳で退職するなら、84歳で資産を使い切り、85歳以降は年金のみで生活することになります。しかし、年率2.5%で資産運用すれば、資産を使い切るのは91歳頃になります。つまり、資産運用によって資産寿命が7年も延長する計算です。
図表1 1,200万円、毎年の取り崩し額60万円の場合の資産残高の推移(理想)
現実的には、毎年確実に年率2.5%を確保することは不可能であり、高い収益率の獲得を目指すなら、短期的な収益率の変動を受容しなければいけません。「投資期間が長期に及ぶのだから、単年度の収益率がいくら変動しても、長期的に目標利回りに達成すれば良い」と、考えるかもしれません。しかし、長期的には目標収益率を達成しても、思うほど資産寿命が延長しない可能性があります。
図表2 1,200万円、毎年の取り崩し額60万円の場合の資産残高の推移(現実)
図表2の黒線のように長期的には2.5%を達成する投資信託に1,200万円全額を投じ、毎年60万円相当を売却すると、86歳頃に資産を使い切ってしまします。比較的早い段階で市況が悪化し、投資信託の基準価格が低い時期が続いてしまうと、投資信託の売却が想定以上に進み、市況が好転時には残高がほとんどなく、恩恵が限定されるからです。長期的な収益率が想定通りであったとしても、定期的に一定額の取り崩しを行う場合は、価格下落局面が先に来るか後に来るかによって資産寿命が延長しない可能性があるのです。

また、長期的にも目標収益率を達成できない可能性もあるため、資金計画の策定にあたり、過度に高い収益率を想定すべきではありません。

Q2.長期的な収益率が想定通りであっても、比較的早い段階で市況が悪化し基準価格が低い時期が続いてしまうと、資産寿命が延長しないのであれば、退職後の前半(15年程度)に市況が悪化する可能性があるなら、資産運用するべきではないということですか?

基準価格が低い時期の売却を避ける仕組みを考えましょう
長期的な収益率が想定通りであっても、比較的早い段階で市況が悪化し、投資信託の基準価格が低い時期が続いてしまうと、資産寿命が延長しないのは、基準価格が低い時期に投資信託を売却することが原因です。基準価格が低い時期の売却を避ければ、資産寿命の延長は期待できます。しかし、基準価格が低い時期も、生活する為には毎年一定額の資金は必要です。そのため、基準価格が低い時期における投資信託の売却を避けつつ、毎年一定額の資金取り崩しを確保する仕組みが重要です。

例えば、投資信託に保有資産の全てを投じるのではなく、保有資産の半分に止めて残りを現預金など資産価格変動リスクの無い資産で保有し、目標収益率に照らし資産価格が低い時期は現預金から引き出し、資産価格が高い時期のみ投資信託を売却するといった方法が考えられます。目標収益率2.5%の投資信託に保有資産の半分しか投じないのに、毎年60万円引き出すという資金計画には無理があります。そこで、基準価格上昇時も下落時も収益率が2倍(目標収益率5.0%)の投資信託を購入し、上述の仕組みを実践した場合の資産残高の推移を図表3(緑)に示します。基準価格が低い70歳~79歳頃は、現預金から引き出し、投資信託は売却しません。このため、80歳以降の市況が好転時の恩恵を受け、資産は92歳まで枯渇しません。
図表3 1,200万円、毎年の取り崩し額60万円の場合の資産残高の推移(対策後)
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

(2020年10月07日「ジェロントロジーレポート」)

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