2020年10月07日

退職後も資産運用は必要なの?

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   高岡 和佳子

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Q1.最近、資産寿命という言葉をよく耳にします。資産寿命を延ばすためには、退職後も資産運用は必要ですか?

■退職後の資産運用の要否は退職時の資産額次第1
はじめに、退職時の資産残高別に、退職後の資産運用が必要かどうかを確認します。要否の確認にあたり、年金受給額が年間240万円、希望する生活水準を維持するために必要な生活費が年間300万円で、資産の取り崩し額が年間60万円の夫婦世帯を想定します。

仮に、退職時(夫妻共に65歳)の資産残高が2,000万円あれば、資産を運用しなくても、97歳まで資産は枯渇しません(青線)。98歳時点で夫婦が共に健在である確率は1%と低いので、退職後の資産運用の必要性は低いと考えられます。
図表1 退職時資産残高が2,000万円及び1,000万円の場合の資産残高の推移
では、退職時の資産残高が1,000万円の場合はどうでしょうか。資産を運用しなければ、81歳で資産が枯渇します。81歳時点で共に健在である確率は57%と高いので、何らかの対策が必要です。仮に、年率2.5%で安定的に資産を運用できるなら、85歳まで資産は枯渇しませんが、86歳になる前に枯渇します(赤線)。86歳時点で共に健在である確率は34%と依然高いままです。資産を運用することで、更なる資産寿命の延長を目指すならば、年率2.5%よりも高い収益率が必要です。97歳まで資産を枯渇させないためには、年率5.0%で安定的に資産を運用する必要があります。
 
1 当レポートは、『日経ヴェリタス8月2日号』に掲載した記事を加筆・修正しています。
■退職後の資産運用の要否を判断する前に適切な資金計画を
資産寿命を延ばす手段は、資産運用だけではありません。就労期間を延長し収入を増やしたり、生活水準を引き下げ、生活費を減らしたりすることでも資産寿命を延ばすことができます。仮に、生活水準を10%引き下げ、生活費を年間270万円に抑えられるならば、取り崩し額が年間30万円で足りるので、資産を運用しなくても97歳まで資産は枯渇しません。実際は、資産運用にはリスクが伴い、高い収益率を目指すほどリスクも高くなります。また、資産を運用するか、収入を増やすか、生活水準を引き下げるかといった三者択一ではなく、「どの程度のリスクなら許容できるか(許容リスク量)」、「どの程度収入を増やせるか(就労可能性)」、「どの程度なら生活水準の低下に耐えられるか(許容生活水準)」とのバランスで、リスクを許容し資産運用を行うべきか否かを選択するのが合理的です。つまり、資産残高や年金受給額だけでは、資産寿命を延ばすために資産運用が必要か否かを判断することはできません。

退職後の資産運用の要否を判断する前に、許容リスク量、就労可能性、許容生活水準なども総合的に勘案し、適切に資金計画を策定することが、とても重要です。

Q2.資産寿命を延ばす必要が無くても、退職後も資産運用すると何かメリットはありますか?

■十分な資産があるならば、子孫により多くの資産を残すことも可能
退職時の資産残高が3,000万円もあれば、資産を運用しなくても、生存中に資産が枯渇する心配はあまりありません。しかし、資産を運用することにより、より多くの資産を子孫に遺す可能性が増えます。このように、退職後の資産運用といっても、その目的は様々です。

資産運用を行う際には、目的を明確にし、目的に適した金融商品の選択が重要です。
図表2 退職時資産残高が3,000万円の場合の資産残高の推移
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

(2020年10月07日「ジェロントロジーレポート」)

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【退職後も資産運用は必要なの?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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