2022年02月01日

12月末での3回目のワクチン接種意向~2回目まで接種した人でも、副反応の不安やブースター接種の不安は大きい

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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新型コロナウイルスのワクチン(以下、「ワクチン」と記載)の3回目の接種については、夏ごろから議論が活発になり、12月から医療従事者や高齢者施設入居者等を中心にはじまった。当初、原則として2回目の接種から8か月以上経過した人を対象に、原則2回目までと同じワクチンを接種することとされていたが、オミクロン株による感染の再拡大もあり、接種は前倒しとなり、2回目から6か月以上経過していれば、18歳以上の誰もが予約可能な大規模接種会場の運用が開始している。ワクチンの種類についても、11月に混合接種が容認され1、現在は、ワクチンの種類を選ぶよりは、早く打てるものを打つよう呼びかけられている。

しかし、3回目の接種は、国が期待するスピードでは進んでいないといった報道が目立つ2。人々は3回目のワクチンについてどのように考えているのだろうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が実施した「第7回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査3」を使って、3回目の接種希望、および、すぐには接種を希望しない理由を紹介する。この調査は、12月末に実施したものである。その頃は、国内ではオミクロン株の市中感染が報告されはじめた時期にあたり、まだ、現在のような感染の再拡大はなかったため、3回目のワクチン接種についてしばらく様子を見てから考えようといった意見が多かった可能性があるが、不安を感じる内容等には大きな差はないと思われる。
 
1 2021年11月13日 日本経済新聞「混合接種「認める方向」厚労相、3回目ワクチンで」等
2 2022年1月28日「3回目接種率OECDで最低 ワクチン相が公表」等
3 20~74 歳男女個人を対象とするインターネット調査。2021年12月22日~28日実施。有効回答数 2,543。詳細は、「第 7回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要をご参照ください。

1――2回目接種者・予約済者の9割程度が3回目の接種を検討。

1――2回目接種者・予約済者の9割程度が3回目の接種を検討。ただし、最多は「しばらく様子見」

12月末の時点で、新型コロナウイルスのワクチンについて2回目まで接種していたのは全体の84.3%だった。「1回目の接種は終えている」「1回目の接種予約は完了し、接種日を待っている」は合わせて1.2%、「まだ予約していないが、すぐにでも接種したい」「まだ予約しておらず、しばらく様子を見てから接種したい」はあわせて3.8%で、「まだ予約しておらず、あまり接種したくない」または「まだ予約しておらず、絶対に接種したくない」といった接種に消極的な人はそれぞれ5.4%と5.2%だった(図表略)。9月末と比べて接種は進んでいるが、接種に消極的な人の割合は9月末と比べてほとんど差はない4
図表1 3回目の接種の接種状況・意向 2回目までのワクチンについて、2回目の接種を終えている(または、少なくとも接種予約はしている)2,175人5について、追加(3回目)接種の状況および今後の意向をみた。その結果、既に「3回目の接種を終えている」または「三回目の接種日は決まっており、接種日を待っている」は、あわせて4.1%だった。それ以外では、「しばらく様子を見てから接種したい」が44.8%で最も多く、次いで「すぐにでも接種したい」が41.4%だった。2回目接種者のおよそ9割は、3回目の接種を検討している状況と考えられる。一方、「あまり接種したくない」は8.6%、「絶対に接種したくない」は1.0%で、2回目の接種を終えている(または、少なくとも接種予約はしている)人の中でも1割程度が3回目については消極的だった。年齢別にみると、高年齢ほど「すぐにでも接種したい」は多く、70~74歳では62.3%を占めた。
 
4 村松容子「9月末での3回目のワクチン接種意向~高年齢者と、重症化・治療への不安、ワクチンへの高評価、小6以下の子どもがいる人の意向が高い」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート、2021年11月16日、(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/69375_ext_18_0.pdf?site=nli)
5 2回目までのワクチンについて、「2回目まで接種を完了している」「1回目の接種は終えている」「1回目の接種予約は完了し、接種日を待っている」と回答した人。

2――積極的ではない理由

2――積極的ではない理由は、順番待ち、副反応の不安、ブースター・交互接種の不安

3回目の接種について「しばらく様子を見てから接種したい」「あまり接種したくない」「絶対に接種したくない」と回答した人、すなわち3回目の接種をすぐには希望していない1,184人を対象に、その理由を複数回答で尋ねた。

その結果、もっとも多かったのが「副反応が心配だから」で34.0%だった。次いで「まだ予約券が届いていないから(33.7%)」「ブースター接種による副反応の程度や症状についての情報が少ないから(20.9%)」「ブースター接種による効果が明確ではないから(14.9%)」が続いた。

理由を因子分析した結果を参考にして、3回目の接種をすぐには希望しない理由を、“順番待ち”“副反応の不安”“ブースター・交互接種の不安”“3回目不要”“面倒・拘束されたくない”“ワクチンの種類を選びたいから”“その他”という7つのグループに分けた(図表2)。グループ別にみると、「まだ予約券が届いていないから」「まだ医療従事者や高齢者等が終わっていないから」といった“順番待ち”のいずれかを回答した人が47.6%と最も多く、次いで、「副反応が心配だから」「これまでのワクチン接種による副反応の症状が辛かったから」といった“副反応の不安”のいずれかを回答した人が43.8%、「ブースター接種による副反応等の情報が少ないから」「ブースター接種による効果が明確ではないから」「交互接種が不安だから」といった“ブースター・交互接種の不安”のいずれかを回答した人が33.1%と続いた。以下、“3回目不要”、“面倒・拘束されたくない”“ワクチンの種類を選びたいから”が続いた。
図表2 3回目の接種に積極的ではない理由(n=1,184人)
年齢別にみると、“順番待ち”は高年齢で高い傾向がある。“副反応の不安”は若年ほど高い。“ブースター・交互接種の不安”は年齢による大きな差はないが、高年齢でやや低い。“3回目不要”は70歳未満では年齢による大きな差はなく高い。“面倒・拘束されたくない”は20~40歳代で高く、“ワクチンの種類を選びたいから”は中高年で高い傾向があった。

3回目の接種意向別にみると、もっとも人数が多い「しばらく様子を見てから接種したい」は、“順番待ち”“ブースター・交互接種の不安”“ワクチンの種類を選びたいから”で高かった。「あまり接種したくない」は、“副反応の不安”が7割を超えて高く、「あまり接種したくない」「絶対に接種したくない」では、“3回目不要”“その他”が高かった。

この結果から、既に2回目の接種を終えている(または、少なくとも接種予約はしている)人であっても、3回目をすぐには希望しない理由として多くが副反応の不安をあげていること、およそ15%が3回目は不要だと考えていることがわかる。また、すぐには接種しない人の中では、比較的接種に前向きだと思われる「しばらく様子を見てから接種したい」人で、ブースター・交互接種の不安があり、ワクチンを選びたいと感じていることがわかる。また、高齢で“ワクチンの種類を選びたい”が高い傾向があった。

なお、「その他」と回答した人の自由記述欄をみると、「キリがない」「まだ2回目接種から間隔が十分に経っていない」などの回答があった。
図表3 3回目の接種に積極的ではない理由(属性別)

3回目接種に向けて

3――3回目接種に向けては、効果や副反応に関する情報と、打ちたい人に打てる体制

以上みてきたとおり、12月末の時点で、2回目の接種を終えている(または、少なくとも接種予約はしている)人のうち9割程度が、3回目の接種を検討している状況だと考えられた。もっとも多かったのは、「しばらく様子を見てから接種したい」で2回目の接種を終えている人の44.8%を占めた。また、1割程度は、「あまり接種したくない」「絶対に接種したくない」と回答していた。

すぐには接種をしない理由として、国内でまだ3回目の接種が進んでいなかったことや、予約券が届いていないことによる“順番待ち”のほか、“副反応の不安”や“ブースター・交互接種の不安”があげられた。

ニッセイ基礎研究所で、1~2回目のワクチン接種意向について行ってきた調査では、“順番待ち”を理由として、すぐには接種しない人は、国内における接種が進むと、自身も接種していく傾向があった。しかし、“副反応の不安”を理由としてすぐには接種しない人は、国内における接種が進んでもあまり減少せず、様子を見続けている傾向があった。3回目のワクチン接種についても同じ傾向があるとすれば、3回目のワクチンによる効果、副反応の状況、交互接種の効果や副反応について、国内の事例が十分に公表されないと、不安が解消されず、接種が進まない可能性がある。

現在、3回目の接種について、自治体が主導する接種においては、ファイザー製に希望が偏っていて接種が進まない一方で、モデルナ製を使った大規模接種会場は、予約枠がすぐに埋まってしまうといった報道がある6。今回の結果では、「ワクチンの種類を選びたい」は中高年で多いことから、ワクチンの種類を問わず早く打つことを推奨するだけでなく、3回目のワクチンを打ちたい人が、年齢を問わず早く予約券を受け取り、打てるようにすることが重要だと思われる。
 
6 2022年1月26日毎日新聞「3回目接種、埋まらぬ予約枠 「ファイザー希望への偏り」要因か」、2022年1月28日日本経済新聞「国の大規模接種、初回予約9分で埋まる まず1日720人分」「茨城の自治体、3回目接種前倒し モデルナ限定の募集も」、2022年1月30日産経新聞「進まぬ3回目接種 遅れた前倒し判断 副反応忌避感」等
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

(2022年02月01日「基礎研レター」)

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