2022年01月31日

米個人所得・消費支出(21年12月)-PCE価格指数は前年同月比+5.8%と82年7月以来およそ39年半ぶりの水準に上昇

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を下回る一方、個人消費は市場予想に一致

1月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は12月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月改定値:+0.5%)と+0.4%から小幅上昇修正された前月を下回ったほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.5%も下回った(図表1)。個人消費支出は前月比▲0.6%(前月改定値:+0.4%)と+0.6から小幅下方修正された前月からマイナスに転じた一方、市場予想の▲0.6%に一致した。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は▲1.0%(前月改定値:▲0.2%)とこちらは前月比横這いから下方修正された前月からマイナス幅が拡大、市場予想の▲1.1%は上回った(図表5)。貯蓄率1は7.9%(前月:7.2%)と、前月から+0.7%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.4%(前月:+0.6%)と前月を下回った一方、市場予想(+0.4%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.5%(前月:+0.5%)と前月、市場予想(+0.5%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+5.8%(前月:+5.7%)と前月を上回った一方、市場予想(+5.8%)に一致した。コア指数は+4.9%(前月:+4.7%)と前月、市場予想(+4.8%)を上回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:インフレ加速が継続

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 12月の個人消費は前月比で21年2月以来のマイナスとなった(図表1)。個人消費の落ち込みは、後述するように財消費の広範な分野に及んだが、21年の年末商戦が10月から活発となるなど、商品の売り切れを恐れて例年より、財消費の出だしが早かった反動とみられる。

個人所得は労働需給の逼迫を背景に賃金・給与の伸びが加速したこともあって前月比でプラスを維持した。この結果、貯蓄率は前月から大幅に改善し、所得対比でみた消費余力は増加した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、総合指数の上昇基調が持続しており、FRBの物価目標(2%)を10ヵ月連続で上回ったほか、82年7月(+5.8%)以来およそ39年半ぶりの水準となった。物価の基調を示すコア指数も21年9月から4ヵ月連続で上昇したほか、83年9月(+5.1%)以来の水準まで増加しており、足元で物価上昇圧力の高い状況が持続していることを示す結果となっている。

3.所得動向:賃金・給与、利息配当収入が所得を押上げ

12月の個人所得(前月比)は、自営業者所得が▲1.4%(前月:+0.0%)と前月から大幅なマイナスに転じたほか、移転所得も▲0.0%(前月:+0.6%)と小幅ながらマイナスに転じた(図表2)。一方、賃金・給与が+0.7%(前月:+0.6%)、利息配当収入が+0.6%(前月:+0.4%)といずれも前月から伸びが加速して個人所得全体を押し上げた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、12月の名目が+0.2%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化したほか、価格変動の影響を除いた実質ベースは▲0.2%(前月:▲0.2%)と5ヵ月連続のマイナスとなった(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財消費が広範な分野で減少

12月の名目個人消費(前月比)は、財消費が▲2.6%(前月:▲0.2%)と2ヵ月連続マイナスで前月からマイナス幅が拡大したほか、サービス消費が+0.5%(前月:+0.7%)と伸びが鈍化した(図表4)。

財消費は、耐久財が▲4.1%(前月:▲1.2%)と前月からマイナス幅が拡大したほか、非耐久財が▲1.7%(前月:+0.4%)とマイナスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲1.6%(前月:▲1.9%)と前月からマイナス幅が縮小した一方、家具・家電が▲5.2%(前月:▲0.3%)、娯楽財・スポーツカーも▲5.4%(前月:▲1.7%)といずれもマイナス幅が拡大した。

非耐久財では、ガソリン・エネルギーが+0.2%(前月:+6.8%)と前月から伸びが鈍化したほか、食料・飲料が▲1.0%(前月:▲0.1%)、衣料・靴が▲4.7%(前月:▲0.7%)とマイナス幅が拡大した。

サービス消費は、医療サービスが+0.9%(前月:+0.8%)と前月から伸びが加速した一方、輸送が+2.2%(前月:+2.4%)、娯楽が+1.1%(前月:+2.4%)、金融サービスが+0.3%(前月:+1.1%)、外食・宿泊が+0.2%(前月:+1.0%)、住宅・公共料金が+0.2%(前月+0.8%)と伸びが鈍化した。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前年同月比でエネルギーは10ヵ月連続2桁の上昇

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲0.4%(前月:+3.6%)と7ヵ月ぶりのマイナスとなった(図表6)。食料品価格指数は+0.3%(前月:+0.7%)とこちらは小幅に伸びが鈍化したものの、11ヵ月連続のプラスとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+29.9%(前月:+34.0%)と前月から伸びは鈍化したものの、10ヵ月連続の2桁上昇となった(図表7)。また、食料品価格指数は+5.8%(前月:+5.6%)と54ヵ月連続のプラスとなったほか、こちらも前月から伸びが加速した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年01月31日「経済・金融フラッシュ」)

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