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現代消費潮流概論-消費文化論からみるモノ・記号・コト・トキ・ヒト消費-
生活研究部 研究員 廣瀬 涼
1――消費はつまらないモノ
1 人間の「欲求」には5つの段階があるという説
2 現在では自己超越欲求を含む6段階として議論されることもある
2――モノ消費と記号消費
この「記号消費」の特徴は実質的な役割を擁していないという点にある。例えば、高級アパレルブランドのロゴは、それ単体では消費されることはなく、カバンや洋服に宿ることで初めて有形物となる。ロゴという機能的価値がないものがカバンという道具的価値に付属することで実像をなし、且つ可視化されることで、他人に発信されるメッセージ(記号)が創造されるのである。そのため、皮肉にもブランドという他人への記号を擁したカバンは、本来の普遍的な目的を実現する「モノを運ぶ」という道具的価値ではなく、自分に宿ることで初めて存在が成立した“ブランド(ロゴ)”から得られる「人々からの反応」によって価値が見いだされるのである(図2)。
3 間々田孝夫(2000)『消費社会論』有斐閣
4 消費社会において主流となる消費対象やトレンド
5 例えば高級ブランドバッグを持っていて、そのバッグが高級ブランド品であると認知されていれば、そのバッグはメッセージを発信できていることとなる。
3――コト消費
SNSの普及により、この「コト消費」は人々の強い関心事になっていった。従来は他人に見せたいと思う対象が前述したヴェブレン財であったが、ファッション性のある洋服、流行の食べ物といった一般消費財に付加価値が加わったものや、その消費経験が主な対象となっていった。 “インスタ映え”のように、写真として映えることや承認欲求を充足させることが商品に求められ、機能性よりもその見た目で選別されることも多く、「物撮り」と呼ばれるような写真を撮ることを目的として購入されることも多かった。このような背景から「SNSにアップされていなければ、何も起こっていないのと同様」という消費文化が定着しつつあり、特に若者の間では、SNSに投稿することで消費が完結するというような消費行動がより一般的となってきている。従来では、見せつけたいと思うものが「高価なモノ」というある意味一つの尺度で価値が見出されていたが、昨今では万人が羨ましいと思わなくとも、一部の人が羨ましいと思うモノやコトを顕示することが主流となっており、このような側面からも消費されるモノの価値が道具的価値のみならず、その商品が持つ付加価値に重きが置かれ、且つその付加価値が多様化してきているといえる。
4――「モノ消費に見えるコト消費」
モノを購入することで物質的な豊かさを実感したり(70年代)、流行やブランド品で他人と差別化しようとしたり(80年代)するなど、モノの所有に重きを置いて物品が購入されていた世代とは異なり、モノの直接的機能価値の消費に加えてその商品を消費することで自分ならどのようにその商品を消費し、表現することができるかという点に重きが置かれているともいえるだろう。
6 人によっては部屋のレイアウトとして購入する事もある
7 映画のDVDディスクはそのものからは何も効用を生み出さないが、DVDプレイヤーに入れて視聴するという体験を提供し、遊園地のチケットも紙きれに過ぎないが、使用する(遊園地に入場)ことでエンターテインメントを体験することができる。
(2022年01月19日「基礎研レポート」)
03-3512-1776
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
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