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ESGのSとは-具体的事例でS に対する理解を深める
基礎研REPORT(冊子版)10月号[vol.295]
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
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1―Sのイメージ
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、日本株式の3つのESG指数を採用し、これら指数に連動したパッシブ運用を行っている。3つの指数の内、2つは3要素全般を考慮した「総合型」指数、残る1つがSのうち女性活躍に着目した「テーマ型」指数である。人材確保や、顧客ニーズの多様化への対応力強化等、ダイバーシティの推進は持続的成長に不可欠な要素である。日本では、雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は、女性の方が男性よりもはるかに高く(図表)、女性活躍推進は重要な課題である。Sとして女性活躍推進が思い浮かぶ人も多いだろうが、ダイバーシティは性別だけでなく、年齢、人種、性的指向など幅広い多様性を求めている。女性活躍がダイバーシティの一つの構成要素でしかないように、ダイバーシティもSの一つの構成要素でしかない。
2―ESG指数からSを学ぶ
「人的資本」の具体的課題としては、適切な労働管理、健康と安全への配慮、ダイバーシティ推進といった人的資本の開発などが含まれる。最近の言葉で分かりやすく言えば「ブラック企業を撲滅しましょう」といったところだ。そして、自社だけでなくサプライチェーンに対しても、同様の配慮が求められる。つまり、児童労働や強制労働など遠い世界の話に思える人権侵害が、自社製品の原材料から消費者に届くまでの一連の流れの中に組み込まれていないことも重要となる。「製造物責任」には、安全かつ質の高い商品・サービスの提供、個人情報などの保護等が含まれる。「利害関係者の対立」には、地元との良好な関係や武装勢力の資金源となり得る原料調達の回避が含まれる。最後に「社会的機会」にはコミュニケーションや金融、ヘルスケアサービスの利用可能性や健康面・栄養面の機会創出などが含まれる。
最初の「人的資本」は配慮すべき人が限定的で具体的にイメージしやすい。しかし、後段に進むにつれ、テーマが壮大になり、配慮すべき対象者の範囲が広がるため、具体的なイメージがわきにくい。
*1 MSCI ESG Research (2020). “MSCI ESG RATINGS METHODOLOGY.”
3―企業の取り組みからSを学ぶ
パナソニックは『より多くの人々への心配りを、商品・サービスを通じて提供し、共に生き生きと快適に、豊かに暮らせる生活の実現をめざす』という方針を掲げ、コードに足を引っかけても転倒しにくい安全機能付きマグネットコンセントや、利便性が高く、楽なコミュニケーションを実現する耳かけ型補聴器といった商品を多数開発している。
アサヒグループホールディングスは『人に寄り添い、豊かな地域を共につくる』ための活動の一環として、小学生向け出前授業を展開し、日本各地の特産果実を使用した「特産三ツ矢」の果実原料の産地にある小学校での授業では、地域産業への興味や特産品に対する誇り醸成に取り組んでいる。また、地域・国の法規制や文化・習慣に合わせたマーケティング活動や、『正しいお酒の飲み方講座』を開催する等、「責任ある飲酒」を推進している。
ヤマハは耳の健康に留意したヘッドホン・イヤホンの商品化、地域伝統音楽向け楽器開発の他、器楽教育の普及や音楽の人と人をつなぐ力を活用する、地域活性や企業と社会の共有価値の創出を支援している。
(2021年10月07日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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