2021年09月17日

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(3) サードプレイスオフィスの動向
近年の旺盛なオフィス需要を支えていた要因の1つに、「レンタルオフィス6」や「シェアオフィス7」、「コワーキングスペース8」等のサードプレイスオフィスの増加が挙げられる。企業は、「働き方改革」の一環として、従業員の働きやすい職場環境を提供しワークライフバランスの向上を図るため、サードプレイスオフィスの利用を拡大していた。

ザイマックス不動産総合研究所によれば、東京都区部のフレキシブルオフィス9 (2021年1月時点)は762件(図表-13)、総面積は約19.4万坪となり(図表-14)、コロナ禍においても拡大が続いている。
図表-13 フレキシブルオフィスの累計件数/図表-14 フレキシブルオフィスの累計面積
ザイマックス不動産総合研究所「働き方とワークプレイスに関する首都圏企業調査(2021 年7月)」によれば、サテライトオフィスの利用は、「タッチダウン(移動の合間など、短時間利用)で働く場所(67%)」との回答が最も多く、次いで、「自宅近くで本社同様の業務(長時間利用)をする場所(53%)」となった。従業員の通勤時間の削減や事業拠点のエリア分散の目的から、本社の代わりに出社する場所としての利用を想定している企業も多い。

また、サードプレイスオフィスは、こうした大企業のほか、スタートアップ企業やフリーランスによる利用をターゲットとしている。

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターによれば、国内ベンチャーへの投資額は2020年以降低迷が続いていたが、2021年第2四半期の投資額は584億円(前年比+65%)と大幅に増加し、回復の兆しが見える(図表-15)。

また、ランサーズ「フリーランス実態調査」によれば、日本において在宅などで個人で仕事を請け負うフリーランス人口は、2021年に1,670万人となり、2018年の1,151万人から+45%増加した。一方、労働政策研究・研修機構「新型コロナウィルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査 (第5回・2021年7月公表) 」によれば、「新型コロナによる雇用・収入への影響」に関して、「影響があった」との回答は、正社員が35%、非正社員が38%であるのに対して、フリーランスは59%となり厳しい経済環境に直面している(図表-16)。
図表-15 国内ベンチャーへの投資額/図表-16 新型コロナウィルス感染症に関連した自身の雇用や収入にかかわる影響
 
6 会議室などを共用部分に設置して共有し、専用の個室をそれぞれ持つ、いわば合同事務所のようなオフィス形態。
7 フリーアドレスでデスクを共有して利用するオフィス形態。
8 オープンなワークスペースを共用し、各自が自分の仕事をしながらも、自由にコミュニケーションを図ることで情報や知見を共有し、協業パートナーを見つけ、互いに貢献しあう「ワーキング・コミュニティ」の概念およびそのスペース(コワーキング協同組合による定義)。
9 一般的な賃貸借契約によらず利用契約を結び、事業者が主に法人ユーザーに提供するワークプレイスサービス。「レンタルオフィス」や「シェアオフィス」、「コワーキングスペース」等が含まれる。

3. 東京都心部Aクラスビル市場の見通し

3. 東京都心部Aクラスビル市場の見通し

3-1. クラスビルの新規供給見通し
三幸エステートの調査によれば、2021年の東京都心部での新規供給量は約6万坪、2022年は約7万坪となり、2020年(約20万坪)の約1/3に留まる見通しである。しかし、2023年は、港区虎ノ門地区で大規模ビルの竣工が複数棟予定されており、新規供給は再び約20万坪に達する。2024年は一旦落ち着くものの、2025年は品川駅周辺等で大規模開発が予定されており、新規供給量は約30万坪と、過去最高を上回る見通しである(図表-17)。
図表-17 東京都心部Aクラスビル新規供給見通し
3-2. クラスビルの空室率および成約賃料の見通し
新型コロナウィルスの感染拡大後も、人手不足の状況が継続しており、東京都心部の「オフィスワーカー数」が大幅に減少する懸念は小さい。しかし、東京都の就業者数(総数)は増えておらず、「学術研究、専門・技術サービス業」や「金融業、保険業」等、オフィスワーカーの比率の高い産業で就業者が減少している。

また、東京では「在宅勤務」が定着しオフィス出社率が低下するなか、企業にとって「オフィス戦略の見直し」が、重要な経営課題となっている。一部の企業では、オフィス床面積を削減する方針を発表している。

「サードプレイスオフィス」についても、企業の利用が増加するなか、需要の一躍を担っていたフリーランスはコロナ禍の影響を受けて厳しい経済環境に直面にしている。

以上のことを鑑みると、オフィス需要は力強さを欠き、空室率は緩やかな上昇が続くと見込む。特に、2023年と2025年は大量供給の影響を受けて空室率が上昇し、2025年には5%台となる見通しである(図表-18)。

また、東京都心部Aクラスビルの成約賃料は、空室率の上昇を受けて緩やかな下落基調で推移すると見込む(図表-19)。2020 年の賃料を100 とした場合、2021 年は「100」、2022年は「98」、2025 年は「92」への下落を予測する。ただし、ピーク(2019年末)対比では▲25%下落するものの、2015年の賃料水準に留まる見通しである。
図表-18 東京都心部Aクラスビルの空室率見通し/図表-19 東京都心部Aクラスビルの成約賃料見通し
 
 

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

(2021年09月17日「不動産投資レポート」)

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