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ふるさと納税6割返礼品の効果-2020年度の寄付額増額は一過性のものか?
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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2020年度のふるさと納税受入額(以下、ふるさと納税額)が2年ぶりに増加した(図表1)。2020年の今頃、2019年度のふるさと納税額が7年ぶりに減少に転じたこと、また2019年6月から始まった新制度の影響であることが報じられていた。新制度とは寄付額に対する返礼品の割合を3割以下に抑える、寄付の募集方法が適切である等の条件を満たさない自治体に対する寄付に対して、税制上の優遇措置を適用しない制度である。上述のような報道を受け、多くの人は「新制度により返礼品の割合(魅力度)が低下したから、ふるさと納税寄付総額が減少に転じた」と理解したのではないだろうか。では、なぜ2020年度は、ふるさと納税受け入れ総額が対前年度比1.38倍(6,725億円÷4,875億円)も増加したのだろうか。2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、在庫の滞留等が生じている国産農林水産物について、農林漁業団体、品目別団体等が行う販売促進の取り組みを支援する「国産農林水産物等販売促進緊急対策(補助事業)」が行われた。この補助をふるさと納税の返礼品制度に活用する自治体もあり、寄付額の6割に相当する返礼品(以下、6割返礼品)が話題になった。2020年度の急増の原動力は6割返礼品の出現であり、2020年度のふるさと納税の急増は一過性のものに思えるかもしれない。しかし、6割返礼品の出現は直接的な原動力ではなく、2021年度の寄付額が2019年度水準に減る可能性は低いと考えている。本稿では、6割返礼品の効果を検証し、ふるさと納税受け入れ総額増加の直接的な原動力かどうかを確認したい。
6割返礼品の規模は小さくはない
6割返礼品の有無で、対前年度寄付受け入れ額増加額は異なるが
確かに、6割返礼品を利用した自治体の2019年度から2020年度の寄付増加額は平均4億円で、それ以外の自治体の平均0.9億と比べて明らかに大きい(図表2)。しかし、2019年度の寄付額も、6割返礼品を利用した自治体の方がそれ以外の自治体より大きく、2019年寄付額に対する増加率の差はほぼない。従って、ふるさと納税額が元々大きい自治体が単に6割返礼品を積極的に活用した結果に過ぎないように見える。ふるさと納税の「牛肉や海産物など魅力的な返礼品に注目が集まる」傾向と、「国産農林水産物等販売促進緊急対策(補助事業)」の対象を併せて考えると、元々ふるさと納税先として知名度、人気の高かった自治体ほど6割返礼品を活用する傾向は当然と言える。
2 実施事業者一覧の内、事業内容がふるさと納税である事業者数124と水準が一致する。なお、同一自治体で、複数の事業者が実施している例や、複数の自治体にまたがって事業営む事業者もある。
3 国産農林水産物等販売促進緊急対策事業に代えて、国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業とふるさと納税を組み合わせた取り組みが行われている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年08月10日「研究員の眼」)
03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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