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ふるさと納税6割返礼品の価値-新型コロナウイルス関連の緊急対策との比較

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
【6割返礼品と、そのからくり】
【ふるさと納税に伴い受領する返礼品は課税対象である】
幸い、一時所得には最大50万円までの特別控除があるので、大多数の人は気にする必要はない。返礼品の価値が寄付額の3割かつ、返礼品以外の一時所得1がない場合、50万円以上の返礼品を受け取るには166万円(50万円÷3割)以上寄付する必要があり、ふるさと納税による自己負担額が実質2,000円に収まる寄付上限額が166万円を超えるには、給与所得者の場合でおよそ5,000万円以上の給与収入が必要だからだ。
6割返礼品の是非についてはあまり関心がないが、一時所得を把握する上で6割返礼品の価値がどのように扱われるかが気になって仕方がない。6割返礼品の是非については新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う対策という性質上、恒常的な事業ではないし2、今困っている人を助けるという大義名分にも異論はないが、恒常的ではないとはいえ、6割返礼品の課税上の取扱いよって所得税額に影響があるほどの高額所得者を優遇する理由はないからである。
寄付額の6割相当の返礼品なのだから、6割返礼品の課税上の価値は寄付額の6割相当だと考えるのが自然だと思うのだか、6割返礼品の課税上の価値について一緒に考えてみたい。
1 一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得のことで、懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の返戻金、生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金、遺失物拾得時に受け取る放浪金などが該当する。
2 キャンペーン実施期間に制限があり、地方公共団体と連携する場合は連続1か月、それ以外は、連続又は非連続で合計14日間以内である。
【道の駅や直売所で同商品を半額で購入した場合は、課税対象なのか?】
ならば、6割返礼品の課税上の価値は寄付額の6割相当ではなさそうだ。道の駅や直売所などの割引販売も6割返礼品も同じ「地域の創意による販売促進事業」に基づくのに、補助額の課税上の取扱いが異なるのはおかしい。寄付額の6割のうち3割相当が課税対象外の値引き分ならば、6割返礼品の課税上の価値は寄付額の3割相当と考えられる。
【サービス産業消費喚起(Go To)事業の給付は課税対象である】
【補助や給付を受けるのは誰か】
同じ新型コロナウイルス関連の緊急対策とはいえ、一方は消費者(又は旅行者)に対する給付であり、他方は消費者に対する給付ではないということだ。であれば、サービス産業消費喚起(Go To)事業により享受する経済的利益と、6割返礼品により享受する経済的利益のうち半分(補助分)の取扱いが異なるのも当然なのかもしれない。そう考えると、6割返礼品の課税上の価値はやはり寄付額の3割相当なのだろうか。
いろいろ考えてみたけれど、6割返礼品の課税上の価値はよくわからない。しかし、6割返礼品の課税上の価値が寄付額の6割相当なら、同じ事業に基づくのに、道の駅や直売所等で購入した場合と取扱いが異なるという違和感が残る。とはいえ、寄付額の3割相当なら、コロナ禍に乗じて一部の高額所得者3の支払うべき税金が減免され、お金持ちが優遇されているようで、なんとなく腑に落ちない。
3 返礼品の価値が寄付額の6割かつ、返礼品以外の一時所得 がない場合、50万円以上の返礼品を受け取るには83万円(50万円÷6割)以上寄付する必要があり、ふるさと納税による自己負担額が実質2,000円に収まる寄付上限額が83万円を超えるには、給与所得者の場合でおよそ2,500万円以上の給与収入が必要になる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年12月17日「研究員の眼」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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