コラム
2021年08月05日

みんな大好き米国株式ファンド~2021年7月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式を中心に大規模な資金流入が継続

2021年7月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式を中心に国内REITと外国REIT以外の資産クラスで資金流入があり、ファンド全体では9,200億円の資金流入があった【図表1】。6月や2021年に入って最大の純流入だった3月とほぼ同規模の資金流入であった。ただ、7月はSMA専用ファンド全体に1,600億円の資金流入があり、6月(1,400億円)と同等以上にSMA専用ファンドによって資金流入が底上げされた面がある。特に資産クラス別だと、外国債券と国内債券のSMA専用ファンド(紺棒)に700億円に迫る資金流入があり、SMA専用ファンドを除くと外国債券と国内債券ともに資金流出であった。
 
7月は外国株式に6,300億円の資金流入があり、引き続き投信販売を牽引した。6月の流入金額6,500億円よりはやや減少したが、SMA専用ファンドを除外すると6月、7月ともに流入金額は6,200億円と同規模であり、外国株式ファンドの販売は引き続き好調を維持したといえよう。
【図表1】 2021年7月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

際立つ米国株式ファンドの人気

外国株式のうち、アクティブ・ファンドには4,300億円の資金流入と6月の4,200億円から若干、増加した。インデック・ファンドには2,000億円の資金流入と6月の2,300億円から減少こそしたが、3カ月連続で2,000億円以上の純流入となり、インデック・ファンドの販売も堅調であった。
 
7月に資金流入が大きかったファンドをみると、外国株式のアクティブ・ファンドでは6月から引き続き、基準価額によって毎月の分配金が変動する、いわゆる予想分配提示型のファンド(下線3本)が引き続き人気だった【図表2】。それに加えて7月は当月に新設された「脱炭素テクノロジー株式ファンド」などのテーマ型のESG関連ファンド(緑太字2本)にも大規模な資金流入があった。また、外国株式のインデックス・ファンドでは超低コストのファンドへの資金流入が顕著であった。
 
なお、資金流入が多かったファンド上位10本のうち5本が米国株式ファンド、しかもアクティブ3本(赤太字、うち2本は予想分配提示型)、インデックス2本(青太字)とタイプによらず人気であった。米国株式(ファンド)はインデックス・ファンドを活用する資産形成中の投資家から、資産取崩段階に入りより高い分配金を好む投資家まで、幅広い投資家に支持されていることがうかがえる。
 
米国株式ファンドは過去の運用成績が総じて良いため、あえて地域分散などする必要がないと考える投資家が多いことが背景にあると思われる。ただ、今後もそうした良好な運用成績が再現されるかは分からない。特に長期投資で見直しをしない人やつみたてNISA口座などリバランスがそもそもできない場合は、ある程度は地域分散させた方が良いのではと筆者は考えている。
際立つ米国株式ファンドの人気

国内株式は2020年3月以来の流入規模

また、7月は国内株式にも1,000億円の資金流入があり、6月の500億円の資金流入から倍増した。投資家が注目している日経平均株価(線グラフ)は7月に2万8,700円台から2万7,200円台にと1カ月で1,500円下落した【図表3】。日経平均株価の月間での下落幅は2020年3月以来の大きさであったが、国内株式に1,000億円以上の資金流入があったのも2020年3月以来のことであった。
 
国内株式のうち個人投資家などのタイミング投資に利用されているSMA・DC専用を除くインデックス・ファンドへの流入金額が1,000億円であった。国内株式全体とほぼ同額であり、やはり多くの資金流入がタイミング投資によるものであったと推察される。実際にインデックス・ファンド(黄棒)には下落した翌日に資金流入し、その一方で日経平均株価が一時、反発した翌営業日の13日、14日の2日間(赤囲い)合計で300億円の資金流出があったことからもそのことがうかがえる【図表3】。
【図表3】 国内株式ファンドの推計日次資金流出入
国内株式は2021年4月以降、株価の上値が重く米国株式などから劣後してきている。長期的にみても米国株式は主要指数が史上最高値を更新し続けているのに対して、国内株式の主要指数は30年以上、更新できずにいる。それもあってか投資するなら国内株式ではなく、米国株式に集中投資、もしくはグローバルに分散投資する投資家が多いのかもしれない。ホームカントリーバイアスがない投資家が多いという点は喜ばしいが、その一方で国内株式の市場関係者の一人としては少し寂しいところである。

バランス型への資金流入は堅調

その他、7月は内外株式以外にバランス型にも900億円の資金流入があった。バランス型には2020年2月までは大規模な資金流入があったが、それ以降は資金流出に転じる月もあるなど資金の動きは不安定な状況が続いていた【図表4】。それが、2021年5月からは継続して資金流入が続いている。
【図表4】 バランス型ファンドの資金流出入
7月のバランス型への資金流入900億円のうち、300億円がつみたてNISA対象のバランス型ファンド(黄棒)への資金流入であった。つみたてNISA対象のバランス型ファンドへの資金流入は2021年3月以降、じわじわと増加してきている。つみたてNISAの口座数(棒グラフ)、買付額(線グラフ)ともに着実に増加していることを踏まえると、つみたてNISAからの買付によってバランス型全体への資金流入も多少なりとも底上げされていると思われる【図表5】。
【図表5】 つみたてNISAの口座数と3カ月の買付額の推移
いずれにしてもバランス型は2020年3月のコロナ・ショックをきっかけに投資家が離れ、販売がふるわなくなっていたが、足元、徐々にではあるが投資家が戻ってきているようだ。また、冒頭でも触れたようにSMA専用ファンドにも7月だけでなく5月、6月と3カ月連続で1,000億円を超える資金流入があった。ファンド・ラップといったバランス型と似たコンセプトの商品も売れ出してきているのかもしれない。
 
このように7月は多くの資産クラスで資金流入があった一方で、外国REITと国内REITからは金額は300億未満と小さいものの資金流出があった。外国REITでは2020年10月から10カ月連続、国内REITでは2021年4月から4カ月連続の資金流出となった。7月は内外問わずREITが株式より堅調で、特に外国REITは2%以上上昇するなど好調なファンドが多かった。そのため、利益確定の売却が出やすかったものと思われる。
【図表6】 2021年7月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資 信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2021年08月05日「研究員の眼」)

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