コラム
2021年07月07日

販売好調が続く外国株式ファンド~2021年6月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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3月に迫る大規模な資金流入

2021年6月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、国内REITと外国REITは資金流出していたものの、外国株式を中心に資金流入があり、ファンド全体では9,200億円の資金流入があった【図表1】。5月の7,100億円から大幅に増加し、2021年に入って最大の純流入だった3月の9,300億円に迫る規模だった。また、6月は5月と同様にラップ口座等の販売が好調だったのかSMA専用ファンド全体に1,400億円(5月1,300億円)の資金流入があり、SMA専用ファンドによって資金流入が底上げされていた。
【図表1】 2021年6月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
外国株式には6月に6,500億円の資金流入があった。流入金額自体は5月と同規模であったが、5月はSMA専用ファンド(緑棒)への資金流入によって膨らんでいた【図表2】。そのことを踏まえると、6月は5月以上に外国株式の販売が好調であったといえよう。
【図表2】外国株式ファンドの資金流出入の推移

予想分配提示型を中心に盛り返す外国株式アクティブ

外国株式のアクティブ・ファンド(【図表2】青棒)への資金流入は5月にやや減速していたが、6月に盛り返した。6月は引き続きハイテク系のテーマ型ファンドなどには投資しにくい市場環境だったが、基準価額によって毎月の分配金が変動する、いわゆる予想分配提示型(【図表3】青太字)のアクティブ・ファンドなどが人気を集めた。実際に予想分配提示型を含む毎月分配型の外国株式のアクティブ・ファンドへの資金流入は6月に1,500億円と5月の1,100億円から増加した。
 
たとえば「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」(【図表3】青太字:2位、10位)は予想分配提示型のヘッジなし、ヘッジありの2本合計で6月に1,000億円の資金流入があった。同シリーズの非毎月分配型の2本への資金流入は200億円と予想分配提示型の1/5程度であった。「グローバルAIファンド」(【図表3】青太字:5位)に至っては、予想分配提示型の2本合計で6月に400億円の資金流入があったが、同シリーズの非毎月分配型の2本は70億円と金額は小さいが資金流出していた。そのことからも予想分配提示型の仕組みが投資家に人気があることがうかがえる。
 
また、外国株式のインデックス・ファンド(【図表2】黄棒)にも人気の3本(【図表3】赤太字)を中心に6月に2,300億円の資金流入があり、5月の1,700億円から一段と増加した。インデックス・ファンドの資金流入が右肩上がりで増加してきていることも、外国株式、さらにはファンド全体への大規模な資金流入が継続していることに大きく寄与していると思われる。
【図表3】 2021年6月の推計純流入ランキング
このように2021年に入ってから外国株式へ毎月6,000億円を超える大規模な資金流入が続いているが、その資金流入の中身は少しずつではあるが変化してきている。インデックス・ファンドへの資金流入が底堅く拡大する中、アクティブ・ファンドでは次から次へと売れ筋商品が変わりながらも様々なものが売れ続け、結果として大規模な資金流入が続いている。

外国債券の資金流出基調はまだまだ続く?

6月はバランス型にも1,000億円の資金流入があり、5月の600億円の資金流入から増加した。2020年2月、3月のコロナ・ショック以前と比べると資金流入は小さいが、バランス型にも投資家が徐々に戻りつつあるのかもしれない。その他、6月は国内株式と外国債券が資金流入に転じた。特に外国債券は2017年12月以来の資金流入で、しかも流入金額も1,300億円と大きかった。ただ、国内株式、外国債券ともに引き合いはさほど強くなかった様子である。
 
国内株式はSMA専用ファンドを除外すると資金流入は5月の500億円から、6月は300億円へと減少した。また、資金流入のほとんどがインデックス・ファンドへの資金流入で、しかも6月中旬に国内株式が急落した期間に集中しており、タイミング投資が中心であった。
 
外国債券では、SMA専用ファンドからの資金流入に加えて、6月に新規設定されたファンド(【図表2】青太字)の影響が大きかった。SMA・DC専用ファンド(緑棒)や当月に新規設定されたファンド(黄棒)を除くと、つまり一般販売されている既存の外国債券ファンド(赤棒)は6月も500億円の資金流出であった【図表4】。
 
ただ、以前と比べると既存の外国債券ファンドでも資金流出がだいぶ鈍化してきている。2018年頃は毎月1,000億円以上、特に大きい月には2,000億円の資金流出があった。それが足元では流出金額が1,000億円超えることはまれになってきている。また、この6月以外にも2020年の6月、7月、12月に人気を集める外国債券の新設ファンド(主に限定追加型のファンド)が出てきている。
【図表4】 外国債券ファンドの資金流出入
外国債券ファンドが従来から担っていたミドル・リスク、ミドル・リターン、もしくはインカム・リターンを狙った金融商品に対する個人投資家のニーズは相変わらず高いと思われる。ただ、今後しばらくは外国債券中心の運用ではそのような投資家のニーズを満たすようなパフォーマンスをあげることが難しい市場環境が続く可能性が高い。さらに外国債券の純資産総額は足元の6月末時点でも、まだ11兆円(うち毎月分配型が6兆円)もある【図表5】。2011年頃の26兆円からは資金流出に伴いかなり減少したが、いまだに外国株式(34兆円)、バランス型(12兆円)に次ぐ規模である。外国債券ファンドを保有している投資家もまだまだ多く、金利上昇リスクが懸念される足元の市場環境を考慮すると外国債券の資金流出基調は今後も当面、続くだろう。
【図表5】 外国債券ファンドの純資産残高の推移

一部の外国株式のテーマ型ファンドが好調

6月に高パフォーマンスであったファンドをみると、一部の外国株式のテーマ型ファンドが好調であった【図表6】。6月に好調だったファンドは5月に大きく下落しているファンド(赤太字)も多く、5月の反動もあって、特に大きく上昇したと考えられる。このようなファンドは今後も米国の金融政策の動向等をにらんで、値動きが激しい展開が続くかもしれない。リスクが高いファンドを保有している場合はご自身のリスク許容度の範囲内での長期保有が原則だが、高値での売却も検討したい。また、今から投資する場合は時間分散を心がけてじっくり時間をかけて購入するのが得策であると思う。
【図表6】 2021年6月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではあり ません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資 信託の勧誘するものではありません 。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2021年07月07日「研究員の眼」)

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