2021年08月05日

ネット上の権利侵害者開示請求制度の簡易化・迅速化-プロバイダ責任制限法の改正

保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

先に終了した第204回通常国会でプロバイダ責任制限法の改正が行われた。プロバイダ責任制限法では、他人の権利を侵害するようなコンテンツが発信・流通した場合に、プロバイダがそのコンテンツを流通させたことについて、それだけでは原則として責任を負わないことが定められている。また、権利侵害とみられるコンテンツを削除等した場合に、発信者に対して責任を負わない要件もプロバイダ責任制限法は定めている。
 
プロバイダ責任制限法は、さらに、権利を侵害された者がプロバイダに対して、発信者を特定できる情報の提供を求める権利を定めている。しかし、これまでは通例、コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダの二社に対して開示請求手続(仮処分・訴訟)を別々に進める必要があり、コストや時間がかかっていた。
 
今回の法改正は、発信者を特定できる情報の開示を非訟手続として、ひとつの手続の中で請求できるようにした。このことにより、コストを抑えつつ、早期に発信者情報の開示を求められるようになることが期待されている。
 
また、開示請求できる情報は権利侵害を行った通信そのものにかかる情報に限定されるものと考えられていたが、侵害時の通信だけではなく、プロバイダへのログイン時の情報の開示も可能とされた。

■目次

1――はじめに
2――現行法の概要
  1|プロバイダの責任制限(現行法)
  2|発信者の情報開示請求権(現行法)
  3|発信者の情報開示請求権の問題点
3――発信者情報開示制度の改正
  1|ログイン情報の開示
  2|新たな裁判制度の創設
4――おわりに
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保険研究部   常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

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