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新型コロナワクチンをすぐには接種しない人の理由と特徴-「安全性への不安」「順番待ち・様子見」「面倒」「ワクチン不要」
基礎研REPORT(冊子版)8月号[vol.293]

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1―はじめに
懸念されているのが、ワクチン忌避だ。新型コロナに関しては、高年齢で重症化リスクや死亡リスクが高いのに対し、ワクチンによる副反応は若年に多いとされる*1など、特に若者が慎重になる傾向が予想される。
本稿では、ニッセイ基礎研究所が実施した「第4回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」を使って、ワクチンの接種をすぐには希望しない人の理由と特徴を分析した。第4回調査は、全国の20~69歳の男女(調査会社のモニタ)を対象とするWEB調査で2021年3月26日~29日に実施し、2,070人から回答を得た。
ワクチンをめぐっては、状況が変化し続けているため、まず、同調査を実施した3月末の状況を、NHKのワクチン情報特設サイト*2を元に振り返る。1月頃から海外の臨床試験の結果等から安全性についての情報や、変異株にも効果があることが報じられていた。国内における副反応に関連して、3月10日に河野規制改革担当大臣が「欧米の状況と比べると、数は多いように思われる」と発言している。26日には国内の医療従事者で1万2000回に1件の割合でアナフィラキシーが報告されていること、29日には花粉症や食物アレルギーなどがある人も接種が可能ということが報じられた。3月末時点でワクチン接種後に死亡した事例は報じられていたが、接種との因果関係が認められた例はなかった。
*1 厚生労働省 新型コロナワクチンQ&Aサイト https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0014.html
*2 NHKワクチン接種特設サイト https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/japan_2021/
そこで、本稿では、既に接種している28人を除く2,042人について、すぐには接種を希望していない人の特徴とその理由を分析した。
すぐには接種を希望していない人に対して、その理由を複数回答で尋ねた結果を因子分析したところ、すぐには接種しない理由は4つの因子(“ 安全性への不安”“ 順番待ち・様子見”“面倒”“ワクチン不要”)に分けられた*3。
![[図表2]すぐには接種を希望しない理由](https://www.nli-research.co.jp/files/topics/68413_ext_15_4.jpg?v=1627970479)
接種意向別にみると、しばらく様子を見てから接種したい人では「まだ日本国内でのワクチン接種が進んでいないから」「まだ医療従事者や、高齢者などの接種が終わっていないから」といった“ 順番待ち・様子見”が高く、将来的な安全性が確認できていないと思うから」や「効果が明確ではないから」は低かった。また、あまり接種したくない人で「副反応が心配だから」「将来的な安全性が確認できていないと思うから」といった「安全性への不安」に分類される理由や「注射が苦手だから」「接種会場での感染リスクがあるから」「2回接種することが面倒だから」といった“面倒”が高く、絶対に接種したくない人で「効果が明確ではないから」「基本的な感染防止対策で十分だと思うから」が高かった。
*3 詳細は、2021年6月15日発行の基礎研レポート「新型コロナワクチンをすぐには接種しない人の理由と特徴」をご参照ください。
3―女性で“安全性への不安”“順番待ち・様子見”、若年で“面倒”。“ワクチン不要”は感染不安が低い。
また、順番待ち・様子見をしている人の特徴として、女性があげられた。現在の不安としては、日本経済が悪化し、国内の企業業績や雇用環境が悪化することをあげていた。
面倒さをあげている人には、若い人と肥満ではない人があった。現在の不安として、感染状況の公表や厚生労働省によるコロナアプリの開発などによって個人情報が保護されない事態が生じる可能性があることをあげていた。
ワクチン不要と考えている人には「持病がある人*4」は少なく、自分や家族の感染による自分や家族の健康状態の悪化の不安が低い人だった。性、年齢による有意差はなく、男女ともどの年代にもワクチン不要という考える人はいるようだった。
*4 本調査で「持病がある」とは「心疾患・脳血管疾患・糖尿病・高血圧・呼吸器疾患などの持病がある」「免疫系の持病がある、または、免疫の機能を低下させる治療を受けている」「これら以外の持病がある」のいずれかにあてはまることとした。
4―おわりに
安全性への不安を感じている人においては、副反応が出やすいとされる2回目接種後の副反応の程度や件数、副反応への対応状況などが公表される中で不安が解消していく可能性がある。また、安全性への不安を感じている人の特徴として、妊娠中の人や授乳中の人が含まれる。妊娠中に新型コロナウイルスに感染するとリスクが高いことも知られており、日本産科婦人科学会からは5月12日付けで、現時点では接種のメリットがリスクを上回ると考えら れることを提言している*5。しかし、自身の身体のみならず、胎児の健康も守らなくてはいけない妊婦の中には、慎重になる人がいるのも自然だろう。同提言にもあるとおり、周囲の人が接種し、妊婦への感染予防を徹底することもあり得るだろう。
面倒さをあげている人には、若い人が多い。自身のタイミングで日常生活の中で接種ができるような会場の整備や、職場での特別休暇等の対応等、接種にともなう負担を減らす試みが必要だろう。
ワクチンが不要だと感じている人は、自分や家族の感染不安が少なく「絶対に接種したくない」と考えている人も多い。ワクチン接種による個人の感染予防効果や、社会全体での損失の軽減効果などを引き続き示していくことが重要になるだろう。
以上のとおり、接種を希望しない理由はいくつかの因子があるが、図表2のとおり“安全性への不安”が大きい。ワクチンの効果や副反応の情報については今後も公表されることを期待したい。また、情報を受け取る側においては、情報の真偽を見極め、十分な情報を得るように努めることが重要だろう。
それでも全員がワクチンを接種するような状態にはならないと思われることから、感染経路や感染パターンを周知するなど、今後も充実した情報開示を期待したい。
*5 日本産科婦人科学会「COVID-19 ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する方へ(2021年5月12日)」その後6月17日に最新の声明が出ている。
(2021年08月05日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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