2021年08月02日

ユーロ圏消費者物価(7月)-再び2%超を記録

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:2.2%と加速

7月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)は7月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は+2.2%、市場予想1(+2.0%)を上回り、前月(+1.9%)から加速(図表1)
前月比は▲0.1%、予想(▲0.3%)を上回り、前月(+0.3%)から減速

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は+0.7%、予想(+0.7%)と同じで、前月(+0.9%)から減速(図表2)
前月比は▲0.4%、前月(+0.3%)から減速

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:上下双方向のベース効果が働くなかで、全体としてはやや加速

7月のHICP上昇率(前年同月比)は全体で+2.2%となり、前月(+1.9%)から再び加速した。一方、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は+0.7%と前月(+0.9%)から減速、2か月連続での低下となった。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」は5月0.7%→6月1.2%→7月0.7%となり再び減速している。一方、「サービス」は5月1.1%→6月0.7%→7月0.9%とやや加速した(前掲図表2)。

コア以外の部分では「エネルギー」が、7月は前年同月比14.1%となり、4か月連続の2桁増で、伸び率もコロナ禍後のピークだった5月(13.1%)を上回った。ベース効果によるインフレ率の押し上げは軽減されていると見られるが、足もとでのエネルギー価格の上昇を受けて前年同月比伸び率が押し上げられている。寄与度では、約1.29%ポイントに達していると見られ、全体の伸び率の1%以上をエネルギー価格が押し上げている構造が続いている(前掲図表1・2)。

「飲食料(アルコール含む)」は、7月は前年同月比で+1.6%(6月0.5%)となった(図表3)。飲食料のうち加工食品の伸び率は+1.5%(6月0.8%)、未加工食品は+1.8%(6月▲0.3%)だった。いずれもコロナ禍で価格が上昇していた前年同月のベース効果がほぼ剥落したため、伸び率が急上昇している。
(図表3)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳/(図表4)ユーロ圏のコアHICP上昇率
なお、7月は下記でも確認するように前年同月にドイツでVATの引き下げが開始されたため、ベース効果によってインフレ率が押し上げられている一方(図表4)、フランスなどでは値引きシーズンが後倒しされていたため、ベース効果による押し下げ効果があった。インフレ率に上下双方向のベース効果があるなか、全体的にややインフレ率が加速する結果となったと言える。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率を見ると、7月は前年同月比伸び率で19か国中、11か国が加速、8か国が減速している。前年同月にVAT引き下げを行っていたドイツではインフレが加速(5月2.1%→6月3.1%)する一方、ベルギー・フランス・イタリアなどは昨年夏の値引きシーズンをコロナ禍の影響で後倒ししていたため、ベース効果によりインフレ率の加速が見られる(図表5・6)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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